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ミイラ「アイスマン」から生きた酵母が発見され、パンを焼くことに成功

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(著)

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Image credit:Eurac Research | Andrea De Giovanni
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 肌の色も、最後の食事も、体じゅうのタトゥーも、これまで何度も調べ尽くされてきた5,300年前のミイラ、アイスマンことエッツィ。

 今度は彼の体から、今度はパンを焼ける酵母が見つかった。

 イタリアの研究機関ユーラック・リサーチのチームが、エッツィの皮膚や体内から4種類の酵母を取り出し、培養してサワードウと呼ばれる発酵パンの生地を作ることに成功した。

 ただしこの酵母、エッツィ本人のものなのかどうかは、研究者の間でも意見が分かれている。

 この研究成果は『Microbiome』誌(2026年6月3日付)に掲載された。

アイスマンの体から微生物を発見

 5,300年前のアルプスで命を落とし、氷河の中で凍りついたまま見つかったミイラ、アイスマンことエッツィ。日本では縄文時代の中期にあたる。

 1991年にイタリアとオーストリアの国境付近で発見されて以来、この男性は世界でもっとも詳しく調べられた古代人になった。

 背中に受けた矢で亡くなったこと、最後に食べたのは脂の多い肉と穀物だったこと、体には61か所のタトゥーがあること、肌は思っていたより浅黒く頭は薄毛だったこと。カラパイアでもそのたびに新しい発見を伝えてきた。

 アイスマンは現在、イタリア北部の都市、ボルツァーノにある南チロル考古学博物館に冷凍保管されている。

 今回、ボルツァーノ市の研究機関「ユーラック・リサーチのミイラ研究所」が、彼の体に今も生きた微生物が存在することを発見し、取り出すことに成功した。

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Image credit:Eurac Research | Andrea De Giovanni

アイスマンの体から見つかった4種類の酵母

 研究チームは、アイスマンの体を一度ゆっくり解凍し、表面の氷や溶け出した水、皮膚や組織のかけら、体内の水などを慎重に採取した。

 発見現場で1991年に集められた土も一緒に調べることで、どの微生物がアイスマンの生前から体内にいたのか、どれが死んだあとに入り込んだのかを見分けようとした。

 採取したサンプルから4種類の酵母が発見された。

 酵母は、糖分を食べてアルコールと炭酸ガスに分解(発酵)する微生物(真菌類)の一種で、パンを膨らませたり、お酒を造ったりするのに使用される。

 グラシオザイマ・ワトソニー(Glaciozyma watsonii)、ムラキア・ロベルティー(Mrakia robertii)、フェノリフェリア・グラシアリス(Phenoliferia glacialis)、そしてゴフィオザイマ属(Goffeauzyma)だ。

 どれも低温でよく育つ性質を持っていて、遺伝子を詳しく調べると、南極や北極の氷河、アルプスの高い場所など、極端に寒い環境にすむ酵母の仲間に近かった。

 研究チームのモハメド・S・サルハン氏も、酵母が見つかったこと自体が予想外だったと語っている。

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Image credit:Eurac Research | Andrea De Giovanni

培養した酵母でサワードウ作りに挑戦

 酵母が見つかったと話せば、誰もがパンに使えるのかと聞いてくるという。

 サルハン氏はそう語りながら、実際にパン作りを試してみた。

 作ろうとしたのは、酵母と乳酸菌の力でゆっくり発酵させるサワードウという種類のパンの生地になる。

 最初はアイスマンから取り出した酵母が、小麦粉になじまなかったため、研究チームは2週間ごとに種を新しく入れ替えながら、酵母を少しずつ小麦粉になじませていった。

 3か月ほど続けたところ、ついに24時間でふくらむごく普通の生地ができあがった。

 ただしサルハン氏はこれまでパンを焼いたことがなく、上手に焼くことはできなかったという。

 今後は食品分野の専門チームと協力してパン作りを進める予定だ。

 そして次の計画はアイスマンの酵母を利用したビールだ。

 ドイツのビール醸造で名高い研究機関ヴァイエンシュテファンの専門家と相談を始めたという。

マイナス6℃でも微生物は生きていた

 パン作りは楽しい話題だが、研究チームが本当に確かめたかったのは別のことだ。

 アイスマンはマイナス6℃、湿度99%という、発見現場の氷河とほぼ同じ環境で冷凍保存されている。

 この氷点下の環境の中で微生物は活動を本当に止められているのかどうかを知るのが研究の真の目的である。

 調べてわかったのは、低温を好む微生物にとっては、マイナス6度の保存室ですら活動しているという事実だった。

 研究チームが2010年と2019年に採取した皮膚のサンプルを比べたところ、グラシオザイマという酵母の割合が、2010年の85%から2019年には98%にまで増えていた。

 しかも2019年のサンプルでは、酵母のDNAが新しく長い状態を保っていた。

 古いDNAほど短く切れて傷が増えるので、新しく長いということは、この酵母が最近も活動して増えていた可能性が高いことを示している。

 アイスマンは静かに眠る標本ではなく、今も微生物が生きて動く生態系だった。

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アイスマンはマイナス6℃に保たれており、乾燥を防ぐために定期的に水が噴霧されている。Image credit:South Tyrol Museum of Archaeology/Eurac Research/Marion Lafogler

アイスマンの体から腸内細菌も発見

 酵母とは別に、アイスマンの体の奥深くからは、現代人の腸ではほとんど見られなくなった種類の腸内細菌も見つかった。

 アフリカや南米の一部の人々の腸には今も残っているもので、5,000年以上前の人間の腸内環境をそのまま伝える貴重な手がかりになる。

 こうした古い腸内細菌のDNAには年月を経た傷がはっきり残っていて、現代の微生物が後から紛れ込んだものではないと確かめられた。

 さらに、過去の保存処理が、特定の微生物を有利にしていた可能性も見えてきた。

 アイスマンが見つかった当初、カビの発生を防ぐためにフェノールという薬品が体に使われた。

 ところが見つかった酵母4種のうち3種は、このフェノールを分解できる遺伝子を持っていた。

 カビ取りに使った薬品が、それを栄養にできる酵母にとっては好都合な環境を作っていたことになる。

 研究チームが気にかけているのは、こうした微生物がミイラを傷める恐れだ。

 酵母や細菌の中には、皮膚や組織の主成分であるコラーゲンやたんぱく質、脂肪を分解する酵素を持つものがいた。

 冷たく乾いたミイラの体から栄養を得ようとする働きが少しずつ進めば、長い目で見てアイスマンの体そのものを損なうことにつながりかねない。

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冷凍保存されているアイスマンのミイラ Image credit:South Tyrol Museum of Archaeology/Eurac Research/Marion Lafogler

この酵母はアイスマン本人のものなのか

 最後に、研究者の間でも答えの出ていない疑問が残っている。

 見つかった酵母は5,300年前のアイスマンの時代から彼とともにあったものなのか、それとも比較的最近すみついたものなのか、という点だ。

 研究チームのフランク・マイクスナー氏は、これらの酵母は何千年もの旅をアイスマンとともに歩んできたと考えている。

 一方で、論文に加わっていないラトビア有機合成研究所のニコライ・オスコルコフ氏は、慎重な見方を示す。

 酵母のサンプルが採られたのは2010年と2019年の2回だけで、何千年も増え続けてきたという証拠はほとんどなく、むしろ比較的最近すみついた可能性が高いというのだ。

 研究チーム自身も、この点を未解決の疑問として正直に書いている。

 これらの酵母が古代から増殖を続けてきた子孫なのか、休眠していた酵母が解凍によって目を覚ましたものなのか、今はまだ判断できる証拠がそろっていない。

 低温を好むこの酵母は、もともとアイスマンが見つかった氷河の近くにもすんでいるため、彼が亡くなったあとに体の自然な開口部から入り込んだとも見られている。

 見つかった酵母が今も生きていて、培養すればパンを焼けることははっきりしている。5

 5,300年という時間をどう旅してきたのかは、これからの研究が明らかにしていく。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 5,300年前のミイラ、アイスマンの体から4種類の酵母が見つかり、培養してパンの生地が作れた
  • マイナス6度で保存されているのに、低温を好む酵母が今も増えていた
  • かつて保存に使った薬品フェノールを栄養にできる酵母がいた

まだわかっていないこと・今後の課題

  • 見つかった酵母がアイスマン本人の時代からのものか、最近すみついたものかは不明
  • 増え続ける微生物がミイラの体を傷めないか、長期的な監視が必要

References: Springer.com / Scientists Find Signs of Active Life in Ötzi The Iceman / Scientists make sourdough bread using yeast found in 5,000-year-old mummy / Eurac

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この記事へのコメント 39件

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  1. 腸内細菌って5000年程度で置き換わるものなの?
    進化って思ったより早いんだな・・・

    • 評価
    1. 食生活の変化によって簡単に変わるよ
      それは「進化」ではなくて生息環境が変化すればすむ生物が変わるだけの話なので

      変で、わかりやすいと思われる例でいえば、コアラは子供にウンコを食わせるけれど
      アレ。ユーカリの毒素を分解する腸内細菌の受け渡し行為でもあるので
      それをしない。腸内細菌を受け取れなかった子供がユーカリを食べると毒素が分解できずに死ぬ

      • +5
  2. 青森のキリストの墓から取られた酵母でパンとワインができたら、それはもう聖餐と呼べるのでは?

    • +11
  3. キャーッ!!
    アイスマンさんのエッツィ!!

    • +12
  4. 死後に新しい生態系になってたんだなぁ。
    保存的にはよろしくないかもだけど、沈没船に海の生き物が棲みつくみたいでロマン感じる。

    • +10
  5. わぁ…… 食べい人は食べて 僕は譲る
    みんなのお腹いっぱいの顔が見たいからね!

    • +9
  6. ヒトの皮膚の常在菌の中に、酵母の仲間がいるというのは聞いたことがあるが、
    それでパンを焼いたりビールを作ろうとは思わんな・・・

    • +30
  7. 以前、ヘソ菌チーズみたいな記事を見たのはカラパイアだったか思い出そうとしている

    • +4
  8. なんで死体から取った酵母でパン焼こうと思うの??サイコパスなの??

    • +16
  9. 「生きた酵母を発見」      →「へ〜」
    「そこからパンを焼くことに成功」→「どゆこと?」

    • +16
  10. ミイラから採取した酵母でパンやビールを作ろう、なんて発想がまずおかしいだろw 研究者の感性は普通とは違うな。

    • +9
    1. 一般誌に論文を載せたいインパクトのためなら何でもやるよ
      研究者の別の一面

      • +1
  11. 松原タ2シさんh遺体の土でカイワレを育てて食べた

    • -2
  12. おい・・・薄毛だったは・・・言わなくていいだろうが・・・

    • +15
    1. わざわざねえ。。。涙

      たくさんのイレズミは、鍼のような治療目的だったらしい
      ヒザ・足首はともかく、寒い地方で「腰」では、人に見えない
      千枚通しに染料をつけ、何度も突いたと考えられ、場所は腰痛・関節炎&東洋医学のツボと一致

      • +2
  13. 発掘がかなり乱暴だったから、コンタミの可能性もかなりあるんだよなぁ。

    • +6
    1. 見つかった時は現代の遭難者と思われていたとかでしたね。

      • +3
  14. こう言葉にしたら気持ち悪いですけど、糠漬けと大差ないです。
    作る人の体についた菌とか酵母の影響で味変わるんだから

    オタクが好きな。脇おにぎりよりよっぽど良いですよ。

    • -5
  15. 好奇心旺盛なパルモさんが「食べてみたい」と言い出さないかヒヤヒヤしながら記事読んだ

    • +4
  16. すまんが気持ち悪いとしか思えない。
    研究するのはまあいいとしてもそれを食べたいかと言われたら断じて否だ。

    • 評価
  17. 縄文ハスがあるんだし、酵母も芽胞とかシストの状態なら5000年とか生存しててもおかしくない

    ただコンタミの検証がね。
    周りの土とか博物館の環境由来の酵母は調べて比較してないのかな
    ないのなら少し眉唾

    • +1
  18. 有名人由来の酵母で作った酒とパンってビジネスできそう

    • 評価
  19. なんか酵母があるからパンを焼く、はわかるんだけど、遺体の中の酵母でパンを焼こうって発想が謎すぎるんすよね。

    • +2

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