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大繁殖した外来種のカニを食い止めろ!15万匹のタコがイタリアの海に投入

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(著)

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Image credit: public domain / Wikimedia Image by unsplash / Lois Spencer Carter
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 イタリア北東部のアドリア海沿岸で、外来種のカニが異常繁殖し、地元の漁業に壊滅的な被害をもたらしている。

 この危機を救うため、ボローニャ大学の研究チームが天敵を使った作戦に打って出た。令和のタコカニ合戦である。

 カニを好んで食べるタコの赤ちゃんを、2026年6月から8月にかけて約15万匹も海に放ったのだ。

 人間の手に負えなくなった外来種を、生き物どうしの捕食関係を使って食い止めようという試みが動き出している。

参考文献:

イタリアの海を占拠する外来種ブルークラブの猛威

 イタリア北東部のアドリア海沿岸で、外来種の「ブルークラブ(アオガニ:Callinectes sapidus)」が異常繁殖し、大きな問題となっている。

 ブルークラブはワタリガニの仲間で、もともとは北アメリカの大西洋岸に生息するカニだ。

 数十年前、大型船のバラスト水(船のバランスを保つために積み込む海水)に紛れ込み、地中海へ運ばれたと考えられている。

 長らく目立った影響はなかったが、海水温の上昇や気候変動を背景に、近年になって数が急激に増えた。

 青みがかった鋭いハサミを持つブルークラブは、貝殻をこじ開ける能力に非常に長けている。

 ヨーロッパ有数のアサリの産地であるイタリア北東部の漁業に、壊滅的な打撃を与え始めたのだ。

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ブルークラブ Image by Istock / DPFishCo

被害総額は約370億円に及ぶカニの脅威

 エミリア=ロマーニャ州の当局によれば、2022年以降だけで、この地域の被害額は約1700万ユーロ(約31億円)にのぼる。

 イタリアの農業・漁業団体「コルディレッティ」の試算では、北部のヴェネト州などを含めたイタリア全土の被害額は、約2億ユーロ(約370億円)に達する。

 州の農業・漁業担当委員アレッシオ・マンミ氏は、ブルークラブが稚貝を食い尽くし、一部の海域では出荷できる大きさのアサリの生産量が70%以上も減ったと説明している。

 イタリア・ボローニャ大学のプロジェクトに協力している漁師で、ムール貝の養殖業者でもあるダヴィデ・サヌッリさん(64歳)は、このカニの貪欲さを目の当たりにしてきた。

 ポー川がアドリア海へ注ぐデルタ地帯の沖合にあるラグーン(海と砂州で仕切られた浅い水域)では、ブルークラブによって壊滅的な被害が起きているとサヌッリさんは語る。

 海底にいるアサリの稚貝を含め、手当たり次第に何でも食べてしまうという。

 泳ぎが得意で、体重が最大1kgにもなるブルークラブには、自然界に天敵がほとんどいない。そのことが大繁殖に拍車をかけている。

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Image by pixabay / DCChefAnna

約15万匹のタコを海へ放つ作戦

 人間による駆除が追いつかない中、エミリア=ロマーニャ州の資金提供を受け、2024年に立ち上げられたのが「オクト・ブルー(Octo-Blu)」プロジェクトだ。

 硬い甲羅を持つブルークラブを減らすため、チチュウカイマダコの数を増やして対抗する作戦である。

 チチュウカイマダコ(Octopus vulgaris)は、地中海や大西洋に生息するタコで、日本で食べられているマダコによく似た近い仲間だ。肉食で、なかでもカニなどの甲殻類を好んで食べる。

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チチュウカイマダコ Image credit:Beckmannjan / commons.wikimedia / CC BY-SA 3.0

 ボローニャ大学の研究チームは約2年をかけ、チチュウカイマダコを人工的な環境で繁殖させる技術を確立し、港町チェゼナーティコにある研究所の白い水槽で何千匹もの稚ダコを育ててきた。

 放流できる段階まで育つと、稚ダコは大きなビニール袋にすくい上げられ、サヌッリさんの頑丈な青い漁船などに乗せて海へ運ばれる。

 最初の放流は6月11日と17日、リッチョーネ沖で行われた。

 放流場所に選ばれたのは、海岸が削られるのを防ぐため、以前に海底へ沈められたコンクリート製の人工構造物の周辺だ。

 長い年月をかけて多くの生き物が棲みつき、若いタコが定着しやすい環境になっている。

 研究チームは、タコが隠れ家として利用できるよう、セメントと粘土で作った人工の巣も海底に用意した。

 放流は8月24日まで続けられ、放たれた稚ダコの数は合計で約15万匹に達した。

 ボローニャ大学の研究者アントニオ・カサリーニ氏は、海岸の近くにタコの小さな群れを定着させ、ブルークラブの拡散を抑えるのが狙いだと説明している。

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 カニを駆除する使命を受け放流されるタコたち Image credit: Progetto OctoBlu – foto RER

課題を抱えながら生態系を守る取り組み

 ただし、この試みにも課題がある。

 チチュウカイマダコは、ブルークラブが最も猛威を振るっているラグーンのような、暖かく砂地の多い海域には生息しにくい。

 そのため、被害の中心地では効果がごくわずかにとどまる可能性があり、研究者たちもその点を十分に認識している。

 専門家の中には、ヨーロッパスズキ(ニシウミスズキ)の方がブルークラブを減らすには効果的だという意見も出ており、ボローニャ大学の研究チームはタコの働きを補うため、カニの卵を好んで食べるウナギの活用も検討している。

 放流された稚ダコのうち、成体まで育つのはごく一部にすぎない。それでも研究チームは、何匹かが大きく育つことに期待を寄せている。

 プロジェクトを率いるボローニャ大学のオリヴィエロ・モルデンティ教授は、タコは数の多い生き物を抑える捕食者であり、海の食物連鎖のバランスを保つ上で重要な役割を果たすと語っている。

 ボローニャ大学の研究者ピエトロ・エマヌエーレ氏は、メスのカニ1匹が数百万個の卵を産み、そのほとんどが孵化するほどの驚異的な繁殖力を持っていると指摘する。

 孵化したカニのうち成体まで育つのは一部とはいえ、放流されたタコがメスのカニを1匹でも捕食すれば、それだけで状況を大きく変える一歩になるのだ。

食材として利用しても大繁殖には追いつかない

 ブルークラブは、脱皮したばかりで殻がやわらかい状態のものが「ソフトシェルクラブ」と呼ばれ、殻ごと唐揚げなどにして食べられている。

 世界で最も多く漁獲されている甲殻類の一つで、アメリカのメリーランド州では名物料理として親しまれている。

 イタリアでも、捕獲したブルークラブを食用として販売する取り組みが進められており、エミリア=ロマーニャ州は駆除したカニの回収や商品化にも予算を投じている。

 それでも増える速さに追いつかないため、タコの力を借りることになったのだ。

 本来の生息地であるアメリカのチェサピーク湾では、乱獲によってブルークラブの数が減り、資源を守るための管理計画が実施されている。

 同じカニでも、生息する海が変われば、守る対象にも駆除する対象にもなるのだ。

References: Riminitoday / PHYS

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この記事へのコメント 69件

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  1. 日本からカニ食べ放題ツアーってどうだろうか
    ツアー代タダで募るとカニを絶滅させることもできるのでは

    • +46
    1. 食欲のために三番瀬のホンビノス貝を絶滅させた実績があるもんね

      • +18
    2. おいおい、まず日本で大繁殖してる外来ワタリガニのチチュウカイミドリガニを喰いつくしてからにしろやw

      • +9
  2. タコって貝も食べなかったっけ?
    逃げたり反撃してくるカニより貝を狙うようになってもっと被害が出るようになりそう

    • +48
    1. まあマダコだからね うまくいかなかったらこっちも一緒に獲って食べてしまえばよかろ
      マダコの養殖は日本でもまだ産業レベルに達してないという話だから、このタコ繁殖技術を極めればもっと直接的に儲けられそうな気もする

      • +25
    2. 実はタコは世界的に高騰していて高値で売れるのでそちらも期待できるんですよ

      • +6
  3. この手の天敵作戦って全部失敗してるような…
    おまけに返って生態系に悪影響出まくりなケースが多いような…

    • +87
    1. もっと捕食しやすいやついるんだったら当然そっちを狙うからな

      • +23
    2. 第2のマングースに・・・
      でもまあ、タコは食えるから

      • +28
      1. 他にもアメリカのてんとう虫とかスズメバチとか色々
        マングースに限らず、人間が自然界に手を加えると大体予想外の被害が出る

        • +2
    3. 自分も沖縄でハブを駆除するためにマングースを放ったら、マングースはほとんどハブを食べずに生態系を壊すだけの結果になったことを思い出した

      • +26
  4. 外来種のカニだけ食べてくれるんですかねぇ・・・

    • +28
  5. で、今度はこのタコが生態系に被害をもたらす外来種になるってオチ

    • +16
  6. 1kg!デカいカニだな
    しかし、アサリはどこでも減っちゃってるなぁ

    • +21
  7. 食材として収穫したほうがよさそうだが、、

    • +13
  8. 在来のカニと貝がいなくなるんだろうなあ…

    • +19
  9. 成体のタコならわかるが稚ダコじゃ成長する前に他の魚にとっては格好の獲物。
    生き残ってカニを捕食と繁殖できる個体がどれだけ残るか厳しいし、それ以上にカニ以外の土着魚介類を襲って生態系破壊するおそれも大

    • +17
    1. 日本で大繁殖している外来ガザミ@チチュウカイミドリガニ食べまくってね!

      • +4
  10. アサリが獲れないというのならブルークラブを食べればいいんじゃないかしら

    • +14
  11. 生息地域があまり被ってないならまじで意味ないような…これが原因で新たな問題起きなきゃ良いけど。ハブとマングース思い出しちゃうよ

    • +15
  12. ただでさえ外来種のカニに押されて窮地に陥ってる在来のカニが
    タコによって更に追い詰められる、みたいなことは無いのかな?
    癌細胞を健康な細胞ごと殺す放射線治療的なリスキーさを感じる

    • +20
  13. 親ガニをせっせと漁獲する一方で、沿岸環境を改善してカニの成長段階に応じた天敵を増やし、なおかつカニの餌となる貝以外の生物が増えるようにして漁獲対象種への圧力を下げる。時間はかかるけれどもそれが一番だと思う。

    • +6
  14. ブルークラブ美味しいよ
    日本でも繁殖させてくれないかなぁ

    • -2
  15. 人間がカニ食べても追いつかないって、日本人も喜んで食べるじゃーんと思ったけどカニが育つの待ってたらそのぶん貝も減っちゃうか
    大きさわかんないけどワタリガニっぽくておいしそう…

    • +13
  16. そのブルークラブは画像だけで見るとワタリガニとかガザミと同じ仲間ぽいから蟹かごで捕まえて日本へ輸出で良いと思うが・・・
    今度はタコが大繁殖して問題になりそう

    • +16
  17. ワタリガニっぽいやつ、蟹の卵を食べさせるウナギ、蟹を食べるタコ、全部食べたい!!!

    • +7
  18. 外来種の影響も自然の一部

    人間が人為的に操作してはいけない

    • -12
    1. 人間が持ち込んだ外来種を自然の一部と見なすなら
      人為的な操作も自然の一部になるのでは

      • +9
      1. まあ窓から見える風景で人の手が入ってない場所は無いからね

        • +3
  19. アラスカだったかラッコが侵略的外来種のカニを食べまくっていつの間にか解決してたけど、アドリア海じゃラッコ連れてきても熱中症になりそう

    • +4
  20. 日本人なら数年でその地域の絶滅危惧種にしてやれるってのに…

    • +7
    1. 日本でチチュウカイミドリガニって外来ワタリガニが大繁殖しまくっているのですが?

      • 評価
  21. ガザミにマダコにウナギか、日本に輸出したら問題が解決しそうな組合せだな。

    • +8
  22. 日本なら大量カニが大量繁殖したら食うし、対策で放ったタコが増えても食う。

    • +7
  23. ブルークラブって美味しいのかな
    カニ自体あまり食べたいと思わないから、想像し難い

    • +2
    1. 日本にも近縁種が色々居てスーパーで売ってるよ。ガザミかワタリガニでぐぐって。

      それにしてもアメリカで地中海のワタリガニが大繁殖して、地中海でアメリカのワタリガニが大繁殖・・・

      • 評価
  24. コメント読んでると、日本人の食い意地の張りっぷりが頼もしく感じてしまうw

    • +13
    1. 中共人民の四つ足で食べないのは椅子くらいという世界的に有名なお話をご存知ないので?

      • 評価
    2. 記事読みながら「ワタリガニうまそう!」しか頭に浮かばなかった私も、コメ欄見てニッコリ
      日本人の体の半分は海産物で出来ています

      • +3
  25. >イタリアでも、捕獲したブルークラブを食用として販売する取り組みが進められており、エミリア=ロマーニャ州は駆除したカニの回収や商品化にも予算を投じている。それでも増える速さに追いつかないため、タコの力を借りることになったのだ。

    ここ読んでない人多すぎるだろ
    輸出輸出とか簡単に言うけど大量に買ってくれる企業が現れないと輸出もできないんやで

    • +10
    1. そんなことはいちいち説明されなくても分かってる
      現地での消費量が少なすぎるのなら日本向けに販路開拓してくれればなーとか思いながら、みんなわざわざ書いてないだけでしょ

      • +1
  26. >>生き物どうしの保障関係を使って

    多分ここは

    生き物どうしの補食関係を使って

    だと思う。

    • 評価
  27. 伴天連はデビルフィッシュ食わねぇだろ

    ソフトシェルクラブってドムドムのアレか?

    • -5
    1. 地中海沿岸は世界有数のタコの消費地だぞ。それもだいたいキリスト教のせいでだぞ?(年に数回の断食期間は血の通った生物を食べたらダメだが、切っても血がでてこないタコ・イカ・貝はOKってなっているので)

      特にギリシャなんか日本人以上にタコ食べる。次いでスペインとナポリ。

      • +7
  28. 最大の捕食者は人間だ。名物にしてしまえ。

    • +2
  29. 日本人を投入した方がキレイに解決できる気がしてきたw

    • +5
  30. タコなら世界全体の漁獲量がかなり減ってる(おそらく今まで獲り過ぎ=食べ過ぎと言われている)から増えたら増えたでプラスなんですかね

    • +4
  31. ワタリガニはお手軽に美味しいから好きだな、タコはたこ焼きで定番、良いよねたこ焼き

    • +2
  32. 物凄い羨ましい
    タコじゃなく私を投入してくれ

    • +4
  33. なんか即物的いうか短絡的というか・・・
    クリスマス島でアシナガキアリが大繁殖しクリスマスアカガニが捕食され激減した時、
    研究者たちは蟻の生態を調べつし、現地で何が蟻の個体数を抑制しているかを発見した。
    アシナガキアリは、カイガラムシから出る甘い蜜を主食として爆発的に増えるため、カイガラムシに寄生するトビコバチを環境に導入するとアシナガキアリの食糧源が絶たれ結果としてアシナガキアリの個体数が劇的に減少することが判明、導入され、クリスマス赤ガニはこれによって個体数を大きく回復することができた。
    多分、こういうしっかりしたロジックでやらなきゃダメだと思う。

    • +3
  34. カニ・ソースのパスタの旨さをイタリア人が再認識したら解決しそうな問題のような気もする

    • +1
  35. 地中海諸国はタコは食べるけど、カニは食べないのかな?

    • 評価
  36. 食料調達に必死な中国と食い意地の張った日本がバチバチの漁獲合戦を繰り広げればあっという間に採り尽くしてくれそうな気もするけどw 急遽イタリアに回せる設備の余裕がないのかなー、惜しいなぁ……。まぁ、イタリア遠いし気温高めだからなぁ……。

    • 評価
  37. そのカニを日本に寄こせ!
    秒で食い尽くす自信があるぞ
    ついでに、そのタコも待ってます

    • 評価

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