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アボカドは1日2回性別を変える。4200万年前から続く古代遺伝子の謎がついに解明

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(著)

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Image by pixabay / sandid
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 食卓でお馴染みのアボカドの木は、毎日2回、正確なスケジュールで花の性別をオスとメスに切り替えている。

 1世紀近く科学者を悩ませてきた謎めいたメカニズムが、ついに解き明かされた。

 アメリカのカリフォルニア大学などの研究チームがゲノム解析を行い、開花リズムを制御する単一の遺伝子を特定した。

 遺伝子による切り替えは約4,200万年前から受け継がれており、植物界でも極めて古い進化の産物であることが判明した。

 この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences』誌(2026年7月28日付)に掲載された。

アボカドの木は毎日決まった時刻に性別を切り替える

 花が実を結ぶには受粉が必要になる。花粉を作るのがオシベで、花粉を受け取るのがメシベである。

 ハチなどの虫が花から花へ飛び回って花粉を運び、メシベに花粉がつくと種ができ、実がふくらんでいく。

 多くの花と同じように、アボカドの花にもオシベとメシベの両方がそろっている。

 性別が切り替わるといっても、花のつくりそのものが変わるわけではない。オシベがはたらく時間とメシベがはたらく時間が、初めからずらしてあるのだ。

 アボカドの花は2日かけて2回開く。1回目に開いたときはメシベだけがはたらき、虫が運んできた花粉を受け取る。

 花はいったん閉じ、翌日にもう一度開くと、今度はオシベが花粉を出す。同じ花のオシベとメシベが同時にはたらくことはないため、自分の花粉が自分のメシベにつく自家受粉は起きない。

 自家受粉を避けているのは、別の木の花粉と組み合わさったほうが、病気や環境の変化に強い子孫が生まれやすくなるからである。

 時間をずらす植物は他にもあるが、アボカドは木ごとに時間割が決まっていて、しかも2種類しかない。

 A型の花は1日目の午前中にメシベがはたらき、2日目の午後にオシベが花粉を出す。B型の花は1日目の午後にメシベがはたらき、2日目の午前にオシベが花粉を出す。

 午前中の果樹園では、A型の木が花粉を受け取っている一方で、B型の木は花粉を出している。

 午後になると立場が入れ替わる。花粉を出す木と受け取る木が時間帯ごとに交代するため、花粉は必ず別の木へ運ばれていく。

 果樹園でA型とB型を混ぜて植えるのは、時間割を利用して実つきを良くするためである。

 スーパーに並ぶアボカドの大半を占める品種ハス(Hass)はA型で、生産者は隣にB型の木を植えて花粉を供給させている。

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Image by Istock / :barmalini

切り替えの時刻を決めていたのはたった1つの遺伝子だった

 アボカドの時間割は、カリフォルニアで品種づくりが始まったおよそ100年前から知られていた。

 それでも何がA型とB型を分けているのかは、長いあいだわからなかった。

 カリフォルニア大学デービス校が主導し、リバーサイド校が協力した研究チームは、2つの作業を並行して進めた。

 A型の品種とB型の品種を交配して育てた374本の苗木について、ゲノム全体を調べて開花型と結びつく場所を探した。

 同時に、500本を超える木の花が何時に開いて何時に閉じるかを、昼も夜も現場で記録した。アボカドの開花はわずかな気温の違いで数時間ずれてしまうため、同じ木を何度も見に行かなければならなかった。

 2つの結果を突き合わせると、SDMYBと名付けられた遺伝子が1つだけ残った。

 SDMYBは、花が開く時刻や花粉を出す時刻を決めるスイッチとしてはたらく遺伝子である。

 SDMYBという遺伝子は1つだが、中身には2つの型がある。

 人の血液型と同じで、同じ遺伝子でも少しずつ形が違う。優性の型を持つ木はA型になり、劣性の型だけを持つ木はB型になる。

 メンデルが見つけた遺伝の法則どおりの伝わり方をしていた。

 研究チームが1日の中での遺伝子のはたらき方を調べると、A型では遺伝子のスイッチが入る時刻がB型より遅れており、遅れの幅は2回目の開花が遅れる幅と一致していた。

 遺伝子が動く時刻のずれが、そのまま花の開く時刻のずれになっていた。

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アボカドの花 Image by Istock / victor alfonso arguello martinez

2つの型は4200万年前から消えずに残ってきた

 研究チームは、アボカドと近い仲間の植物についても同じ遺伝子を調べた。SDMYBの2つの型は、アボカド以外の少なくとも26種からも見つかった。

 化石を手がかりに、2つの型が枝分かれした時期をたどると、およそ4200万年前の始新世にさかのぼった。

 以来ずっと、どちらの型も失われずに受け継がれてきたことになる。人類が現れるよりはるか昔である。

 どちらか片方に偏らなかった理由は、繁殖のしくみで説明できる。

 A型ばかりが増えると、B型の木は花粉をやりとりする相手に困らなくなるので有利になる。

 逆にB型が増えると、今度はA型が有利になる。多いほうが不利になり、少ないほうが有利になる関係が働き続けたため、どちらの型も途中で消えなかった。

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Image by unsplash / Sarah Damen

花が咲く前に型がわかり、品種づくりの時間が縮まる

 生産者や育種家は長いあいだ、苗木がA型なのかB型なのかを知る方法を持たなかった。

 判別できるのは花が咲いてからで、アボカドが花をつけるまでには10年前後かかる。何百本も植えて何年も待ち、咲いてから振り分けるしかなかった。

 SDMYBが特定されたことで、苗木の段階でDNAを調べれば開花型がわかるようになる。かかる年数も手間も、果樹園の場所も大幅に減らせる。

 育種家が求めているのは、実の質が高いB型の品種である。

 カリフォルニアの果樹園では現在、およそ10%をB型の授粉樹にあてているが、B型の実は商品価値が低いものが多い。

 リバーサイド校が開発したルナUCR(Luna UCR)のように、花粉を供給しながら実も売れる品種を、狙って作れるようになる。

 遺伝子を書き換えて開花型を変える技術が実用になるのはまだ先だが、欲しい型の苗木を最初に選び出す方法は、すでに使える段階に入っている。

この研究でわかったこと

  • アボカドの花は、1日のうちでオスとメスのはたらく時間が入れ替わり、自分の花粉では実らない。
  • 入れ替わる時刻を決めていたのは、SDMYBというたった1つの遺伝子だった。
  • 遺伝子の2つの型は、約4200万年前に分かれてから、どちらも消えずに残り続けている。

まだわかっていないこと

  • 同じ2つの型を持つ26種の近縁植物が、実際に毎日オスとメスを入れ替えているかは確かめられていない。
  • 遺伝子を書き換えてアボカドの開花タイプを変える技術は、まだ実現していない。

References: doi.org/10.1073/pnas.2606876123 / Gene discovery could shave years off avocado breeding | UCR News | UC Riverside

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この記事へのコメント 25件

コメントを書く

    1. イチョウも銀杏のなる木とならない木があるじゃん?

      • +12
  1. アボカドって、名前の由来はタマなのにねぇ

    • -4
    1. 逆だそうだよ。
      現地語でアボカドの実を指す わりと基幹的な単語のほうが元で、
      睾丸を意味する用法は、後から流用した婉曲表現の隠語だそうで。

      • +12
  2. アボカドめちゃめちゃ賢い…!!生き残りの工夫がすごいな

    • +11
  3. まるで誰かにプログラミングされたかのよう。

    • +3
  4. 幼少の時にアボカドを
    初めて見た時には
    グリンゴ星人かと思った。

    • -1
  5. 自家受粉は植物自体でも嫌がるとは聞いたことがあったけれど、
    時間差で花を開いたり閉じたりして、自ら自家受粉を避けてたとは・・・
    しかも4200万年前に、既にゲノムに組み込まれていたなんて、
    人間よりもずっと賢い・・・と言うか、自然の生存戦略って、奥が深すぎる。

    • +16
  6. そりゃ1世紀近くも科学者を悩ませるはずだ

    • +10
  7. ここまで自家受粉防止策を徹底してるということは
    逆に見れば自家受粉を起こしやすい形質が徹底的に淘汰されたんだろうけど
    他の植物と比べて自家受粉による弊害が大きくなる理由があったのかな

    • +8
  8. 3日目以降
     受粉に成功していた場合、花の根元にある子房が膨らみ始めます。
     受粉に失敗していた場合、花全体が茶色く枯れて、ポロリと枝から地面に落ちてしまいます。

    ちょっとせつなかった。

    • +6
  9. この発見でアボカドが将来もっと安く買えるようになったら嬉しいなー
    アボカド大好き!

    • +8
  10. 逆に開花せず自家受粉だけで済ませるヤツシロランの仲間はほんの2000年前に出現した。同類が少ない環境でも確実に繁殖できるという利点はあるが、有害遺伝子を排除する仕組みがないのでいずれ滅びる運命にあるという。

    • +5
  11. 遺伝子的な話は置いといて、これがアボカドにとっての性別なんだろうな

    • +3
  12. 「アボカドは1日2回性別を変える」

    ホラー映画のタイトルかな

    • -1
  13. うちの子はタネから育って35年だけど、最初に実がなるまで10年はかかった。今でも豊作は3年おき。樹高4m+で止まってくれているが、幹はもう抱っこ出来ない太さ (笑) 「どこかに彼氏か彼女が居るのかな?」と思っていた。

    • +3
  14. 関係ないことなんだけどこのコメント欄のマイナス評価の基準が分からん(分かるけどマイナス評価押すほどのものでもなさすぎて)

    • +3
    1. このサイトはそういう傾向が間違いなくあるね
      批判的なニュアンスを含んだ批判や冗談に過剰なマイナス付くのを考えると、ASDの人が多いんじゃないかなって思っている

      • -3
    2. ここのコメント見るのマジで好きなんだけど、間違いをドヤ顔で喋るやつと、本文読んでないくせに否定的なやつはマイナス多いなぁ。
      あと、おっさん(ほぼ爺さん)多いから、つまらないとか言うレベルじゃないダジャレとか、古い曲の歌詞を出してボケるやつとかは、返信無しのマイナス評価でボコボコにされているイメージ。

      • +1
  15. 説明読んでも♀→♂へ2日で1回しか変わらないように思えるんだけど……

    • +6

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