この画像を大きなサイズで見る砂漠でじっと耐えながら生きる植物というイメージのあるサボテンだが、新種を生み出すスピードは地球上でもトップクラスであることが明らかになった。
英レディング大学のジェイミー・トンプソン氏とクリス・ヴェンディッティ氏が750種以上のサボテンを分析したところ、花の形が変化する速さこそが、新種誕生を左右する要因だとわかった。
植物の新種誕生には「花の形と花粉を運ぶ昆虫の関係が重要」だというダーウィン以来の定説を覆す発見だ。
この研究成果は『Biology Letters』誌(2026年3月18日付)に掲載された。
参考文献:
- Cacti are evolving shockingly fast and scientists just learned why
サボテンは地球最速クラスで新種を生み出していた
サボテンといえば、砂漠の強烈な日差しの下でトゲを立て、何十年もかけてじっくり育つ植物だが進化の速度は速い。
サボテン科には現在約1,850の既知種が存在し、過去2,000万〜3,500万年の間にアメリカ大陸全域へと広がってきた。
地球上の植物グループの中でも、新種を生み出すペースは最速クラスに入る。
砂漠は「過酷で変化のない場所」というイメージとは裏腹に、生物の進化が急速に進むダイナミックな生態系だったのだ。
英レディング大学の研究者、ジェイミー・トンプソン氏とクリス・ヴェンディッティ氏はこう述べている。
サボテンをたくましく成長の遅い植物だと思う人は多いでしょうが、サボテン科は地球上で最も速く進化している植物グループのひとつです。
ボテンがどれほど速く進化しているかを知ることで、過酷で変化がないと思われがちな砂漠が、実は急速な自然の変化が起きているホットスポットであることがわかります
この画像を大きなサイズで見る花の形が速く変わるほど新種が生まれやすいことが判明
研究チームは107属750種以上のサボテンについて、花の長さのデータを詳細に分析した。
サボテンの花のサイズはわずか2mmの極小のものから、37cmに達する巨大なものまで、実に185倍もの幅がある。
これほど多様なサイズのバリエーションがあるにもかかわらず、花のサイズは新種が生まれる速さとほぼ関係がなかった。
では何が新種誕生を左右していたのか。
花の形が変化する速さが、新種誕生と強く結びついていた。
花の形が速く変化するサボテンの系統ほど、新たな種に分かれやすいことが一貫して確認された。
このパターンは、比較的最近の進化の歴史においても、数千万年前まで遡る古い進化の歴史においても変わらなかった。
ここで言う「花の形の変化」とは、ある種の集団の中で花の形が世代を重ねるごとに少しずつ変わっていくことを指す。
その変化のペースが速い系統では、集団どうしが異なる特徴を持つようになりやすく、やがて別の種として独立していく。
花がどんな形であるかよりも、どれだけ速く形を変えるかが、新種誕生と強く結びついていた。
この画像を大きなサイズで見る750種のサボテン分析が覆したダーウィン以来の定説
この発見が注目を集める理由のひとつは、150年以上にわたって植物進化学の基本的な枠組みとして受け入れられてきた考え方を覆している点にある。
19世紀の英国の博物学者チャールズ・ダーウィンは、1862年に発表したランの受粉に関する研究の中で、「特殊な形をした花と、その花粉を運ぶ特定の昆虫との密接な関係が新種の誕生を促す」と主張した。
以来、「花の形と送粉者となる昆虫の関係が植物の多様化を生む」という考えが定説として広く浸透してきた。
トンプソン氏はこう話す
より長く、より特化した花を持つサボテンほど多くの新種を生み出すと予想していました。ところが花のサイズはほとんど違いをもたらしませんでした。
花がどれほど精巧な形をしていても、形が変わらない種は新種に分岐しにくかったのです
さらに研究では、花のサイズそのものと花の形の変化速度のあいだにも相関がほとんどないことが確認された。
大きな花を持つ種が必ずしも速く進化するわけではなく、小さな花を持つ種でも花の形が速く変われば新種を生みやすい。
新種誕生を促すのは「どんな花か」ではなく「どれだけ速く変わるか」だった。
この研究を支えたのが、トンプソン氏ら3大陸11名の研究者が7年かけて構築したサボテン専用データベース「CactEcoDB」だ。
サボテンの形態・生息環境・進化的関係性を網羅したこのデータベースは『Nature Scientific Data』誌にも掲載されており、今後のサボテン研究の基盤として期待されている。
この画像を大きなサイズで見る進化速度がサボテン保全の新たな指標になる
この発見は、絶滅危機にあるサボテンの保全にも直結する可能性がある。
現在、サボテン約1,850種のうち約3分の1が絶滅の危機に瀕しており、気候変動や生息地の破壊がその主な原因とされている。
従来の保全活動では、希少種や固有種を優先的に守るという考え方が主流だった。
しかし今回の研究は、どの種が最もリスクにさらされているかを予測するうえで、進化速度という新たな視点が有効である可能性を示している。
トンプソン氏は、急速に進化できることが必ずしも生き残りを保証するわけではないと語る。
地球環境が多くのサボテンの進化速度を上回るペースで変化している現在はなおさらだ。
それでも進化速度を把握することで、どの種が最も支援を必要としているかを予測する手がかりになるという。
花の進化が数千万年にわたってサボテンの多様性を生み出してきたとすれば、その進化のペースが失われることは、新種が生まれる可能性そのものが失われることを意味する。
保全活動に進化速度という指標を加えることで、サボテンの未来を守る取り組みがより精度の高いものになるかもしれない
まとめ
この研究でわかったこと
- サボテンは成長が遅い植物だが、新種を生み出すスピードは地球上でもトップクラスだった
- 花のサイズの大小は新種誕生とほぼ無関係で、花の形が変化する速さが新種誕生と強く結びついていた
- 砂漠は変化のない場所ではなく、進化が急速に進むダイナミックな生態系だった
まだわかっていないこと
- 花の形の変化速度と新種誕生が「相関関係」にあることは確認されたが、どちらが原因でどちらが結果なのかはまだ解明されていない
- 進化速度が速い種が気候変動にも強いかどうかは、現時点では確認されていない
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References: DOI: 10.1098/rsbl.2025.0834
















