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充電が一瞬で完了。世界初の量子電池の実証に成功

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(著)

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Image credit: CSIRO
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 スマートフォンやEVが一瞬で満充電になる未来が、現実に近づいてきた。

 オーストラリアの研究チームが、量子力学を応用した世界初の量子電池プロトタイプの動作実証に成功した。

 化学反応に頼らない全く新しい仕組みの量子電池は、充電にまつわる常識をひっくり返す可能性を秘めている。

 この研究成果は『Nature Light: Science & Applications』誌(2026年3月13日付)に掲載された。

参考文献:

従来の電池と量子電池はどこが違うのか

 私たちが毎日使うスマートフォンやノートパソコン、電気自動車(EV)に搭載されているリチウムイオン電池は、化学反応によってエネルギーを蓄える。

 充電中、電池の内部ではリチウムイオンという極めて小さな粒子が正極から負極へと一つひとつ順番に移動し、そのプロセスでエネルギーが蓄積される。

 200年以上前に電池が発明されて以来、この化学反応という根本的な仕組みは変わっていない。

 量子電池はこの化学反応をまったく使わない。

 「量子力学」と呼ばれる物理学の法則を利用して、光エネルギーを直接吸収してエネルギーを蓄える。

 量子力学とは、原子や分子といった極めて小さな粒子の世界にだけ働く特別な物理法則で、私たちの日常スケールでは起きない現象が次々と起きる世界だ。

 充電・蓄電・放電という基本的な機能は従来の電池と同じだが、エネルギーを蓄えるメカニズムは根本から異なるのだ。

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Image by Istock quantic69

超吸収の力で充電が一瞬で完了する仕組み

 量子電池の充電速度を支えているのが、「超吸収(Superabsorption)」と呼ばれる現象だ。

 通常、分子は光エネルギーを一つひとつ個別に吸収する。

 学校の給食で、生徒が一列に並んで一人ずつ順番に食器を受け取るイメージだ。生徒の数が増えても、一人ひとりが食器を受け取る時間は変わらない。

 超吸収では、電池内のすべての分子が「一斉に」協調して光エネルギーを吸収する。

 給食で全員が同時にまとめて食器を受け取れる仕組みに切り替わるイメージだ。

 この協調動作によってエネルギーの吸収速度が飛躍的に高まり、充電時間が劇的に短縮される。

 超吸収は「超放射(Superradiance)」という現象の逆のプロセスでもある。

 超放射とは原子の集団が一斉に光を放出する現象で、超吸収はその逆、分子の集団が一斉に光を吸収する現象だ。

 CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)のジェームズ・クアック博士率いる研究チームは、この超吸収を量子電池に応用することで、室温での急速充電を世界で初めて実証した。

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世界初の完全機能型量子電池(概念実証版) Image credit: CSIRO

分子が増えるほど充電が速くなる理由

 量子電池にはもう一つ重要な特性がある。電池を構成する分子の数が増えるほど、充電速度がさらに上がるというのだ。

量 子電池の内部には、マイクロキャビティ(極小の光の箱)と呼ばれる構造があり、その中に有機色素分子がぎっしり詰まっている。

 光がこの箱に閉じ込められることで、光と分子が強く結びつき、個々の分子がバラバラに動くのではなく全体が一つのかたまりとして協調して動き始める。

 この状態になって初めて超吸収が起きる。

 先ほどの給食の例えで言えば、生徒が増えるほど全員での受け取り作業がさらに速くなるイメージだ。

 研究によれば、分子数が2倍になると充電時間はほぼ半分に短縮される。

 分子数をNとすると充電時間は1/√N(Nの平方根分の1)で短くなる計算で、分子数が増えるほどこの効果はさらに増幅される。

 この特性を精密に測定するために、メルボルン大学化学部の超高速レーザー研究室が活用された。

 1フェムト秒(1000兆分の1秒)という極めて短い瞬間だけ光るレーザーと、分光法(光を使って物質内部の状態を読み取る技術)を組み合わせることで、超吸収による充電の挙動を精密に確認することに成功した。

 メルボルン大学のジェームズ・ハッチソン准教授、トレバー・スミス教授、そしてRMIT大学の研究者たちも本研究に参画している。

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量子電池の実証実験が行われた、メルボルン大学化学部の超高速レーザー研究所 Image credit:Prof Trevor Smith, University of Melbourne

量子電池が実現する未来とまだ残る課題

 今回の成果はあくまで「概念実証(プルーフ・オブ・コンセプト)」の段階だ。

 理論が実際に機能することを小規模な実験で証明した、最初のステップにあたる。

 スマートフォンやEVに搭載できる製品レベルの量子電池が実現するまでには、まだ多くの技術的課題が残っている。

 研究チームが次の目標として掲げているのは、蓄えたエネルギーをより長く保持できるようにすることだ。

 超高速で充電できても、そのエネルギーをどれだけの時間保ち続けられるかが、実用化に向けた次の大きな壁となっている。

 それでも今回の実証が持つ意味は大きい。

 室温という現実的な環境で量子効果による急速充電が機能することを、世界で初めて確認した成果だからだ。

 クアック博士は「室温で急速な充電とエネルギー貯蔵が実現できるという量子電池の可能性を検証し、次世代のエネルギー技術への基盤を築くものだ」と述べている。

 スマートフォンが数秒で満充電になり、EVが給油並みのスピードで充電できる未来は、量子電池の研究が一歩ずつ積み重なることで、いつか現実のものになるかもしれない。

まとめ

この研究でわかったこと
・光エネルギーで充電する「量子電池」が、実際に動くことが世界で初めて証明された
・量子電池は内部の分子が全員一斉にエネルギーを受け取る仕組みで、超高速充電が可能になる
・分子の数が2倍になると充電時間がほぼ半分になることが確認された

身近な例に例えるなら?
給食で生徒が一人ずつ順番に食器を受け取るのが従来の電池。量子電池は全員が同時にまとめて受け取れる上に、生徒が増えるほど受け取りがさらに速くなる。クラスが大きくなればなるほど、給食の準備が速く終わるイメージ。

まだわかっていないこと・今後の課題
・充電は速くなったが、蓄えたエネルギーをどれくらい長く保てるかは不明
・スマートフォンやEVに使えるサイズへ拡大できるかどうかはこれから検証が必要

References: 10.1038/s41377-026-02240-6

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この記事へのコメント 14件

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  1. これ、もしかしてリチウムイオン電池すらいらなくなるのでは
    電池の容量は最小限にして、少なくなったら街角でピッと充電
    EVも走りながら道路から充電
    そういう未来が待っているかも?

    • +11
  2. 量子という単語が出るとちんぷんかんぷんすぎる・・・

    • +13
    1. 『量子電池』だなんて、SFでもなかなかお目にかかれない単語だよね。

      • +7
    2. 中身の難しさもさる事ながら、量子って単語で極小世界をイメージ出来なくて今でも慣れない。
      なんか逆に想像もつかないでっかさのイメージすらある。

      • +6
  3. 要するにちょっぱや太陽電池ってこと? 光電効果だって普通に量子力学的な原理なわけだし。

    • +7
  4. 質量のある残像だとっ!?

    • 評価
  5. エネルギー充電する時間に併設してるコンビニでコーヒー
    一杯やってる時間に充電終わってる日も近いのか
    一番のメリットは宇宙空間であり、人工衛星の充電では
    一瞬の充電が衛星の寿命持ちが変わるので宇宙計画も
    かなり変わるだろうな

    • +5
  6. >光エネルギーで充電

    ウルトラマンかな?

    • +3
  7. EVが普及しない訳の1つとして充電時間の長さがあると思うんだけど、これはそれを消してくれる素晴らしい発明だね

    • +6
    1.  時間が短いということは熱の問題が出てくる(急速充電するとスマホも熱くなりますよね)ので、その辺をどう解決するか期待してます。 また電池のもう一つの側面の容量問題はどうだろうな? まぁ、充電時間が短ければ容量が少なくてもカバーできるはずだから、そういう面でも期待です

      • 評価
  8. 量子電池の研究が始められたのは2013年と大変若い研究分野みたいですね
    実験成功したと言っても、まだ数ナノ秒で使い切ってしまう電池容量だとのこと
    実用化すると大変便利になると思いますが
    私が生きている内にはちょっと無理かなーって気がしています

    • +4
  9. 中国EVは5分で充電完了、って謳ってるメーカーがあるけど、あれは本当なのかな。
    その代わり寿命が半年、とかだったりして。

    • 評価
  10. これが普及したら…
    現在の発電所~各家庭や工場、鉄道なんかへの送電網が全撤去される未来がある?
    一気にSFっぽくなるな

    • 評価

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