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光よりも速く移動する暗闇を発見。50年前の予測がついに証明される

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(著)

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Image by pixabay Sunny611
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 光の中には、光同士が打ち消し合って完全に暗闇になる「暗点」が存在する。

 この光渦と呼ばれる暗点が光速を超える速さで移動することを、イスラエルのテクニオン工科大学の研究チームが世界で初めて実験的に確認した。

 1970年代から理論上は予測されていたこの現象が、約50年の時を経てついに証明されたのだ。

 この研究成果は『Nature』誌(2026年3月25日付)に掲載された。

光の中に生まれる暗点とは何か

 光には、波のように重なり合う性質がある。複数の光が重なったとき、波の山と谷がぴったり重なると互いに打ち消し合い、その地点の光が完全に消える。

 この「完全な暗闇の点」が「光渦(ひかりうず)」と呼ばれる暗点だ。

 渦という現象は身の回りにも多く見られる。

 コーヒーをかき混ぜたときにできる小さな渦、排水口に吸い込まれる水の流れ、空気の気流など、いずれも同じ種類の現象だ。

 光渦はそれと同じ構造が光の中に生じたもので、自然界では珍しくない。

 光渦の存在自体は以前から知られていたが、それが実際にどのような速さで動くのかは長らく謎のままだった。

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Image by Istock Raul Ruiz

光の暗点「光渦」は光よりも早く動くのか?

 1970年代、あらゆる波の中に生じる渦が、その波自体よりも速く移動する可能性があると理論的に予測されていた。

 光の波、音波、水の波など、波と呼ばれるものであれば種類を問わず起きうる現象だという主張だ。

 しかしこれを光の世界で実験的に確かめることは技術的に極めて難しく、約50年にわたって誰も証明できずにいた。

 今回、イスラエルのテクニオン工科大学のイド・カミナー教授率いる研究チームは、大学内の電子顕微鏡センターに独自の観測システムを構築した。

 電子ビームを使って物質内部の極めて微細な現象を高精度で捉える「電子干渉法」という技術で、特殊な電子顕微鏡にレーザーシステムと精密な光学装置を組み合わせることで、これまでにない鮮明さと精度での観測を可能にした。 

 光渦の動きを捉えるには、光速を超える動きが起きやすい環境を整える必要がある。

 そこで実験に使われたのが、六方晶窒化ホウ素という特殊な物質だ。

 窒化ホウ素にはいくつかの種類があり、その中でも六角形の格子状に原子が並んだ層状構造を持つものが六方晶窒化ホウ素で、黒鉛に似た構造から「白い黒鉛」とも呼ばれる。

 この素材に光を通すと、「ポラリトン」と呼ばれる特殊な波に変換される。ポラリトンとは光と物質が混ざり合った状態の波で、真空中の光速の約100分の1という非常にゆっくりとした速さで進む。

 この極端に遅い波の中では、光渦が相対的に跳躍しやすくなり、光速を超える動きが観測しやすくなる。

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光の波の中に、青やオレンジの渦がぐるぐると広がっている様子を描いたイラスト。明るさが完全にゼロになる暗点「光渦)」も見えている。イ研究チームは、この暗点を観測・測定した。Image credit:Technion-Israel Institute of Technology

光渦(暗点)は光速を超えることが実験で証明

 研究チームは今回の実験で、光渦が光速を超える速さで移動することを世界で初めて直接観測することに成功した。

 光速を超えたと聞くと、アインシュタインの相対性理論に矛盾するのではないかと思うかもしれない。

 相対性理論では「光速は宇宙で最速であり、何もそれを超えられない」とされているからだ。

 しかしこの法則が適用されるのは、質量を持つ物質や、エネルギーや情報を運ぶ信号に限られる。

 光渦はこのいずれにも該当しない。質量を持たず、エネルギーも情報も運ばない。

 水面の波紋が広がるとき、水そのものが移動しているわけではなく、波の形が伝わっているだけであるのと同じ話だ。

 光渦の移動も同様で、実体のある何かが光速を超えて飛んでいるわけではない。

 そのためアインシュタインの理論は何ら揺らいでおらず、物理学の根幹は損なわれていない。

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Image by Istock phochi

顕微鏡技術と量子研究への応用

 カミナー教授はこの発見について、光渦に限った話ではなく、音波、流体、超伝導体など、あらゆる種類の波に共通する自然界の普遍的な法則を明らかにしたものだと説明する。

 超伝導体とは特定の低温条件下で電気抵抗がゼロになる物質で、MRIや量子コンピュータへの応用でも注目されている素材だ。

 今回の実験で使われた電子干渉法は、電子ビームを使って物質内部の極めて微細な現象を高精度で捉える観測技術で、これまで見えなかったナノスケールの動きを可視化できる。

 カミナー教授はこの技術が物理学・化学・生物学における隠れたプロセスの解明に貢献し、自然が最も速く動く瞬間を初めてとらえる手段になると期待を寄せる。

 半世紀を超えて証明されたこの発見は、次世代の顕微鏡技術や量子情報の研究に向けた新たな扉を開くものとなった。

References: Superluminal correlations in ensembles of optical phase singularities

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この記事へのコメント 4件

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  1. なるほど、わからん

    • 評価
  2. 情報伝達速度が光を超え得るなら、超新星爆発の予兆をこの情報伝達方法で検知したら観測が捗ると予測。

    • 評価
  3. 光を越える存在を可視化すると言うのが出来の悪い自分には判らない
    観ている段階で高速移動をいていると思うのだが光の速度を超えたものは見えない気がするけど見えるものなの?

    • 評価
  4. 位相反転、とは違うのだろな

    • 評価

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