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太陽が19日間連続で謎の電波信号を発信。その原因が明らかに

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(著)

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Image credit: Miloslav Druckmüller, Peter Aniol, Shadia Habbal/NASA Goddard, Joy Ng
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 2025年8月21日に太陽が放った電波バーストが19日間も消えず、観測史上最長の記録を打ち立てた。

 通常は数時間から数日で終わるはずのこの現象が、なぜこれほど長続きしたのか。

 NASAと欧州宇宙機関(ESA)の4機の探査機が力を合わせた追跡調査の末、その源は太陽大気に潜む”ある構造体”だったことが判明した。

 この研究成果は『The Astrophysical Journal Letters』誌(2026年5月14日付)に掲載された。

参考文献:

太陽からの電波が19日間消えなかった謎

 2025年8月21日、太陽からひとつの電波バーストが検出された。太陽はこうした電波を日常的に放出した。

 通常であれば数時間から数日で収まるはずなので、研究者たちは特に気に留めなかった。

 ところがこの電波は消えなかった。1日が過ぎ、1週間が過ぎても信号は続いた。

 最終的に電波バーストは9月9日まで途切れることなく続き、合計19日間という観測史上最長の記録を打ち立てた。

 それまでの記録は5日間で、今回はその約4倍にあたる。

 今回の電波バーストは「タイプIV(Type IV)バースト」と呼ばれる種類に分類される。

 太陽大気のコロナ(太陽を取り囲む最外層の大気で、温度が100万度を超える領域)にある巨大な磁気ループの中に電子が閉じ込められ、その電子が動くことで電波が長時間にわたって放射され続ける種類だ。

 タイプIVバースト自体は珍しくないが、これほど長く続いたケースはかつてなかった。

4機の探査機が太陽系内から連携追跡

 太陽系の内側に散らばって観測を続ける4機の探査機が、この異例の現象を捉えていた。

 最初に電波バーストを検出したのは、ESAとNASAが共同で運用するソーラー・オービター(Solar Orbiter)だ。

 太陽に近い軌道を周回しながらこれまでで最も詳細な太陽観測を行っている探査機で、8月21日に信号を捉えた。

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太陽探査機ソーラー・オービターの観測データ例。電子が太陽から離れて宇宙空間へ進むにつれて、周囲で相互作用する荷電粒子が少なくなるため、電波の周波数は低下していく。グラフに見られるほーっけースティックのような水色の形は、実際に発生した電波バーストの様子を表したものだ。Image credit:ESA & NASA/Solar Orbiter/RPW Team, graphic made by Katerina Pesini

 その12日後、NASAのパーカー・ソーラー・プローブとWind衛星が同じ電波バーストを観測した。

 パーカー・ソーラー・プローブは太陽のコロナを直接飛行するために設計された探査機で、人類史上もっとも太陽に近づいた機体だ。

 Windは1994年から稼働を続ける衛星で、太陽から吹き出す粒子の流れである太陽風を長年にわたって観測してきた。

 そして翌9月9日、NASAのSTEREO-Aが最後にこの電波バーストを観測した。STEREO-Aは太陽嵐の立体的な観測を目的に設計された探査機だ。

 4機がそれぞれ数日間ずつ、3つの観測窓に分かれて信号を受信できたのは、太陽の自転によって発生源が少しずつ各探査機の観察できる範囲に入ってきたからだ。

 電波バーストの源は太陽とともに回転しながら、19日間を通じてその場所に存在し続けていた。

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NASAの太陽調査プロジェクト「STEREO」では、 2機の観測衛星「STEREO-A」と「STEREO-B」が2006年10月26日に打ち上げられた。この2機によって、太陽を立体視(3D観測)することが可能となったが、STEREO-Bは2014年に通信が途絶えている。現在はSTEREO-Aのみでの運用が行われている。Image credit:NASA

発生源は太陽大気にそびえる巨大な磁気の塔だった

 研究チームはSTEREO-Aのデータを使った新しい追跡手法を開発し、電波バーストの発生源が「ヘルメット・ストリーマ(Helmet Streamer)」と呼ばれる太陽大気の構造体であることを明らかにした。

 ヘルメット・ストリーマとは、太陽のコロナに形成される巨大な磁気の塔のような構造体だ。

 高温のプラズマ(電子と原子核が分離した高エネルギーの気体状の物質)が太陽から外側に伸びる磁気ループに沿って閉じ込められ、プラズマの長い尾が宇宙空間へと伸びる。

 その形が兵士のかぶるヘルメットに似ていることからこの名がついた。日食の際に太陽の縁に沿ってV字型に輝く白い突起として肉眼でも確認できる。

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2025年8月に観測された記録的な太陽電波バーストは、「ヘルメット・ストリーマ」と呼ばれる太陽大気の構造から発生したことが判明した。この画像は2017年8月21日の皆既日食に撮影されたもので、ヘルメットストリーマー特有のV字型構造が確認できる。 Image credit:Miloslav Druckmüller, Peter Aniol, Shadia Habbal/NASA Goddard, Joy Ng

 この構造体は比較的安定した大規模な磁場を持っており、電子を長期間にわたって閉じ込め続けるのに適した環境を作り出していた。

 通常、太陽の磁気構造は常に変化し、崩れ、つなぎ直されを繰り返す。

 ヘルメット・ストリーマが安定していたからこそ、電波バーストが19日間という異例の長さで続いたと考えられる。

 では、そもそもなぜこれほど大量の電子がこの構造体の中に蓄積されたのか。

 その答えは、同じ領域で連続して起きた太陽の爆発現象にあるとみられている。

3回連続の太陽爆発が電子を送り込んだ

 研究チームが注目したのは、ヘルメット・ストリーマと同じ領域で連続して起きた3回のコロナ質量放出だ。

 コロナ質量放出とは、太陽のコロナから大量のプラズマと磁場が宇宙空間へ一気に噴き出す爆発現象で、英語の頭文字からCMEとも呼ばれる。

 地球に到達すると磁気嵐を引き起こし、人工衛星の障害や大規模停電の原因になることもある。

 この爆発が3回連続して起き、ヘルメット・ストリーマの中に大量のエネルギーを持つ電子を次々と送り込んだとみられている。

 それが電子の貯留層を形成し、19日間にわたって電波を発し続ける源になった可能性が高い。

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Image by Istock

宇宙天気の予報精度を高める発見として期待される

 タイプIVバーストの電波そのものは無害だ。

 しかし電波を生み出した磁気環境は、危険な高エネルギー粒子を宇宙空間に放出する太陽活動とも深く結びついている。

 こうした粒子が地球に向かって放出されると、人工衛星の電子機器に障害を与えたり、宇宙飛行士の被ばく線量を増加させたりする。

 今回の研究で開発された新しい追跡手法は、タイプIVバーストの発生源をより正確に特定できるようにするものだ。

 発生源がわかれば、どの方向にどれほどの規模の太陽活動が起きているかを早期に把握しやすくなり、宇宙天気予報の精度向上につながると期待されている。

 現在、太陽はおよそ11年周期で繰り返す活動サイクルの活発な時期にあり、フレアやコロナ質量放出の頻度が増している。

 地球軌道上には数千機の人工衛星が運用されており、宇宙天気の正確な予報はこれまで以上に重要になっている。

 研究チームは今回の発見で、その精度を高める上での手がかりになると期待している。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 2025年8月21日に太陽が放った電波バーストが19日間続き、観測史上最長の記録を更新した
  • 電波の発生源は太陽大気にある巨大な磁気構造体「ヘルメット・ストリーマ」だった
  • 同じ場所で3回連続して起きた太陽の爆発が、電子を大量に送り込んだとみられる

身近な例に例えるなら?

キャンプファイヤーに薪を3回続けて追加したようなものだ。通常なら燃え尽きるはずの火が、薪を足すたびに勢いを取り戻し、予想外に長く燃え続けた。今回の電波バーストも、3回の太陽爆発が次々と電子を送り込んだことで、消えるはずの信号が19日間も持続したと考えられる。

まだわかっていないこと

  • 3回の太陽爆発が本当に原因かどうかは、現時点では「可能性が高い」という段階にとどまっている

References: NASA Missions Track Record-Breaking Radio Burst from Sun / DOI 10.3847/2041-8213/ae5537

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