メインコンテンツにスキップ

太陽に異変、静穏な時期に入るはずが黒点や太陽フレアが増加し活発に

記事の本文にスキップ

26件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock
Advertisement

 長いあいだ活動を弱めていた太陽に、予想外の変化が起きている。過去の観測から、太陽はこれからしばらく静穏な時期に入ると考えられていた。

 ところが、2008年を境に黒点の数や太陽風、磁場の強さが増えはじめ、現在もその傾向が続いているという。

 NASAの最新研究によれば、この変化は一時的な揺らぎではなく、太陽が再び活動を強めている兆候かもしれないという。

 「太陽の不気味な目覚め」は地球、そして我々の生活にどう影響を及ぼすのだろう?

 この研究は『The Astrophysical Journal Letters』誌(2025年9月8日付)に発表された。

静穏な時期に入るはずだった太陽に異変

 1980年代に入ってから、科学者たちは太陽の表面活動が徐々に弱まっていることに気づきはじめた。黒点は減少し、太陽風や磁場の変動も穏やかになっていった。

 そして2008年、太陽の活動は観測史上もっとも弱い状態にまで低下した。

 この記録的な静けさを受け、専門家たちは「太陽はこのまま、何十年にもわたる長期の静穏な時期に入るだろう」と予測した。

 実際に、過去には同様の静穏期が長く続いたことがある。たとえば17世紀の「マウンダー極小期(1645年~1715年)」や、18世紀末から始まった「ダルトン極小期(1790年~1830年)」では、黒点がほとんど見られなくなった。

 ところが、その予測は見事に裏切られることになる。

 2008年後半から、静かに燃えていた焚き火が突然パチパチと音を立てて炎と火花を散らすように、太陽は突如として活動を強めはじめたのだ。

 2009年に入ると、プラズマや磁場に関するさまざまな観測値が上昇し、黒点の数も予測を上回る勢いで増えていった。

 「すべてのデータが太陽は長期の低活動期に向かっていると示していた。だからこそ、その流れが逆転したのは大きな驚きだった」と、NASAジェット推進研究所のジェイミー・ジャシンスキー博士は語っている。

「太陽はゆっくりと目を覚ましつつあるように見える」とも……。

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

太陽には周期があるが、完全には読めない

 太陽はおおよそ11年ごとに、活動の強い時期(太陽極大期)と弱い時期(太陽極小期)を繰り返している。これが「太陽活動周期」と呼ばれるものである。

  科学者たちはこの周期を観測しながら、太陽の変化を予測してきた。

 この11年周期は、黒点や太陽フレアの数など、目に見える活動の変化を表しているが、実は太陽の磁場そのものも深く関わっている。

 太陽の磁場は約11年ごとに反転しており、元の極性に戻るには2回の反転が必要になる。つまり、太陽には22年周期の「ヘールサイクル(Hale cycle)」と呼ばれる磁場のリズムも存在している。

 今回のように、活動が長期的に弱まっていくと予測されていたにもかかわらず、急に反転して活発になるといった現象もある。太陽がなぜそのような変化を見せるのか、明確なメカニズムはまだ解明されていない。

 「太陽がなぜダルトン極小期に入り、1790年から40年もの間、極端に静かな状態になったのか、今でもわかっていない。長期的な傾向は非常に読みづらい」と、ジャシンスキー博士は語っている。

この画像を大きなサイズで見る
2025年9月9日、NASAの太陽観測衛星が撮影した太陽 NASA/GSFC/Solar Dynamics Observatory

太陽の活発化が地球に与える影響とは

 太陽の活動が活発になると、その影響は地球にも及ぶ。

 太陽から放出される大量のエネルギー粒子、いわゆる太陽フレアやコロナ質量放出(プラズマの塊が放出され、大気の外側が吹き飛ばされる現象)は、地球の磁場を乱し、通信やGPS、電力インフラに障害を起こすことがある。

 また、宇宙空間では、人工衛星の機器がダメージを受けたり、宇宙飛行士が高い放射線にさらされたりするリスクも高まる。

 特に現在NASAが進めている「アルテミス計画」では、月面での人類活動を想定しており、太陽の動向を常に把握することが安全性の確保に欠かせない。

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

新たな観測ミッションで太陽の変化を追う

 NASAは太陽の監視体制を強化するため、今後複数の新しい宇宙ミッションを予定している。2025年9月23日以降に、「IMAP(Interstellar Mapping and Acceleration Probe)」と「キャラザーズ・ジオコロナ観測所」の打ち上げが控えている。

 また、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は「SWFO-L1(Space Weather Follow On-Lagrange 1)」という衛星を使って、太陽風や宇宙天気のリアルタイム監視を行う計画だ。

 今回の研究では、NASAのデータベース「OMNIWeb Plus」に蓄積された長期観測データが活用された。

 とくに、1990年代から稼働を続ける「ACE」と「WIND」という探査機から得られた観測データが、太陽の変化を明らかにする大きな手がかりとなった。

この画像を大きなサイズで見る
太陽と地球間のリサジュー軌道を周回する探査機ACE  / Image credit:Andrzej Mirecki / WIKI commons

 太陽の変化は、地球上のテクノロジーやライフライン、そして未来の宇宙探査にまで影響を及ぼす。

 だからこそ、私たちは太陽「常に変化し続ける天体」として見つめ続ける必要があるのかもしれない。

References: Iopscience.iop.org / NASA

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 26件

コメントを書く

  1. うーむ やっぱりそうなのか 宇宙天気予報ってサイトほぼ毎日見てるけど
    そろそろ黒点減少になる時だと思ってるのになかなか少なくならないんだよな。
    まあ回転してる右半分と左半分で黒点の数が違うようになってきてるから

    そろそろ全域で減少になると思うけど25/9/25日時点で太陽黒点相対数が155ぐらい有って
    少ない時でも55有るからな。
    黒点の11.1年周期からしたら現在太陽黒点相対数50~100ぐらいなはずなんだけど・・。
    (自分の推測です 根拠は過去の黒点数ぐらいです)
    まあダルトン極小期の反対バージョンなのかもシレン(笑

    • +6
    1. 太陽活動が観測史上最低だったという2008年も
      別に寒冷化したわけではないから今の温暖化の主因はあくまで他にあり
      太陽活動はそれに多少の変化を与える程度、というのが実態かと思う

      • +10
    2. それが正体なら2008年の気温は観測史上もっとも低いかそれに近くないとおかしいよね?

      > そして2008年、太陽の活動は観測史上もっとも弱い状態にまで低下した。

      2008年の世界平均気温は1991〜2020年の30年平均値より0.08度低かった、全然大した差ではない。だから正体ではない
      少なくとも産業革命以後の上昇を打ち消せるほどではない
      気象庁のデータは1891年からだったけど1929年ぐらいまでは1991〜2020年の30年平均値より0.6度から0.9度ぐらい低いんだわ
      その後ジリジリ上がっていっている
      だから太陽より人間の生産活動、特に大戦後の重工業化が影響している可能性のほうが高いね

      • +7
    3. 主要因は人間の出すCO2で確定ですよー
      なのになぜ未だに他原因やらをほじってるかと言うと、CO2を減らした結果どれくらい効果があったかの測定に正確なモデルが必要だから
      折角効果が出てたのに太陽や火山やその他諸々に掻き消されてよく分かりませんでしたじゃアレでしょ
      効果が無い方が都合がいい人はいっぱいいる。彼らも容易には破れないほど理論武装はしてくる。経済活動にも大きく響く事案なだけに予測・計画・実施・確認の精度を上げることは対応を継続していくうえで必須

      • +1
      1. この話でいつも思うのは、人間が今のような経済活動をしていない何万年も昔から地球は寒くなったり暑く成ったりしてたんでしょ?
        大陸の海岸線が大きく変わるほどに。

        その時は、何が原因?たぶん地球内部から二酸化炭素が出てたんだろうけど、今はそうではない根拠は?知らない所、例えば海の底の広範囲から二酸化炭素出てるとか。
        その地球の活動に太陽が影響するだろうし、結局温暖化なんて太陽でしょ?って勝手に思ってるけど

        • -1
        1. > 結局温暖化なんて太陽でしょ?って勝手に思ってるけど
          それが正体なら2008年の気温は観測史上もっとも低いかそれに近くないとおかしいよね?

          > そして2008年、太陽の活動は観測史上もっとも弱い状態にまで低下した。

          • +2
        2. 更新世における氷期・間氷期の周期変化は
          ミランコヴィッチサイクルによる日射量の変化が主因とされてる
          (太陽活動の変化とはまた別なので注意)

          現在の温暖化はそれを促すような日射量の変化は観測されていないので
          少なくとも主因は別にある可能性が高いかと

          • +1
  2. 磁場の観測で2030年辺りから太陽活動は弱まり
    小氷河期になる、と言う英国の研究チームもあるが
    どうなんだろうね。
    どちらせよ、人間の中途半端な温暖化対策なんて
    焼け石に水だろうね、、、
    太陽さん相手じゃ全人類江戸時代くらいの生活水準に
    したとしても人の影響なんて微々たるものだろうなぁw

    • -3
  3. 太陽さんがめちゃ元気なら
    わしら人間が少しくらい努力したって涼しくならんわ

    • +1
  4. 2026年がピークで27年からは寒冷化が進むと思ってたのにそりゃあないよ

    • 評価
  5. 昆虫の繁殖パターンがズレてることにも関係してるかもしれんな。
    予想では一昨年から今年にかけて北海道のマイマイガが大発生するはずなんだが、なぜか増えたのはクスサンでマイマイガの話は全く聞かなかった。
    あいつら、太陽のパターン読み取ってんのかな?

    • +4
  6. だれや!団扇であおいでるやつは いこり過ぎとるやろ

    • -2
  7. ホルストの「惑星」という組曲の「火星」は激しく燃え盛るようなダイナミックな曲だけど、太陽の姿こそこの曲のイメージにピッタリだと前から思っています。
    太陽が元気なのは良いけど、地球に悪影響を及ぼさない事を願いたいです。

    • 評価
    1. ホルストの惑星のイメージは神話や占星術由来ですよ
      火星=軍神マース
      です

      • +2
  8. アナログの資料とか地図も念の為すぐ使えるよう備えといたほうがいいかねぇ。
    この前広すぎる公園行った時全然ネット繋がらなくて調べ物とか出来なかったが、通信障害でずっとそうなったら困るしな。

    • 評価
  9. ガミラスのプロトンミサイルが命中したのじゃ!!

    • 評価
  10. だれや!団扇であおいでる奴は いこり過ぎや

    • -2
    1. 山本貴嗣作のSFで、石炭で出来てる太陽を思い出したww

      • 評価
  11. 日本の太陽観測衛星「ひので」も頑張ってるでな。
    2008年から17年、今も観測を続けている。

    • +2
  12. 宇宙天気予報の太陽画像はもちろん、NASAの太陽画像も10日以上更新されてないみたい。
    どうしたんだろ?!

    • 評価
  13. 暑いのとか眩しいのとか大っ嫌いなんで自分が生きてる時期に太陽に活発になられるとタイミング悪過ぎてイラつくなぁ

    • 評価
  14. もう暑いのはイヤだ
    本当にイヤだ

    このまま太陽が元気で、地球に何らかの影響があるなら、暑くなる以外の影響はかろうじて受け入れられるけど、暑いのは、ホントにマジでイヤだ。

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

画像

画像についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。