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NASAの探査機が太陽のコロナに突入!ヘリシティバリアの正体に迫る

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(著) (編集)

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NASAの探査機、パーカー・ソーラー・プローブ/ Image credit:NASA GSFC/CIL/Brian Monroe
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 NASAの宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が収集した観測データにより、科学者を長年悩ませてきた太陽最大級の謎の1つがいよいよ解明に近づいているかもしれない。

 注目されているのは、太陽の外層大気「コロナ」の中に存在するとされる見えないエネルギーの壁、「ヘリシティ・バリア」だ。

 これは磁場のねじれ具合によって形成される物理的な障壁で、エネルギーの流れやプラズマの加熱に深く関わっているという。

 英ロンドン大学クイーン・メアリー校とニュージーランドのオタゴ大学の研究チームは、このバリアの存在が、コロナが太陽の表面よりも高温であるという「コロナ加熱問題」を説明するカギになると考えている。

この研究は『Physical Review X』(2025年7月8日付)に掲載された。

太陽の謎の解明に挑む「パーカー・ソーラー・プローブ」

 2018年、NASAの宇宙探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」は、人類史上もっとも太陽に接近するという大切な任務を帯びて打ち上げられた。

 2021年、史上初めて太陽のコロナにダイブし、その周辺にある激しい環境を地球に伝えてくれた。

 また、2025年6月には24回目の接近を敢行。その時、時速69万2000kmという人類史上最速のスピードも樹立している。

 この探査機によって集められた太陽のデータは、私たちにとってもっとも身近な恒星の秘密を解明する大切な手がかりとなる。

 だが、中でもとりわけ解明が望まれる謎がある。それは太陽の外層大気、コロナが異常なまでに熱いというもので、「コロナ加熱問題」として知られている。

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NASAの探査機、パーカー・ソーラー・プローブ/ Image credit:NASA GSFC/CIL/Brian Monroe

太陽の表面より大気が熱い奇妙な現象

 太陽の中で一番熱いのは、1500万度に達する中心部のコアだ。一方、太陽の表面にあたる光球はおよそ5500度で、ずっと温度が低い。

 ところが、その外側に広がるコロナは最大で200万度に達する。

 つまり表面までは中心から離れるほど温度が下がるのに、そこを境に今度は中心から離れるほど温度が上がるのだ。

 なぜ、このような温度の逆転現象が起きるのか、この現象が発見されてからこれまでずっと謎に包まれていた。

新たに提唱されたヘリシティ・バリア仮説

 なぜ外側のコロナの方が熱いのか?最初に2つの仮説が提唱された。

 1つは、「イオン・サイクロトロン波」と呼ばれる磁気の乱流がコロナを加熱するという説だ。だがこの乱流説では、水素・ヘリウム・酸素といったガス中のイオンは加熱されるのに、電子がそれほど熱くならない理由を説明できない。

 もう1つは「磁気波」が関係するとする説だ。だがこの説では、温度差は説明できるが、太陽表面から発生する磁気波の量が理論値に達しておらず、現実にはエネルギーが不足している。

 そこで両説をつなぎ合わせて、新たに提唱されたのが「ヘリシティ・バリア(helicity barrier)仮説」だ。

 今回の研究に携わったオタゴ大学のロメイン・メイランド博士によれば、プラズマ加熱(コロナの加熱)は傾斜を流れる水に例えることができるという。

 坂の下には電子があるのだが、ヘリシティ・バリアは水を堰き止めるダムのような役割を果たし、イオン・サイクロトロン波に変換する。だから水素・ヘリウム・酸素などのイオンは異常に高温になるのに、電子は比較的冷たいままなのだ。

パーカー・ソーラー・プローブが太陽のコロナにこれまでで最も接近して撮影された画像

ヘリシティ・バリアの存在を証明

 ヘリシティ・バリア仮説が述べているのは、バリアによって乱流エネルギーが消えるプロセスが変化して、プラズマの加熱のされ方もまた変わるということだ。だから、そうしたプロセスがあることを確認できれば、仮説の証明となる。

 そして今回まさにそれを示す証拠が、パーカー・ソーラー・プローブのデータから発見されたのだ。

 ヘリシティ・バリアが形成されるには、熱エネルギーが磁気エネルギーに比べて相対的に低いといった、特定の条件が整う必要がある。

またバリアがある時とない時では、磁場が変動する様子も違うものになると考えられる。

 そこで研究チームは、磁場の変動とあわせて、熱エネルギーと磁気エネルギーの比率といった太陽風の状況を分析。

その結果、磁場の振る舞いが、ヘリシティ・バリア仮説から予測されるものと一致していることが確認されたのだ。

 また、バリアが形成される具体的な数値条件も特定され、実際に太陽の周辺では、そうした条件が頻繁に出現していることも明らかになったという。

 研究チームによれば、この発見はヘリシティ・バリアの存在を裏付ける明確な証拠であり、太陽コロナ加熱や太陽風の加速といった長年の疑問に答えてくれるとのことだ。

References: Journals.aps.org / Qmul.ac.uk

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この記事へのコメント 9件

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  1. 毎日見ている太陽にも大きな謎があるんだから、宇宙全体では途方もない数の謎が溢れているんだろうなあ

    • +7

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