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人間の細胞の中に新たな小器官「ヘミフソーム」が発見される

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(著) (編集)

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新たに発見されたヘミフソーム(黄色と緑)/ Image credit:Tavakoli et al.,Nat. Commun. , 2025
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 人間の身体は何世紀にもわたって詳細に研究され続けているが、技術の進歩により2025年になった現在も新たな発見がある。

 米国バージニア大学の科学者たちは最新技術により、人体細胞の中に「ヘミフソーム(hemifusome)」と呼ばれる未知の小器官を発見した。

 この小器官は、細胞内で不要な物質を選別・再利用する働きを担っている「細胞のリサイクルセンター」のようなものと考えられている。

 この構造がうまく機能しないことで、さまざまな病気を引き起こす可能性もあるという。

 この研究は『Nature Communications』(2025年5月17日付)に掲載された。

最新技術で明らかとなる細胞内の構造

 人体を構成する細胞は、とても複雑な作りをしており、現代の技術でもその構造を詳しく観察することは難しい。

 2021年にカリフォルニア大学サンディエゴ校が行ったAIを使った分析によると、人間の腎臓の半分の細胞に未知の構造が含まれていたことが明らかになったという。つまり、まだわかっていないことも多いのだ。

 これまで、細胞の微細な構造を観察するには電子顕微鏡が使われてきたが、サンプルを真空に置かなければならないという特性から、本来の生体組織が損なわれるという問題があった。

 そして近年、そうした欠点を克服する新しい技術が登場した。それが「クライオ電子線トモグラフィー」だ。

 この技術では、サンプルを急速冷凍して氷の結晶の形成を防ぎ、組織を損なうことなく高解像度で観察することができるため、生体組織の立体構造を原子レベルで把握することが可能になるのだ。

細胞内で発見された新たな小器官「ヘミフソーム」

 今回、クライオ電子線トモグラフィーを用いて人間・サル・ラット・マウスの細胞を調べたところ、いずれの細胞にも「半融合膜(hemifusion diaphragm)」という構造で仕切られた2つの小胞が対になって存在していた。

 この小胞は、ちょうど雪だるまのように大小の球がつながった形をしており、その接合部、つまり“襟”のような部分に、小さな袋状の構造が埋め込まれていた。

 この袋状構造こそが、今回新たに発見された細胞小器官「ヘミフソーム(hemifusome)」である。

 ヘミフソームは、2つの小胞が半融合状態でつながった袋状の構造で、細胞内で物質を一時的に集め、仕分け、運ぶといった中継地点のような働きをしていると考えられている。

 さらに、この構造の縁には「PND(プロテオリピッド・ナノドロプレット)」と呼ばれる直径約42ナノメートルの球状の微小構造があり、脂質とタンパク質を含んでいることから、小胞の形成や輸送機能に深く関わっている可能性があるという。

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2つの小胞のあいだにある襟部の小さな塊がヘミフソーム/Tavakoli et al., Nat. Commun., 2025

 米国バージニア大学の生物物理学者セハム・エブラヒム氏によれば、ヘミフソームと小胞は貨物搬入口とトラックにも見立てることができるという。

小胞は細胞内の小さな運搬トラックのようなもので、ヘミフソームはそれらが荷物をやり取りする貨物搬入口のようなものです。これは、このプロセスにおけるこれまで知られていなかった工程です(エブラヒム氏)

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ヘミフソームはさまざまな形に変形する/Tavakoli et al., Nat. Commun., 2025

ヘミフソームの解明が病気の治療法につながる可能性

 今回の研究では、金ナノ粒子と培養ヒト細胞を用いた実験で、ヘミフソームが外部から物質を取り込む方法が、ほかの細胞小器官とは異なっていることが確認されている。

 ヘミフソームは、細胞内にある物質の仕分け・廃棄・再利用において重要な役割を果たしているとされるが、具体的にどのように機能し、細胞全体の中でどのような位置付けにあるのかは今後の研究を待たねばならない。

 だが現時点において、この細胞小器官のトラブルは、さまざまな病気につながる可能性があると考えられている。

 したがって、その解明は病気を理解し、治療法を開発するうえでも重要となる。

この新たな細胞小器官が細胞の健康や病気とどのように関係しているのか、その理解は始まったばかりです。細胞の中でまったく新しいものが発見されるなんて、滅多にありません。だからこそ、それは新たな探究の道をもたらしてくれるのです(エブラヒム氏)

References: Nature / Mysterious New Structure Discovered Hiding Inside Human Cells

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この記事へのコメント 11件

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    1. 残念ながら細胞じゃなくて細胞の中にある器官なんだ

      • +2
  1. 私体が弱くてすぐ体調崩すけどこの小器官がないんですかね?(´・ω・`)

    • 評価
    1. 人体には多かれ少なかれあると思います。心配であれば医師に相談して(記事のものは検査出来ないと思いますが)ご自身にあった生活をして、お大事になさってください😊

      • 評価
    2.  まぁ、ないってことはないでしょうけど、少ないかもしれませんね。 体調はバランスなので、すでになさっているとは思いますが、少しづつでも身体を強くする努力が今後の生活の質を上げることと思います。 例えば体力が 10 あるとして外乱で -3 も影響が出たとき 3 割も体調にも影響があり、体力が 100 あるなら外乱が -3 でも 3% しか体調に影響が出なくなります。 体力をいきなり 100 にはできませんが、体力を 11 でも 12 でも上げれば少しマシになることが期待できます。 残りの人生、今が一番若いのでできるところから始めましょう。
       記事の方は、とても興味深く読みました。 レーウェンフックが細胞を発見してから人体も顕微観察の対象になっていたはずですけどまだ見つかってないものがあるんですね。 ヘミフソームの詳細な研究にも期待したいです

      • 評価
  2. 世界はまだまだ広い、人体でさえ未知の宝庫とは!

    • +3
  3. 多くの組織には、
    それぞれの組織の特性を持ったエクソソームが存在するので、
    エクソソームの過渡構造の一つのように思われる、
    それに、名称を付けるのは自由であるわけだが、

    • +1
  4. この研究が進めば、ハゲも克服できるようになるかな…
    やっぱり関係ないって

    • +5

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