メインコンテンツにスキップ

犬の中には、飼い主の話を盗み聞きして新しい言葉を学ぶ才能を持つものがいる

記事の本文にスキップ

23件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Image by unsplash Robin Jonathan Deutsch
Advertisement

 一部の犬は、直接教えられなくても飼い主の会話を横で聞いているだけで、新しい言葉を覚えられることが明らかになった。

 ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームは、このように周囲のやり取りから自発的に情報を吸収する能力は、人間の1歳半の幼児が言葉を学ぶのによく似ているという。

 このことは、犬は自分に直接話しかけられていなくても、周りの様子から大事なことを学び取る力を持っている可能性を示している。

言葉を覚える才能を持つ犬に注目した実験

 エトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームは、おもちゃの名前を覚えるのが得意な「Gifted Word Learner:GWL」と呼ばれる犬たちに注目した。日本語で直訳すると、「言葉を覚える才能に恵まれた犬」という意味だ。

 実験では、ボーダー・コリー、ラブラドール・レトリバー、ジャーマン・シェパードなど合計10匹の才能ある犬を対象に、2つの異なる条件でテストを実施した。

 1つ目の条件では、飼い主が犬に直接向き合い、おもちゃの名前を何度も語りかけて教えた。

 2つ目の条件では、飼い主が別の人とおもちゃについて話し、犬には一切話しかけない「盗み聞き」の状況を作った。

 どちらの条件においても、犬が名前を聞く時間は、1回数分程度の短いセッションを何回かに分けて行い、その合計が8分間になるように調整された。

 この8分間、犬たちは言葉を聞くだけで、おもちゃを運ぶ練習は一度もしていない。

この画像を大きなサイズで見る
Image by pixabay balzekaitegita

盗み聞きによる驚きの正解率

 合計8分間の学習セッションがすべて終わった直後、本当におぼえているかを確かめるためのテストが行われた。

 このテストは、言葉を聞き終えたあとに初めておもちゃを運ばせる「ぶっつけ本番の一発勝負」だ。

 その結果、この一発勝負で10匹のうち7匹の犬が、新しい名前のおもちゃを正しく選び出すことに成功した。

 特筆すべきは、その7匹が最初のテストで見せた正答率の高さである。

 直接向き合って教えられた条件での正解率は80%だったのに対し、盗み聞きで覚えた条件では、なんと学習に成功した7頭すべてが100%の精度で、最初から正解のおもちゃを選び出したのだ。 

 直接教えるよりも盗み聞きのほうが高い結果を出したのは、犬がリラックスして観察に集中できたからだと考えられる。

 直接語りかけられると、犬は期待や緊張から飼い主の顔色をうかがいすぎてしまうことがある。しかし、盗み聞きでは第三者の視点で冷静に「名前と物の関係」を理解できた可能性がある。

 さらに研究チームは、「時間のズレ」があっても言葉を覚えられるかをテストした(非連続条件)。

 まず犬におもちゃを見せ、それをバケツの中に隠して見えなくした後に、初めてその名前を呼ぶという非常に難しい内容だ。

 記憶力と社会的な推論が試されるこのテストでも、本番のテストに成功した7匹の犬すべてが、正しく名前を認識することができた。

この画像を大きなサイズで見る
Image by Istock Aladino Gonzalez

人間の幼児に似た学習プロセス

 この学習の仕組みは、人間の子供が言葉を覚え始める時期のプロセスとそっくりだと、研究を主導したシャニー・ドロール博士は語る。

 通常、人間の赤ちゃんは1歳半ごろになると、大人の会話を耳にするだけで、自分に向けられた言葉でなくても自然に習得できるようになる。

 これらの言葉を覚える能力の高い犬は、人間の幼児と同じように、人間同士のやり取りというヒントから情報を引き出す力を発揮した。

 こうした社会的な認知プロセスは人間だけでなく犬にも備わっていたようだ。

この画像を大きなサイズで見る
実験に参加したボーダーコリーのバスケット Image credit: © Elle Baumgartel

才能は犬種ではなく個性

 今回の研究ではボーダー・コリーが多く参加していたが、重要なのは犬種そのものよりも個々が持つ才能だ。

 事実、普段あまりおもちゃの名前を覚える習慣のない犬たちで同じ実験を行ったところ、盗み聞きで言葉を習得することはできなかった。

 一方で、別の調査ではシーズーやコーギー、プードル、そしてミックス犬からもこうした才能を持つ犬が見つかっている。

 これは特定の犬種に限った話ではなく、一部の犬が生まれつき持っている、あるいは環境によって磨かれた「得意分野」なのだと言える。

独自の形で寄り添う愛犬

 研究を主導したシャニー・ドロール氏は、犬は人間の出すヒントを読み取ることに特化して進化してきたと述べている。

 ただし、犬が幼児と同じような行動をとっているからといって、脳の仕組みまでもが幼児と全く同じであるとは限らない。

 あくまで、犬という種の一部が、人間と同じような能力を獲得したということなのだ。

 こうした言葉の天才、GWLとしての才能は一部の限られた犬に見られるものだが、だからといって他の犬たちが劣っているわけではない。

 ほとんどの犬は、言葉そのものよりも飼い主の表情や声のトーンから多くのことを察している。

 犬によって得意分野が異なるだけであり、すべての愛犬はそれぞれ独自の方法で飼い主の心に寄り添っているのだ。

この研究成果は『Science』誌(2026年1月8日付)に掲載された。

References: Science / PHYS / Popsci

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. 才能は犬種ではなく個性、と記事では言うが
    明らかに犬種による差異は有るんじゃないかなぁ。
    ボーダーコリーやラブラドールなんかはじっと
    主人の顔色をうかがうが、柴犬やハスキーなんかは
    知らん!って感じだしwまぁそれも可愛いんだけどw
    個性と言うなら飼育法や躾による差異じゃないかなぁ。

    • +11
  2.  門前の小僧ならぬ、隣の部屋のワンコかw たぶん、盗み聞き=傾聴→「もって他山の石とする」って機序なのかなと。 人間の子供でも直接叱られるより自分で気づくほうが効くパターンの子がいると思います。 犬種(今回はボーダーコリーが多かったらしいけど)によっても差異があるというのも興味深いです。 面白い記事でした

    • +2
    1. どっちかというと、
      「授業や業務指導で明確に『教えられる』シチュエーション ⇒ ダルくて興味ねぇ、むしろちょっと反感」
      「立ち聞きの噂話 ⇒ 野次馬根性で興味津々に聞き耳立てる」
      という、もっと卑近な心理現象に近い気がする。

      情報の稀少性から、直接は教えてくれない秘密を漏れ聞く場面に居合わせた時は、脳がフル回転で活性化する感じで。「聞くな」と禁止されると(明示的にされなくても、コソコソ秘匿された事は)、余計に知りたくなる心理。

      なんとなく、ルイ16世の時代に飢饉対策で 当時「下賤で邪悪」と忌避されていたジャガイモ栽培をどうにか広めようとした農学者アンワーヌ=オーギュスタン・パルマンティエが、王立の畑地に“貴重な作物”として厳重に見張りを立たせて耕作し、夜には見張りを撤収して わざと民衆に盗ませるように仕向け普及させた、という逸話を思い出した。

      • +18
  3. 盗み聞きのほうが集中して真剣に聞いてるからね

    • +29
  4. >才能は犬種ではなく個性

    例外:オレはやるぜオレはやるぜ

    • +10
  5. (-ωー)あの、これは一部じゃなくて全部の犬だと思う。
    だって生まれてきて何年も人間と同じ環境にいれば
    言語なんて自然に覚えるでしょ。
    犬は4歳くらいの知能はあると聞くし
    なら全部わかってると思う。

    • -11
    1. 人間の子供も親が熱心に話しかける子とネグレクトで話しかけられない子では喋れるレベルが違うよね
      熱心に話しかけるグループでも優劣は出てくるわけだし

      • +2
  6. 実験に参加したバスケットさん、ぬいぐるみお大尽だ!
    どのぬいぐるみも、そこそこ使用感があるのも良い。

    • +8
  7. 犬が覚えやすい三大単語「ごはん」「さんぽ」「シャンプー」

    • +18
    1. うちのは「歯磨き」も加わるかな。それを聞いた途端に、言葉を知らないふりをする。

      • +1
  8. ご主人様を常に観察しているからできるんだろうな。

    • +9
  9. 家族の名前とか教えてないのにいつの間にか分かってたな

    • +10
  10. 「散歩」等の言葉を教えると
    人間同士の会話の「散歩」という単語を聞いただけで犬が「散歩⁉️行くの⁉️」とか勘違いをされて面倒な事になるので躾け以外の単語を教えなかったんだけど…空気を読む様になってしまい言葉を教えなくてもめっちゃ賢かったよ
    10歳を過ぎた頃からは思春期の少女の様な自我が芽生え大人の女性として接しないとアカンくなって私の夫の本妻の様になり私が恋敵扱いされたw
    因みに犬種❓はパグ✖️マルチーズのmixで
    愛玩犬のハイブリッドで
    愛玩犬としてはめっちゃ優秀だった

    • +1
    1. 「散歩」で反応するから、「さ」でイニシャルトーク(さ、何時にする?)してたら
      そのうち「さ」にも反応するようになった。
      「例のもの」、「労役」、「福祉」、「神聖なる義務」とか言い換えてもどんどん単語を覚えてしまう。
      最近はチャットアプリで散歩の時間をうちあわせてるんだが
      アプリの通知音で反応するようになった。もうだめだ。

      • +18
  11. 最近は犬の横で仕事の通話をしてるが、明らかに「通話をやめるときの自分のいつも言う言葉」を把握してる感じはする
    通話が終わりそうな気配を察知してウォーミングアップを始める

    • +14
  12. おこちゃまが変な言葉を、教えてないはずなのに覚えるのもそういうことなんね

    • +7
  13. 言葉だけじゃないよ
    声の調子だけで飼い主の様子を判断できる
    ずば抜けた聴力のたまものだろうけどね
    わわわっ、って言っただけで、なにかが飼い主を慌てさせた・怯えさせたと一瞬で判断できて、瞬時に戦闘モードに切り替わる
    犬は、人間が思っている以上に人間のことをよーく見ているよ

    • +1
  14. うちの犬は、雑種だったが、言葉は通じてた。散歩行くからここでうんちしてといえばしてくれるし、服が汚れるから触らないでといえば、飛びつくギリギリで耐えてくれていた。でも、蜘蛛にここで待って、こっち来て、おいでは通じたので、どうなのかな〜
    鳥にも、ちょうだいは通じるし。何でしょうかね?学習とはまた違う気がしています。教えなくても、通じてますからね。

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。