この画像を大きなサイズで見るいつの時代でも情報を制するものが(勝負)を制すると言われている。
敵の動きを先に知った側が戦いを有利に運ぶ戦場では、味方の通信を守る技術と、敵の通信を暴く技術が、競い合うように発達してきた。
第二次世界大戦時、ナチス・ドイツが誇ったエニグマ暗号機は、解読不能と言われるほど強固な暗号を生み出した。
この鉄壁の暗号に最初に挑んだのがポーランドで、暗号を解く糸口をつかむための解読機ボンバ(bomba)を生み出した。
イギリスの数学者はボンバを改良してボンベ(Bombe)を作り上げ、ついにエニグマを解くことに成功したのだ。
ナチス・ドイツが市販品に手を加えたエニグマ暗号機
エニグマはもともと、1923年から市販されていた商用の暗号機で、ナチスが力を伸ばすにつれ、ドイツ軍がこれを軍事用に大量導入した。
仕組みは独創的で、キーボードで文字を打つと、内部で電気回路を通って、まったく別の文字へと次々に置き換わっていく。
ドイツ軍は市販品をそのまま使用せず、設定を変え、部品を追加し、エニグマ暗号機を複雑にしていった。
暗号というのは、文字列が長く入り組んでいるほど解読に時間がかかる。ドイツ軍はその複雑さを、戦争を有利に運ぶ盾として徹底的に磨き上げた。
この画像を大きなサイズで見る毎日入れ替わる暗号を解くための「鍵」
エニグマ暗号が解読困難と言われる理由は、文字の置き換え方にあった。
古代ローマのカエサルが使ったとされるシーザー暗号は、すべての文字を同じ数だけずらすだけの単純な仕組みで、AをDに、BをEにといった具合に規則がすぐ見抜かれてしまう。
エニグマは一文字打つごとに置き換えの規則そのものが変化し、暗号文は複雑に撹乱されていく。
さらにやっかいだったのが、暗号を解くための設定を毎日入れ替えていたことだ。
エニグマには、どの円盤をどの順番で入れ、どの位置から回し始め、どの配線をつなぐか、という無数の組み合わせがあった。
受け取る側がその日の正しい組み合わせを知っていて初めて、暗号文はもとの文章に戻る。
この組み合わせが暗号を解くための「鍵」であり、ドイツ軍は鍵を毎日まるごと取り替えていた。
運よく一通のメッセージを解読できても、わかるのはその日の鍵だけで、翌朝になればすべてが新しい鍵に変わり、解読者はまた振り出しに戻される。
この画像を大きなサイズで見るポーランドが生んだ暗号解読機ボンバ
難攻不落とされるエニグマ暗号に、最初に風穴を開けたのはポーランドだった。
1930年代、ポーランド軍参謀本部の暗号局にいた数学者マリアン・レイェフスキ氏が、メッセージの構造を手がかりにエニグマの内部配線を数学的に解き明かし、機械の論理構造を再現することに成功した。
ただし、配線を解明できても、毎日変わる鍵を一つずつ手作業で確かめるのは途方もない労力がかかった。
1938年10月頃、レイェフスキ氏に同じ暗号局のヘンリク・ジガルスキ氏とイェジ・ルジツキ氏を加えた3人が、鍵を割り出す作業を機械にやらせて高速化する装置を作り上げた。
エニグマのコピーを複数つなぎ合わせた電動の機械で、3人はこれを「ボンバ(bomba)」と名づけた。
ポーランド語で爆弾を意味する言葉で、装置が答えにたどり着いたときに立てる音が由来とも言われており、ついにエニグマ暗号の解読に成功した。
ただしここで終わりではない。暗号と解読はいたちごっこだ。
ドイツ軍はエニグマ暗号機にローターを追加し、更なる改良を加えて強化したため、ポーランドのボンバでは歯が立たなくなっていった。
この画像を大きなサイズで見るボンバの解読技術が受け継がれイギリスのボンベが誕生
1939年の第二次世界大戦が始まる直前、ポーランドはこの解読技術をイギリスとフランスに引き渡した。
バトンを受け取ったイギリス・ロンドンの暗号解読施設、ブレッチリー・パークには、国じゅうの数学の天才たちが集められていた。
その一人が数学者アラン・チューリング氏だ。
チューリング氏は数学者ゴードン・ウェルチマン氏とともに、ポーランドのボンバを土台にして、より強力に改良した解読機を設計した。
これがイギリスの「ボンベ(Bombe)」だ。
ポーランドのボンバを発展させたイギリスの後継機がボンベという関係になる。
円形のドラムがいくつも並び、何台ものエニグマを束ねたような構造をしている。
このドラムを高速で回し、その日に使われた可能性のある膨大な設定を一つずつ電気的に確かめていく。
最初のボンベが動き出したのは1940年のことだった。
この画像を大きなサイズで見る強力なボンベと人間の癖を見抜くことで解読が可能に
ボンベは膨大な設定を高速で試せる強力な機械だったが、やみくもに動かしても答えは出ない。
暗号文のどこかに、元の文章が推測できる部分がなければ、機械も探しようがなかった。
その推測を可能にしたのが、エニグマを操作するドイツ軍兵士たちのクセだ。
彼らは毎朝決まった時刻に天気の報告を送り、しかも似たような言い回しを繰り返していた。
チューリング氏たちは、暗号文に繰り返し現れるこのクセに目をつけた。
決まった言い回しがわかっていれば、特定の暗号文を見て「この部分は天気という単語のはずだ」と中身に見当をつけられる。
暗号文の一部と元の単語の組み合わせさえ分かれば、あとはボンベの出番だ。
その組み合わせが成り立つ設定はどれかを、ボンベが膨大な候補の中から高速で絞り込んでいく。
人間が見つけたわずかな手がかりを、機械が答えにまで磨き上げる。
どれほど精巧な暗号機でも、それを操作する人間のクセが、解読の入り口を開けてしまった。
この画像を大きなサイズで見るボンベはイギリスの女性たちによって動かされていた
イギリス側でボンベを実際に動かしていたのも、また人間だった。何百人もの女性たちである。
イギリス海軍の女性部隊に所属する彼女たちが、暗く息苦しい部屋で、重いボンベを長い時間操作し続けた。過酷な労働だったと記録されている。
天才数学者の物語の陰で、解読の現場を地道に支えたのはこうした人々だった。
ボンベによる解読作業により、戦争を最大で2年ほど縮めたかもしれないと専門家は評価している。
この画像を大きなサイズで見る解読できなかったエニグマ暗号のほとんどはドイツ海軍のもの
ボンベを使ってもなお、最後まで解読できなかったエニグマの暗号がある。
その多くはドイツ海軍のものだった。
陸軍と空軍のエニグマが文字を撹乱するローターを5個備えていたのに対し、海軍のエニグマは8個を使っていた。わずか3個の差が、解読の難しさを跳ね上げた。
この差がどれほど重いかは、現代のパスワードに置き換えるとわかりやすい。
パスワード管理を専門とする企業ビットウォーデン(Bitwarden)によれば、5文字のパスワードは今では数秒から数分で破られてしまうが、8文字になると数時間から数週間かかるという。
文字をほんの数個増やすだけで、解読にかかる時間は跳ね上がる。
現代はAIによる攻防戦
エニグマとボンベの物語が映し出すのは、戦争で優位に立つために、果てしなく競い合う攻防戦だ。
ドイツがローターを一個足せば暗号は強固になり、解読者がパターンを一つ見抜けば暗号は崩れていく。
AIが浸透した現代、その攻防はさらに新しい段階へと突入している。
かつて暗号の解読やシステムの弱点を探す作業は、人間の知恵と根気に頼るものだった。
ところが今、高性能なAIが、システムにひそむ弱点を人間よりはるかに速く、大量に見つけ出せるようになりつつある。守る側にとっても攻める側にとっても、AIは強力な武器になる。
弱点を突こうとする側がAIを使えば、見つけた穴を攻撃に変えるまでの時間は一気に縮まる。
守る側もまたAIで弱点を先回りして見つけ、修正プログラムで塞いでいく。
攻撃も防御、どちらも人間の手作業だった時代とは比べものにならない速度で回り始めている。
References: Tnmoc / Bletchleypark.org.uk / Popularmechanics
















もうそこらの書店で売ってる本の一文字目が50音で被らないのページ数暗号にすればいいよ、絶対にこんな使い捨ての暗号あるだろうけど
本物葉意無椅
昔読んだシャーロックホームズのセリフだったか
「人間の頭脳から生まれた謎(暗号)は、人間の頭脳で解ける」
ただし、それが可能なのは時間と手間をかければの話で
それを著しく短縮するのがAIの出現
だとすれば、次に登場するのは「AIが開発した暗号」だろう
AI学者が「今のAIならエニグマ解読は余裕」とかほざいてたけどこういう先人の努力の結果にただ乗りしてるだけだろうに
暗号椿は恋の花
159×10¹⁸の暗号を解くのはたった五文字だけでよかったんだ…
Heil Hitlerと
エニグマの解読に纏わる物語については、サイモン・シンの名著「暗号解読」で詳しく解説されているのでお勧め
>バトンを受け取ったイギリス・ロンドンの暗号解読施設、ブレッチリー・パークには
Googleで『ブレッチリー・パーク』と検索すると……
映画のイミテーションゲーム面白くて何回も見た