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 テスケロサウルスは、その世界が劇的に変わろうとは知る由もなかった。直径約10kmの巨大隕石が地球に落下し、恐竜時代は唐突に終焉を迎えた。5度目の大量絶滅である。

 白亜紀後期、この恐竜はトリケラトプスティラノサウルスアンキロサウルスといった恐竜時代のスターたちと一緒に生きていたが、地味な存在のテスケロサウルスはほとんど知られていなかった。

 しかし最近の研究により、テスケロサウルスの超感覚が明らかとなった、傑出したスーパー嗅覚の持ち主だったのだ。なぜ今、この恐竜が科学界の注目を集めているのか、その理由に迫ってみよう。

スーパー嗅覚を持つ恐竜、テスケロサウルス

Scientific Reports』(2023年11月6日付)に掲載された研究によると、テスケロサウルス・ネグレクトス(Thescelosaurus neglectus)は動物界でも稀にみる優れた嗅覚の持ち主だったことがわかったという。

 あまりの地味さ故、名前に”無視された(neglectus)”とつけられてしまったがとんでもない実力者だったのだ。

 この「鋭い嗅覚と脳の前庭の感度」は、地中に潜ることで生き延びるのに役立っただろうと、英ブリストル大学の古生物学者デビッド・バトン氏は、論文で述べている。

 バトン氏らは、頭蓋骨の脳がおさまる空間を占める解剖学的な比率から、テスケロサウルスの嗅覚を推測してみた。

 すると、体の大きさとの比率で言えば、その「嗅球(きゅうきゅう)」が恐竜最大であることが明らかになったのだ。

 嗅球は、脳のニオイ情報を扱う部分で、ここが大きいということは、それだけ優れた嗅覚を持っているだろうことを意味している。

 その優れた鼻は、食べ物を探すときに大活躍したことだろう。

 テスケロサウルスが何を食べていたのか、胃の内容物は見つかっていないので詳しいことはわからない。

 だが穴を掘るのが得意だったらしく、土の中にある根・タネ・塊茎(じゃがいものような地下の茎が栄養を蓄えて膨らんだもの)が好物だったろうと考えられている。

 彼らが生息していた北アメリカ西部の海岸平原は、植物がたくさん生い茂る豊かな土地だった。だが同時に、そうした草食動物を狙う捕食動物もたくさんいた。

 テスケロサウルスは耳が必ずしも良かったわけではないので、その鼻はティラノサウルスのような危険な相手のキバを逃れ、生き延びる鍵を握っていたことだろう。

 また、真っ暗な地下では、子供や仲間を認識するうえで大切だったろう。
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テスケロサウルス・ネグレクトスの頭蓋骨と脳の復元図 / image credit:D.J. Button & L.E. Zanno, doi: 10.1038/s41598-023-45658-3.

地中生活をしていた可能性も

 前述したように、テスケロサウルスは穴掘りが得意だったようだ。力強い前足のほか、鼻も使って地面を掘っただろうと考えられている。

 今のところ、テスケロサウルスが地下で暮らしていたことを証明する巣穴の類は見つかっていない。

 その当時は現在よりもかなり暖かったので、そうした巣穴が保存されなかったのかもしれないが、完全に地下で暮らしていたわけではない可能性もある。

 例えば、現代のナイルワニは深い巣穴を掘るが、自分が暮らすためでなく、主に子供を守るためのものだ。もしかしたらテスケロサウルスもこれに似たライフスタイルだったのかもしれない。

 「少なくとも穴を掘る力はありました。ですが、その穴の中でどれだけの時間を過ごしたかは、はっきりとはわかりません」(バトン氏)

 こうした穴掘りをする恐竜の存在は、一口に恐竜と言っても、さまざまな生き方があっただろうことを示している。

 恐竜というと、地上をのしのし歩いているイメージがある。だがノースカロライナ自然科学博物館のリンゼイ・ザンノ氏によれば、「実際には、現代の哺乳類がそうであるように、さまざまな生態学的役割」を担っていたのだという。
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テスケロサウルスの予想図 / image credit:Nobu Tamura / WIKI commons

それでも絶滅を回避することはできなかった

 なお小惑星の衝突を哺乳類や鳥類が生き残れたのは、体が小さく、地下に避難することができたからだという仮説がある。

 テスケロサウルスもまた、穴掘りが得意だったし、比較的体が小さな恐竜だった。最後まで生き延びたかもしれないが、小惑星激突の威力は絶大だった。

 結局助からず、恐竜時代の終わりとともに姿を消してしまった。

References:Neuroanatomy of the late Cretaceous Thescelosaurus neglectus (Neornithischia: Thescelosauridae) reveals novel ecological specialisations within Dinosauria | Scientific Reports / One of the Last Surviving Non-Avian Dinosaurs Lived in Burrows, Had Super Senses: Study | Sci.News / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2024/03/04)聴覚を嗅覚に変更して再送します。
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コメント

1

1.

  • 2024年03月04日 20:30
  • ID:4UM1Jrjl0 #
2

2.

  • 2024年03月04日 20:51
  • ID:DbwyZv9W0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2024年03月04日 23:40
  • ID:Iuh8zyto0 #

テスケロサウルス・ネグレクトス
・・・無視しないでタスケロ!みたいな印象をうけた
(しかし、ネグレクトはないよねぇ!)

4

4. 匿名処理班

  • 2024年03月05日 08:25
  • ID:7JdNPjn70 #

テスケロサウルス、 テスケロ、 タスケテケロ〜

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5. 匿名処理班

  • 2024年03月05日 15:25
  • ID:aaIUxhNX0 #

>3 思わず名前を二度見したよw

6

6. 匿名処理班

  • 2024年03月05日 20:08
  • ID:4oFAvSPa0 #

調べてみると、

最初に見つかった化石は首と頭以外がほぼ揃っていて(皮膚印象もあった)、関節も繋がった状態で掘り出された非常に状態の良い物だったにもかかわらず、保護用の石膏ジャケットに入ったまま20年間放置されていた

故の命名だそうな。

Thescelosaurus neglectus 無視されていた驚くべきトカゲ

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