
後期白亜紀の貝の化石から、その当時1年は372日あったことが判明したのである。つまり、1日は23時間と30分しかなかった。
ベルギー・ブリュッセル自由大学の研究グループが『Paleoceanography and Paleoclimatology』で発表した研究では、「厚歯二枚貝」という絶滅した貝の「成長線」を調査している。
これは木の年輪のようなもので、貝の成長速度や当時の1年の日数を知る手がかりとなる。
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現代のサンゴのような存在だった後期白亜紀の二枚貝
この研究では、熱帯の浅瀬(現在はオマーンの山間部の乾燥した地域)で9年間生きた「Torreites sanchezi」という厚歯二枚貝の個体が分析された。世界中の熱帯海域に広く分布していたこの厚歯二枚貝は、6600万年前に恐竜が絶滅した出来事によって、同じく姿を消してしまった仲間で、どこか熊の手を思わせる蓋のついたコップのような姿が特徴的だ。
現代のカキのように岩礁の中で成長するのだが、後期白亜紀においては岩礁が作り出すニッチを支配し、現在ではサンゴがはたしている役割を担っていた。

Wikipedia
当時の二枚貝は光合成を利用していた可能性
今回の研究では、レーザーを貝殻に照射し、赤血球の大きさに等しい直径10ミクロンの微細な孔を開けるという新しい分析法が採用されている。こうした極小のサンプルの中に含まれるわずかな元素は、貝殻が形成されたときの海水温や化学的性質に関する情報を伝えてくれる。
これを分析して日々の成長線の間隔や数を調べれば、季節ごとのパターンや1年の日数といったことを特定できるのだ。
その結果、貝殻の構成の1日の変化は、季節的な変化や潮汐のサイクルよりも大きいことや、夜よりも昼間に大きく成長していることが明らかになったという。
研究グループによると、1日のサイクルに強く依存しているということは、「光共生系」であることを示唆しているそうだ。つまり、光合成を利用していたかもしれないのだ。
この貝が現代の二枚貝やカキのように自力でエサを食べていたと仮定した場合、日光がTorreites sancheziにとってこれほどまで重要な存在にはならないだろうと考えられる。

AGU
現生のシャコガイという二枚貝は、体に褐虫藻を宿しており、それが光合成で作り出す栄養素を利用している。Torreites sancheziと太陽との関係も、シャコガイのそれに近かった可能性がかなり濃厚であるとのことだ。研究グループによると、厚歯二枚貝が光共生系であるかどうかについての議論は、形態に基づく多分に推測的なものでしかなかった。だが、今回の発見は、少なくともT. sancheziに関しては、この仮説を裏付ける初めての確かな科学的証拠であるそうだ。

tbanny/istock
大昔の海は今よりも暖かかった
貝殻の化学分析からは、後期白亜紀における海洋の温度がこれまで考えられていたよりも暖かく、冬でも30度を超えていたことが判明している。さらに夏なら40度にも達し、軟体動物の生理学的限界にも近かった可能性が高いという。
大昔の気候を探る研究は、大抵の場合、数万年というかなり長い単位でしか説明してくれない。しかし今回のような研究は、当時の生物が生きている間に起きた変化に着目したもので、気候モデルと天候モデルとの間の空白を埋めてくれる可能性を秘めているという。
7000万年前、1年が372日あった
古代の二枚貝は天文学者にとっても嬉しい情報を伝えてくれている。各年の成長線を注意深く数えたところ、7000万年前は1年が372日あったことが明らかになったのだ。じつは、このこと自体は意外ではない。かつて地球の1日が24時間よりも短い時代があったことならすでに知られているからだ。
それでも後期白亜紀の日の長さを今に伝えてくれる現時点では一番正確なデータであり、これを応用すれば地球と月の進化のモデル化にも役立つのだという。
地球が太陽を周回する公転軌道は変わらないので、地球が誕生して以来、1年の長さは常に一定だ。しかし1日の長さが一定ではないので、1年の日数は変化してきた。
月の重力によって生じる潮汐の摩擦のために、地球の自転はだんだんと遅くなる。そのために1日の長さは少しずつ長くなっているのである。

annca from Pixabay
月は少しずつ地球から遠ざかっている
一方、潮汐の引く力は、月の公転を少しだけ加速させるので、その分だけ月は地球から遠ざかる。そのペースは年に3.82センチだ。だが、月は誕生してからずっとこの調子で遠ざかってきたわけではなさそうだ。というのも、そのペースで過去へさかのぼってみると、14億年前には地球の内部にあったことになってしまうからだ。
月が誕生したのは45億年以上前だと考えられているので、その遠ざかる速度は変化してきたはずなのだ。そして、古代の貝が教えてくれる1年間の暮らしは、そうした月の歴史的な経緯を推測する手がかりとなる。
月の歴史に比べれば、7000万年というのは瞬きほどの時間だ。研究グループは、今回の方法でもっと古い化石も分析し、さらに前の時代の様子を調べたいと考えているそうだ。
References:phys/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
恐竜のいた時代
地球の自転は早くてその遠心力で
重力が軽くなり恐竜たちは
自重を支えられるので
巨大化した
なんて与太話で一部で聞いた事あるけど
あながちガチなのかもな
恐竜のいた時代は酸素濃度も気圧も
全然違くてそれが本当の
巨大化の原因らしいけど
重力もあったのかも
例えばわずか0.3%くらいの違いでも
長期的な影響がどう出たかは不明だし
人間なら60兆の細胞に対して-0.3%なら
どういう風に影響するか長期的に見て
わからないものなあ
2. 匿名処理班
地球若くて張り切ってた?
3. 匿名処理班
遠心力による重力緩和も大きそうだし、やはり昔は巨大化出来るだけの環境であったってことかな。
4. 匿名処理班
上記事の通り1年が372日としても重力は0.1%も低減されないよ。それより緯度による影響の方が大きい、例えば赤道と極地では重力差0.5%、だから遠心力の影響で生物が大きくなったという説が正しいなら、緯度が高くなるほど生物は小さくなる傾向が見られるはず。
5. 匿名処理班
地球が静止する日
6. 匿名処理班
そもそも
化石で発見される恐竜ですけど、巨大な陸上恐竜の場合、あまりにも巨大すぎて自重を支えきれないことが明確にわかっている。
つまり、現代の地球の重力では、当時の恐竜は生息不可能なわけ。
ということは、恐竜が生きていた頃の地球の重力は、今よりもちいさかったと考えるのが自然な発想です。すると、恐竜の絶滅には「地球の重力をも変えるほどの、大激変が起きた」と推測されます。
それが ノアの大洪水 です。
7. 匿名処理班
372日あると仕事が進みそう(ワーカホリック)
1週間しか違わないけど、2月にちょっと増やしてもらえると助かる……
8. 匿名処理班
※5
ルーレットの様に、ポトンと月が地球に落ちて来たりしてw
9. 匿名処理班
うるう年が死語になるのはいつになるのか・・・
10. 匿名処理班
※6
現代の地上動物で最も重いアフリカゾウで約6トン。8トンクラスもいるので、仮に10トンを動物が重力に抗って自立できる限界に近いとしましょう。
恐竜の最大種の推定体重が約100トン。もしこれが今の重力に耐えられないとしたら、重力が10分の1程度でなければなりません(=月より少ない)。ここは恐竜さんに頑張ってもらって、今の約4割ほどの重力ならどうにか持ちこたえるとして、環境の似た惑星に火星があります。
天体の重力は質量に比例するので、当時は地球が火星ほどの「小さな惑星」だったことになります。その質量は約6.4×10の23乗kg、赤道半径は3396km。
そうなると恐竜絶滅(約6500万年前)の後に、質量にしてほぼ地球1個分の増加、半径が倍近くになるほどの天変地異が起きたことになります。
ノアの大洪水の威力は凄まじいですね。まさか40日で地球が倍に膨らむとは想像以上でした。ノアも突然体重が増えまくって苦労したでしょうw。
11. 匿名処理班
これは為になる
12. 匿名処理班
最近の研究で、地球の酸素は水棲植物が古代から大気に放出した物がほとんどで陸上植物はたいして貢献してないって論文があったよね
自転速度による重力変化より昼夜のサイクルと日照時間と植生の変化のほうが大型高等生物への影響がデカそう
13. 匿名処理班
>>7
その考えはなかった!仕事頑張って下さい
14. 匿名処理班
※1
(体感上の)重力に関してなら、今でも赤道地方と高緯度地方では自転による遠心力でちょうど0.3%くらい、さらに遠心力による地球の変形もあって1%近く違いが出るから十分生物への影響は(あまりないということが)分かってると思うよ。
15. 匿名処理班
恐竜は遠心力の影響が少ない極地方にも生息してたから、遠心力で巨大化説は無理がある。しかも一年が数日の違いでは体感できるレベルでの影響などはないはず。恐竜の研究では巨大草食恐竜などは吊り橋のように背骨と腱でつり下げるような構造で体格を維持していた。つまりキリンのように首は上に上がらなかった、という説がある。
16. 匿名処理班
※7
その代わり一日が 23 時間半くらいしかないから、一日が早く過ぎちゃうw
冬でも 30 ℃っていいですね、地球温暖化万歳www
17. 匿名処理班
38万キロメートル/3.8センチメートル毎年=100億年
18.