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オスのゾウアザラシが溺れている子アザラシを救い出す。繁殖期のオスの利他的行動は初の目撃例

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(著) (編集)

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 アメリカ、カリフォルニア州ポイントレイエス国立海岸で、キタゾウアザラシのオスが、溺れそうになっている子アザラシを体を張って助ける場面が観察された。

 繁殖期であるこの時期、通常ならオスはメスと交尾することに全力で、他のことに一切エネルギーを使わないとされていた。

 ところがこのオスは、近くに母親(メス)がいるにもかかわらず、子供を救い出すことを最優先したのだ。

 これまで例のないこの無私の救出劇は、キタゾウアザラシのオスの利他的な行動が観察された初めての例となった。

繁殖期は交尾に全エネルギーを使うオスのキタゾウアザラシ

 北半球最大の海生哺乳類「キタゾウアザラシ」は、その名が示す通り、オスに象のような大きな鼻があるのが特徴だ。オスは体重1,500~2,300kg、体長4~5mに達する。

 オスはその大きな鼻を膨らませて音を発し威嚇しあう。繁殖期には非常に攻撃的になり、子アザラシや他の仲間を押しつぶしてしまうほどだ。

 通常は生殖行為をするだけで、子育てには一切関わらず、繁殖に不必要なほかのエネルギーを使うのを避ける傾向にある。このため、今回観察された救助行動は非常に驚くべきものなのだ。

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子アザラシを救うため、体を使って岸へ押し戻そうとするキタゾウアザラシのオス / Image credit: Allen et al., Marine Mammal Science, 2024 (CC BY 4.0)

溺れた子アザラシを体を張って救い出したオス

 2022年1月、カリフォルニア州ポイント・レイズ国立海岸でゾウアザラシの写真を撮影していた研究者たちは、これまで見たことのないシーンを目撃して大変驚いた。

 上げ潮で母親から引き離されて溺れている子アザラシに向かって、一頭のオスが果敢に助けに向かったのだ。

 子アザラシは生後2週間未満と思われ、まだ泳ぎが得意ではなく、もがきながら頭を水面から上げてしきりと鳴き声をあげていた。

 母親は子どもを呼び戻そうとしていたが、波が子どもを海に引きずり込んでしまい、追いかけることもできなかった。

 ここでヒーロー登場だ。ハーレムのアルファ(ボス)のオスと思われる一頭が母親に近づくと、すぐに向きを変えて砂浜を横切って波に乗り出し、もがいている子アザラシの方へと向かったのだ。

 この時点で、かわいそうな子アザラシの頭はかろうじて水面から見えている状態だったが、オスは間一髪で子どもを優しく岸のほうへ押しやり、潮に引き戻されないよう、自分の体を張って守ったのだ。

 無事に母親と子どもを再会させると、オスは〝どうだい?〟というように一声あげて、濡れた砂の上で体を休めた。この救出劇はおよそ20分間続き、下の写真はその様子をとらえたものだ。

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Image credit: Allen et al., Marine Mammal Science, 2024 (CC BY 4.0)

(a)子を呼んでいる母アザラシ
(b)子アザラシのほうへ向かうオス
(c)子を岸へ押し戻すオス
(d)子が波に引き戻されないよう自分の体でブロックするオス
(e)子と再会した母親が鳴き声をあげる
(f)それに対して自慢の鼻を震わせて返事をするオス

繁殖期のオスの利他的行動は初の事例

 研究チームは、このオスの果敢な行動は、利他的な行為と同じ可能性があると考えている。

 「この事例は、利他的行為の定義に当てはまると考える」研究者は書いている。

この子アザラシは非常に幼なくてまだ十分に泳げず、波にさらわれ溺れそうになっていたが、オスが助けてくれたおかげで命が助かった。

繁殖期のゾウアザラシのオスは繁殖以外の余計な体力は使わないようにするのが普通だが、子アザラシを助けるという行為に体力を費やした

 ゾウアザラシのオスが、利他的な行動に出るのはこれまで記録されたことはない。また、他の鰭脚類でもあまり見られない。

 無私無欲にも思えるこうした行為のきっかけがなんだったのかはわからない。一度限りのたまたまの出来事だった可能性もある。

 このオスとメスとの間にかつて夫婦関係があり、子アザラシはオスの子どもだったとも考えられるが、遺伝子分析をしてみなければそれを確認することはできない。

 このオスが子アザラシを助けた動機はなんであれ、仲間として頼もしいオスであることは確かだろう。

 利他的と思われるこうした行動の例は、ヨウムイノシシチンパンジー、シャチに至るまで動物界全体で報告されている。

 本研究は『Marine Mammal Science』誌(2024年1月25日付)に掲載されている。

References:An observation of potential altruism by a male northern elephant seal (Mirounga angustirostris) – Allen – Marine Mammal Science – Wiley Online Library / “Altruistic” Bull Elephant Seal Turns Lifeguard To Save Drowning Pup | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 11件

コメントを書く

  1. ~~ 三⊂(`・ω・´)つ⊂(´×ω×`)っ💦~~

    • +3
  2. ハーレムとかあるのなら多少の社会性みたいなものがあるのかね
    こういう行動で母親が受け入れてくれるなら全くの利他的行為とも言えないわけだし

    • +4
  3. 基本母親だけで子育てするカモなんかでもたまに一緒に子育てするオスもいるみたいだからこのアザラシさんも子供好きなのかもしれないね

    • +14
  4. 繁殖期だからこそメス達の前でカッコ良い姿を見せる
    必要があったのではないか。

    • +10
  5. このイケメンは群れのボスだったんやな。格好良すぎでしょ

    • +3

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