
ジョセフ・ディトゥリ准教授は、南フロリダ大学のバイオ医療工学の研究者だ。彼はこれから水深9メートルの施設に100日間滞在し、現世界記録である73日間の更新を狙っている。
だが、この「プロジェクト・ネプチューン100」の本当の目的はギネス記録を破ることではない。水中の高圧環境が人体に与える影響を自らの体で確かめることだ。
彼の仮説によるなら、高圧下で長期間過ごせば「超人類」になれる可能性があるのだそうだ。
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100日間の水中滞在記録に挑戦する研究者
水中滞在記録といっても水の中に直接滞在するわけではない。現在55歳のディトゥリ准教授は、3月1日から6月9日までの100日間、フロリダ州キー・ラーゴにある世界唯一の水中ホテル「ジュールズ・アンダー・ロッジ」の水深9メートルの部屋で過ごすことになる。
部屋の中とはいえ、宇宙ステーションさながらの隔離された狭い環境で長時間過ごすのだ。水圧がかかるため地上とは環境が異なる。
専門の医療チームが編成され、心身の健康状態が定期的に検査される。
「人体がこれほど長時間水中にいるなど前代未聞なので、私は入念にチェックされることになります」と、ディトゥリ准教授はプレスリリースで語る。

水中生活で超人類に進化する可能性?
こんなことに一体何の意味がとも思えるが、ディトゥリ准教授の仮説によるなら、水圧のおかげで潜る前より健康になると考えられるのだそう。その根拠はある研究結果にある。
その研究では、細胞に圧力をくわえてみたところ、5日以内に2倍に増えたのだ。これは圧力が高まると、人間の寿命が伸びて、老化による病気も予防される可能性を示している。
「だから、自分は超人類になっちゃうかもです」と、ディトゥリ教授は言う。
ディトゥリ準教授は、研究者になる以前、米海軍で飽和潜水のダイバーだった異色の経歴の持ち主だ。
飽和潜水とは、それ以上人体にガスが溶けなくなるほど水圧がかかる水深まで深く潜ることだ。
危険な職務で、脳に損傷を負う仲間を目にするとともに、高圧が脳の血流をよくすることも知っていた。
そうした経験から、高圧をうまく利用して外傷性脳損傷の治療に役立てられるのではと思い付いたのだそうだ。
体を張った実験でもある
なおプロジェクト・ネプチューン100の期間中、ディトゥリ准教授は水中でただダラダラと時間を過ごすわけではない。大学の講義はそこから配信されるし、自分の体を実験台にして同僚が開発した健康診断用の人工知能のテストも行われる。
また、海の保全や若返りの方法といったテーマをいろいろな科学者と議論し、その様子を水中からYouTubeで配信する予定もあるという。
さらに子どもや大人を招いて、海の中を探索したり、今回の研究を学んでもらったりする企画もある。わざわざこうしたことをするのも、次世代の研究者を育てるためなのだそうだ。
「私たちが生きるために必要なものは、この地球上にすべてあります。いろいろな病気を治す方法だって、海で暮らす未知の生物に隠されているかもしれません。それを知るために、もっと研究者が必要なんです」
ちなみに現在時点での水中生活の世界記録は2014年にテネシー州の教授2名が樹立した73日であるそうだ。
References:USF researcher attempts to set world record by living underwater for 100 days – hopes to emerge ‘super-human’ / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
水の中ではないのか・・・
2. 匿名処理班
問題はこの部屋が何気圧なのかでしょうね
地上と同じだったら単に水中ホテルに連泊しただけになる
3. 匿名処理班
水の中に半年も居たら立てなくなりそうって思ったけど違うのか
4. 匿名処理班
この人が滞在する空間は
潜水艦とはどうちがうの?
5. 匿名処理班
地表より下にあるから重力が強いってことなのかな
6. 匿名処理班
水中環境じゃなくて高圧環境って言った方が誤解が少ないな
最初水中って見て皮ふやけすぎて破けるんじゃないかと心配になったわ
7. 匿名処理班
じゃあこいつ、2の14乗以上に増えるんじゃね?
8. 匿名処理班
面白いこと考えるもんだなー
9. 匿名処理班
ベタだけど筋力なまりそう問題
10. 匿名処理班
>細胞に圧力をくわえてみたところ、5日以内に2倍に増えたのだ
これ、肉体に負荷をかけたら
そのストレスに対処すべく強化されたって感じだよな?
短期的にはそれで活性化されるのかも知れないけど、
常にそれを続けていると
生き急いで早めに寿命を燃やし尽くてしまう
…なんて事にならないんだろうか?
鍛えた運動選手が、意外と短命だったりするみたいに。
11. 匿名処理班
>>10
同じこと思いました
ダイエットでいうところのリバウンドみたいなものですよね
12. 匿名処理班
高地トレーニングの逆か
常に負荷掛かってるから筋肉付いて高血圧みたいな感じになるのかな
13. 匿名処理班
ホテルの中だったら原子力潜水艦で何ヶ月ももっと深く潜ってるやついるだろ
14. 匿名処理班
未知の研究でも何でもなくて、高圧酸素療法でDNAは細胞修復するように元々デザインされている。高圧酸素の環境で生きていたら、人間は120歳よりはるか上の寿命になる。この人は治したい病か何か理由があるはず。40年前から結論は出ている。完璧に治る治療はモノポリーは絶対やらせないからね。
15. 匿名処理班
物理素人なのですが、水中の施設内で生活する事ってどう圧力が掛かるのでしょうか?
潜水艦での海軍軍人の作戦中の長期航行でも同じ事になるのでしょうか?
物理に弱いのでよくわかりませんでした。
16. 匿名処理班
ゲームのSubnauticaにでてくるやつみたいな基地だな。
なにか基地外部での作業もするのかな?
17. 匿名処理班
科学的根拠に基づいてるのはわかったけど、なんとなく小学生男子のやる「修行」っぽさがあるな
18. 匿名処理班
>>4
つまり潜水艦の乗員は超人類化していると。。。
19. 匿名処理班
>>4
潜水艦内部は基本的に1気圧に保たれている。
この人が水深何mで、どれくらい加圧した場所で滞在するかわからないけど、水深が10m下がるごとに約1気圧余計にかかるので、
水深10mに滞在するにしても、地表の二倍の2気圧にもなるので長時間滞在していれば色々身体に与える影響は大きくなりそう
また記事にある「飽和潜水」を行う場合は活動する深度の気圧まで加圧する。100mで活動するならば当然10気圧程度の中で身体が慣れるまで生活するし、そのための準備施設もある
20.
21. じょん・すみす
水深約9mの水中ホテルなら、どうなるかな。
外界との気圧差がどうなるか、外の水圧と同じ約2気圧になるのか
地上と同じ1気圧なのか、それが問題だ。
22. 匿名処理班
部屋が圧壊しないように水圧と同じくらいに加圧してるってことなんじゃないの?
23. 匿名処理班
>>10
同意だわ。高圧下で血管が収縮、血流速度が上がり細胞への供給サイクルが速まる、新陳代謝が促進され細胞も増えたって感じかな。細胞分裂が速まればテロメアにブーストがかかるから、高圧状況がテロメアを伸長する条件でない限り、高圧下の長期滞在は寿命を縮めてると思う。まぁ准教授の仮説はともかく、目的は外傷性脳損傷の治療だし何かいい成果が出るといいね。
24. 匿名処理班
培養肉が2倍になって食糧問題が解決するね!
25. 匿名処理班
酒なんかは熟成が早まるらしいから、早く歳とったりして?