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生きてたんかい!ゾンビ菌に寄生されて死んだふりをする新種のクモがアマゾンで発見

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(著)

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クモが苦手な人に配慮したイメージ画像です。Image generated by dall·e OpenAI
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 アマゾンの熱帯雨林で、ゾンビ菌に寄生されて死んだふりをする新種のクモが見つかった。

 ゾンビ菌は、虫やクモの体を乗っ取って操り、最後は命を奪う恐ろしい寄生菌だ。

 新種のクモは白っぽい体から不気味な突起を突き出し、菌が生えた死骸そっくりの姿をしており、発見した研究者も、最初は本物の死骸だと見間違えたほどだ。

 仲間を殺す菌に寄生されたふりをするクモは、これまで報告されたことがなかった。

 研究チームは、捕食者から身を守り、獲物を油断させるための擬態だと考えている。

 この研究成果は『Zootaxa』誌(2026年2月26日付)に掲載された。

参考文献:

ゾンビ菌に寄生されたふりをして死んだふりするクモ

 2025年8月8日の夜、ワスカ・アマソニア財団のナチュラリスト、アレクサンダー・ベントレー氏らのチームは、南米エクアドルのアンデス山脈とアマゾンが交わる森、リャンガナテス・サンガイ生態回廊で調査をしていた。

 チームは、地面から大人の胸元ぐらいの高さにある葉の裏で、微動だにしないクモを見つけた。

 体長約9mmのクモは、白っぽい毛と小さな棘で覆われ、青白く半透明の体をしている。

 腹部の黄色い斑点からは2本の細長い突起が出ており、菌に寄生されてキノコが生えた死骸のように見えた。

 ベントレー氏らは最初、寄生菌に感染して死んだクモの死骸だと思った。

 ところが触れてみると、死んだはずのクモが突然動き出した。クモは実際には菌に寄生されておらず、生きていたのだ。

 腹部の2本の突起も、クモ自身の体の一部だった。

 クモは、のちにコガネグモ科タチャノフスキア属の新種と判明し、「タチャノフスキア・ワスカ(Taczanowskia waska)」と名付けられた。

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ゾンビ菌に寄生されたふりをする新種のクモ「タチャノフスキア・ワスカ(Taczanowskia waska)」Image credit:David Diaz-Guevarra

虫やクモを操る「ゾンビ菌」の世界

 ゾンビ菌は、昆虫やクモの体を乗っ取り、自分の胞子を広めるのに都合のよい行動をとらせる。 

 ハエカビに感染したメスのハエは、高い場所に登ってから息絶える。メスの死骸から出る香りが健康なオスを誘い寄せ、死骸と交尾したオスも感染してしまう。

 マッソスポラというゾンビ菌に感染したセミは、腹部を菌に食い落とされても飛び回り、ほかのセミに胞子をうつしていく。

 クモを狙うゾンビ菌も確認されている。

 2025年にアイルランドで発見され、新種として報告されたゾンビ菌、ギベルラ・アッテンボロギ(Gibellula attenboroughii)は、クモを専門に狙うギベルラ属の菌で、暗い隠れ家にひそむクモを開けた場所へ誘い出してから殺し、死骸から胞子をまき散らす。

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新種のゾンビ菌に寄生されたアイルランドのクモ。/Image credit: Tim FoggCentre for Agriculture and Biosciences International

 タチャノフスキア・ワスカは、同じアマゾンの森にすむギベルラ属の菌に寄生されて死んだクモの姿をまねている。

 このクモがじっと動かずに過ごす葉の裏も、ギベルラ属の菌に殺されたクモがよく見つかる場所だ。

 タチャノフスキア・ワスカは、ゾンビ菌に寄生されたふりをするクモとして、初めて報告された。

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寄生されて死んだふりをする巧妙な擬態。腹部の2本の突起もタチャノフスキア・ワスカの体の一部だ。Image credit:Zootaxa

死骸のふりで身を守り、獲物を待ち伏せする

 タチャノフスキア・ワスカはコガネグモ科に属しているが、円形の蜘蛛の巣(網)を張らず、獲物を待ち伏せして特殊な前脚で捕らえる。

 研究チームは、死骸のふりをする擬態には、捕食者から身を守る効果と、狩りを助ける効果の2つがあると考えている。

 鳥などの捕食者は、病気に感染した動物や死骸を食べるのを避けると考えられる。

 タチャノフスキア・ワスカは、ゾンビ菌に寄生されたふりをすることで、捕食者に襲われにくくなっているとみられる。

 また、菌に覆われた死骸に見えれば、獲物の昆虫も危険に気づかずに近づいてくるかもしれない。

 待ち伏せして獲物を捕らえるタチャノフスキア・ワスカにとって、死骸のふりは狩りにも役立つと考えられている。

市民科学がつないだ新種発見への道

 新種発見につながったのは市民科学によるところが大きい。

 ベントレー氏が、誰でも生物の観察記録を投稿できるサイト「iNaturalist(アイナチュラリスト)」にクモの写真を投稿したことで、調査が始まった。 

 一般市民が、地域的な知識や観測記録を科学研究に役立てる取り組みは、「市民科学」と呼ばれている。

 他の市民科学者たちが、写真のクモが珍しいタチャノフスキア属ではないかと気づき、その後、エクアドル国立生物多様性研究所のダビド・ディアス=ゲバラ氏が調査したことで、このクモが、タチャノフスキア属の新種であることがわかったのだ。 

 また、ドイツのハンブルク自然博物館のクモ学者ナディーン・デュペレ氏は、1903年に南米ボリビアで採集された標本が、タチャノフスキア・ワスカと同じ種であることを特定した。

 標本は123年間、誰にも同じ種だと気づかれないまま博物館に保存されていた。

 現在までに確認されているタチャノフスキア・ワスカの標本は、メス2匹だけだ。

 オスはまだ見つかっておらず、行動や天敵など、生態のほとんどが謎に包まれている。

 世界各地で観察を続けている市民科学者たちが協力することで、さらなる情報が得られるかもしれない。

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