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image credit:the Natural History Museum of Los Angeles County (NHM)
 アメリカ、ネバダ州のオーガスタ山脈で、これまでに知られていない巨大な魚竜の化石の一部が発見された。魚竜とは絶滅した海棲爬虫類のことだ。

 三畳紀中期(2億4720万年〜2億3700万年前)に登場したその魚竜は、我々が知るかぎり、地球最古の巨大生物で、頭骨だけでも1.89メートル、推測される体長は17.7メートル、体重は約44.7トンだ。

 魚竜が巨大化した理由を知ることは、現生の動物でもっとも大きいクジラが巨大化した謎を解明するヒントにもなるそうだ。

 この研究は、『Science』に掲載された2本の論文(2021年12月23日付24日付)で発表された。
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当時最大の魚竜の新種を発見

 この巨大魚竜の名は、「キンボスポンディルス・ヨウンゴルム(Cymbospondylus youngorum)」と名付けられた。(以下C・ヨウンゴルムと省略)

 じつは今回の発掘プロジェクトには偶然にも、魚竜のラベルがトレードマークの地ビール企業がスポンサーとして参加していた。新種の魚竜の名称は、そのスポンサー企業の経営者ヤング氏にちなむものだ。

 発掘地は、ネバダ州オーガスタ山脈フォッシル・ヒルの岩石層で、頭蓋骨・背骨・肩・前ヒレといった保存状態のいい化石からは、生きていたときには体長17.7メートルの巨体だったと推測されている。これは当時の生物としては、陸海問わず最大のものだ。
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C・ヨウンゴルムの頭骨の化石 image credit:Martin Sander

三畳紀中期に生息、300万年で巨大化

 C・ヨウンゴルムが登場したのは、およそ2億4600万年前。地球最初の魚竜が誕生してからわずか300万年後のことだ。たったそれだけの期間で、世界最大の動物マッコウクジラにも匹敵する巨体に進化したことになる。

 細長い口先と円錐状の歯から、イカや魚を食べていただろうことが窺えるが、その体の大きさから考えると、もっと小さな海生爬虫類の子供を捕食していた可能性もあるようだ。

 発掘地付近の山脈では、アンモナイト・現生のタコやコウイカの祖先・海生爬虫類といった化石が数多く見つかっている。

 これらを総称して「フォッシル・ヒル動物群」と呼ぶが、その中にはC・ヨウンゴルムが食べていた主なエサやライバルもいただろうと考えられている。
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image credit:Natalja Kent, the Natural History Museum of Los Angeles County (NHM)

過酷な生存競争に勝つための適応進化か?

 体が大きいとはいえ、C・ヨウンゴルムは厳しい生存競争を生き抜かなければならなかったようだ。

 数理モデルから推定されたC・ヨウンゴルムの消費エネルギーを考えると、フォッシル・ヒル動物群の生態系においては、まだ他にも巨大肉食魚竜が生きていた可能性が高いからだ。

 大昔にはさまざまな大きさの魚竜が登場し、それぞれ独自の生存戦略が広まった。これは今日の海に生きるクジラにも似ている。

 たとえば、比較的小さなイルカ、巨大な体とヒゲのような器官でプランクトンなどを漉して食べるヒゲクジラ、ダイオウイカを狙うマッコウクジラなど、クジラの仲間は大きさも生存戦略もバラエティ豊かだ。

 だがフォッシル・ヒルで最大の魚竜だったC・ヨウンゴルムは、体が大きいゆえに大量のエネルギーを必要とした。そのため数理モデルからは、これまでのフィールドワークで示唆されてきたよりも、かなり生息密度が低かっただろうことも明らかになっている。
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image credit: Stephanie Abramowicz, the Natural History Museum of Los Angeles County (NHM)

クジラとの比較からわかること

 C・ヨウンゴルムがクジラと似ているのは、大きさだけではない。体の構造が似ており、どちらもペルム紀末の大量絶滅(P-T境界事変)の後に誕生した。

 したがって、それぞれ独自に巨大な体を進化させた両者を比較することで、生物が巨大化する理由を知るヒントが得られるという。

 たとえば、進化学的分析と生態学的分析からは、両者が大きな体を進化させた一方、そのプロセスは少々違っていたことが明らかになっている。

 魚竜は、進化の早いうちから巨大化が進んだが、クジラはそれよりもずっと時間をかけて大きくなった。

 また体の巨大化には、猛禽類のような狩猟法(例:マッコウクジラは潜水してダイオウイカを狩る)、歯の喪失(例:地球史上最大の動物は、ろ過摂食するクジラの仲間)といったことが関連するらしいことも明らかになっている。

 魚竜が巨大化へ向けた一歩を踏み出せたのは、P-T境界事変で生態系にあいた空白をアンモナイトやコノドント(うなぎのような生物)が埋めたおかげだと考えられている。
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アンモナイトの殻に囲まれた魚竜の化石。アンモナイトは巨大化した魚竜の餌となった可能性がある / image credit:Georg Oleschinski, the University of Bonn, Germany

 魚竜とクジラは異なる道筋をたどって巨大化したが、そのために食物連鎖のニッチを利用したという点ではどちらも同じだ。

 研究者によると、こうした事例は地球史上最悪の大量絶滅の後、海洋の生命が発揮した回復力を示しているのだそうだ。

References:Earth's first-known giant was as big as a sperm whale / Earth’s First Giant: Newly Discovered Species of Ichthyosaur Was Behemoth of Dinosaurian Oceans / Early giant reveals faster evolution of large body size in ichthyosaurs than in cetaceans / / written by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2021年12月29日 22:22
  • ID:Uaq0XoSw0 #

>魚竜のラベルがトレードマークの地ビール企業がスポンサー
ここか。
greatbasinbrewingco.com
発掘のスポンサーになってくれる私企業があるとはうらやましい

2

2. 匿名処理班

  • 2021年12月29日 22:47
  • ID:6NLalf9z0 #

まるで原始クジラのバシロサウルスと大きさも形態も
似ていると思ったのだけど・・・微妙に似てないかもです・・・。
初期の魚竜が巨大化を選択したのは、
クジラと同じ理由なのでしょうか?違う理由なのでしょうか?

3

3. 匿名処理班

  • 2021年12月30日 01:29
  • ID:r3iNMY300 #

恐竜が登場したての三畳紀にでっかい生き物がいたなんていろいろ定説がひっくり返りそうだな

関係ないけど海洋恐怖症だから画像が怖い

4

4. 匿名処理班

  • 2021年12月30日 01:51
  • ID:4l91Vn670 #

海の何処かに今でも海竜はいると自分は信じている。

5

5. 匿名処理班

  • 2021年12月30日 06:56
  • ID:B5cinaq10 #

>>1
人脈大事よな
研究室に籠もったりフィールドワーク一筋では得られないチャンスが人脈には埋まっていると思う。

6

6. 匿名処理班

  • 2021年12月30日 10:07
  • ID:Y.vUPqb.0 #

>世界最大の動物マッコウクジラにも匹敵する巨体に進化したことになる。
現生の世界最大の動物はシロナガスクジラで大きさも最大29.9mとなっており、マッコウクジラより全然大きいです。マッコウクジラはハクジラ類としては最大ですが…

7

7. 匿名処理班

  • 2021年12月30日 20:37
  • ID:hQAaM0ud0 #

三畳紀が高温で暑さから逃れるために爬虫類が海に入った説がある
巨大化はライバルがいなければ短期間でできるんだろう

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