
生きているクジラのヒレは、ボートの櫂(かい)のような形をしているが、その下には5本指の手足が隠されているのだ。彼らの祖先が陸上を歩いていたときの名残である。
この度、デンマークの浜辺に打ち上げられたクジラの解剖により、あまりにも人間の手そっくりなその構造が明らかとなった。
以下、本文中にその解剖画像があるので苦手な人は閲覧注意でお願いしたい。
人間の手そっくりの5本指のクジラのヒレの構造
デンマークの海岸にクジラが打ち上げられた。デンマーク自然史博物館の爬虫類学者マーク・D・シェルツ博士は、爬虫類・哺乳類の収集責任者であるダニエル・クリンベリ・ヨハンソン氏から連絡を受け、翌日からクジラの解剖に参加したのだという。
こういった珍しい出来事があると、博物館はてんやわんやで、準備やデータ集めのために専門外の研究者やアシスタントたちが集められるという。
解剖に参加したシェルツ博士は、その後、人間の手そっくりのクジラのヒレの構造をTwitterに投稿した。
画像はこちらから
This is what it looks like when you remove the inter-digital flesh from a whale’s flipper. Amazing to see how well the pentadactyl limb is retained!
5本指の四肢は様々な動物に見られる構造
5本指の四肢はさまざまな動物で見られるもので、共通の祖先がいることを物語っている。だが、それぞれが生息する環境に適した形を模索するうちに、今日のような形状に変化した。4本足のクジラは南アジアや南米ペルー、さらにはエジプトでも発見されている。「進化はいじくりまわすものです」とシェルツ博士は説明する。
まったく新しい構造を一から作り出すよりも、もともとある構造を再利用する方が楽ですし、可能性も高いです。
原始の海から四肢動物が登場したとき、たまたまもっとも成功した系統は5本指の手足でした。
ヒレはさまざまな哺乳類や爬虫類で繰り返し進化しており、それはその都度まったく違うものとなりましたが、それでも基本的な構造は5本指です。詳しい構造は大きく異なっていますけれどね
This is that flipper now! Mikkel carefully tied each bone to a lattice so that the precise arrangement is kept through maceration. Look at those articular cartilages! pic.twitter.com/TG7GXikKzQ
— Dr Mark D. Scherz (@MarkScherz) September 9, 2021
座礁したクジラは興味深い科学的データをもたらしてくれる
現時点で、クジラの遺体は「ヨーロッパオウギハクジラ(Mesoplodon bidens)」のものであると考えられている。しかし、この種は「ヒガシアメリカオウギハクジラ(Mesoplodon europaeus)」とよく似ており、非常に区別が難しいのだという。
Beaked Whales, Клюворылые киты
もし後者であるならば、デンマーク海域に漂着した初の記録となる。
だが、いずれであっても興味深い科学的データをもたらしてくれると、ヨハンソン氏は話す。
座礁したクジラが大きくて珍しい種であれば、デンマークにはその標本に関心を示す研究機関がいくつもあります。ほかにも臓器内の汚染物質、微生物叢、筋肉の形状と機能、泳ぐための筋肉、心臓などなど、さまざまなものが調査対象になっているそうだ。クジラの遺体は、しばらく研究者の心をつかんで離さないことだろう。
いろいろな研究がありますが、一般には死因や健康状態の検査ですね。自然史博物館は将来的なDNA検査のために組織サンプルを保管し、骨格はコレクションにします
References:Necropsy Reveals The Freaky "Fingers" Hiding Beneath Whales' Flippers | IFLScience / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
やっぱりあんたも昔陸で暮らしてたんだね
2. 匿名処理班
デンマークはいろいろ見つかるねw
軟骨魚が淡水に上がって硬骨になり海に帰る。
また淡水に上がって鰭脚、肺を得る。
そして7本指から5本指になったものが陸に進むかー。
で爬虫類から海に戻ったモササウルスほか、哺乳利からも鯨やアザラシ、オットセイほか(ラッコは入るかな?)
面白いな。
3. 匿名処理班
つまり、人間もこれから進化していけばクジラみたいに成れるって事?!(話聴いてない
4. 匿名処理班
クジラさんの意識で動かせるのかしらん
5. 匿名処理班
これでジャンケンでチョキ出してこられた日には座りしょんべん漏らす自信がある
6. 匿名処理班
※2
書いててわからなくなった。
’戮班謬咫△匹舛蕕先?
シーラカンス類と肺魚の関係、両者を合わせて肉鰭亜綱する研究もあるとか。
魚竜、首長竜(2タイプ)、海トカゲ(?)の進化と分類。
ワニと魚竜の中間なんてのも ttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/80845
だれか解説してくれ。
7. 匿名処理班
これを人間の手と間違える人はいないだろ
8. 匿名処理班
ヒレが人の手かと思うくらいのサイズのクジラって人を飲み込みそうな大きさなのか?
9. 匿名処理班
※8
そうだよね、サイズがちょうどなんだ。
まあ大きすぎれば巨人の指とかいうんだろうけど(小さいと猟奇だ)。
5mくらいかな? 根拠はない。
10. 匿名処理班
※6
海棲哺乳類のヒレは手のひらの形をよく残してるけど、
海棲爬虫類は骨の数をどんどん増やすから、そのヒレは手のひらには見えないな。
まあ海棲爬虫類もヒレをよく見たら骨の列は基本5列で、それは5本の指に対応してるんだが。
11. 匿名処理班
クジラの手の骨ってこんなに可愛いものね
「シャチ 骨格」で検索してみな
正しく手の化け物って感じですよ!
12. 匿名処理班
>>4
我々が思う以上に、ゲイの細かい奴かもしれぬ
13. 匿名処理班
海洋哺乳類は一度陸上で生活してた哺乳類が再び海に戻って進化した可能性もあると言う説を昔テレビで見たことがある
この記事見てるとそれもあるのかなあとちょっと思う
14. 匿名処理班
※13
可能性もあるというか、逆にそれ以外の説があるの?
常海棲なのに水中でエラ呼吸できず
肺呼吸のため定期的に海面へ上がってこなきゃいけないとか、
どう考えても陸上哺乳類から海に戻ったゆえの不便だろう。
因みに、クジラはカバと同類の「鯨凹歯類」にまとめられている。
逆に言えば、カバは、他の陸上偶蹄目よりも
クジラが一番近い仲間だという判定。
15. 匿名処理班
※13
カール・フォン・リンネという偉大な植物・動物分類学者が初めて解剖学的考察を基に鯨を『哺乳類』に分類したのです、当然四本脚で歩いてる動物なのです(骨格だけ見たら)
16. 匿名処理班
※6
明確に肺が先。
鰭脚は陸棲四肢動物が水棲へと進化した場合に持つものであり、肺より先に獲得していることはあり得ない。
肺の獲得は脊椎動物が陸上進出する以前、肉鰭類と条鰭類(現生の硬骨魚類は肉鰭類以外は全て条鰭類に含まれる)
が分岐する前に起こったと考えられている。
条鰭類が持つ鰾は肺が変化したものと考えられるからだ。
故に、肺獲得以前に肉鰭類を含む系統と分岐した軟骨魚類は鰾を持たない。
この肺の獲得は脊椎動物の陸上進出に先駆けて起こっている。
海から河川へと魚類が生息域を広げた際、
海と比べて圧倒的に水中酸素の不足が起こりやすい河川という環境において、
空気中から酸素を得る器官を獲得する進化が生じたようである。
肺の獲得後、脊椎動物に陸棲のものが現れ、
その後その中から再び水棲・半水棲に戻ったものの中に鰭脚を進化させたものがいる、
というのが進化の流れである。
「シーラカンス類と肺魚の関係、両者を合わせて肉鰭亜綱する研究もある」
むしろ肉鰭類にシーラカンスと肺魚のどちらかを含めないという説は聞いたことが無い。
17. 匿名処理班
※6
その中では、爬虫類が生じ、さらに双弓類が分岐した後、
双弓類の中でまず魚竜が他の系統から分岐、
そして他の系統が主竜形類(恐竜・ワニは主竜形類に含まれる)と鱗竜形類に分岐した後、
鱗竜形類の中で鰭竜類と鱗竜類が分岐、
その後、鰭竜類の中から首長竜が、鱗竜類の中からモササウルス類が分岐した
と考えられている。
「ワニと魚竜の中間なんてのも」
それは形態にワニと魚竜の双方の特徴がみられるということで、
系統的にワニと魚竜の中間ということではない。
上記の説明の通り、ワニは魚竜よりは首長竜やモササウルス類に近い系統の動物である。
18. 匿名処理班
※9
実際、ヨーロッパオウギハクジラの成体のサイズは5mくらいだそうだ。
この個体のサイズはわからないが……
19. 匿名処理班
※16
解説ありがとう。
肺が先というのは理解しました。
鰭脚は少し…
昔、淡水の浅瀬で歩くような這う行動から生まれた(這うのに有利な変化をしたものの子孫が残った)と聞きました。
「陸棲のものが戻って得た」なら、その前に鰭のまま這う生き物がいたはずです。
その名前を挙げるなどしてもらえると助かります(検索して見ます)。
△砲弔い討六温佑砲靴督瓦戮童ます。
20. 匿名処理班
※19
「鰭のまま這う生き物」
この辺りは「どの段階から『脚』と呼ぶのか」という問題とも絡んでいると思われるが、
エウステノプテロン(ユーステノプテロン)、ティクターリク(ティクタアリク)、
エルピストステゲ、アカントステガ、チュレルペトン
等がその「境界」周辺の動物である。
「鰭で這っていたものが鰭が脚となった」という部分について
イメージ的な誤解があるのではないかという気がする。
上で挙げた動物、特にエウステノプテロンと、
シーラカンス・肺魚の鰭の骨格を見るとわかるが、
肉鰭類は元々鰭に太く(条鰭類の鰭の基部のものに比べれば)長い骨の入った
「茎」を持っており、これの構造が水中で障害物をかき分けるような移動、
陸上での移動に有利に働いたようであり、
そして脚へと変化していく。
条鰭類の鰭とは対照的な構造であり、
この構造の違いが「肉鰭類」・「条鰭類」という名称に繋がっている。
それと「鰭脚」という語についても誤解しているのではないかと思われる。
鰭脚は(ちょうどこの記事がよく示している通り)
系統上一度完全に(「地上用」の)脚となったものが鰭状に変化したものであり、
形態的には一度完全に鰭から離れている。
21. 匿名処理班
※19
「鰭のまま這う生き物」について書いたら
まさにこのサイトの過去記事にちょうどその辺りの内容のものがあるのに気付いた。
「私たちの指は古代魚からの贈り物だった!?指が生えた先史時代の水中生物が発見される」
(2020年03月21日記事)である。
同記事中にパンデリクトゥス・ティクターリク・エルピストステゲの胸鰭と
チュレルペトンの 前肢の骨格図があるが、
それらとこの記事にあるクジラの前肢の骨の画像を見比べると、
鰭脚は一度完全に脚となったものが鰭状になったものであるのがわかりやすいと思う。
22. 匿名処理班
「鰭のまま這う生き物」の骨を見る上で
勘違いしやすいかも知れない点について
雑だが説明図を描いた。
ttps://imgur.com/a/aLit67V
ティクターリクやエルピストステゲ等の鰭の骨は
この図の青の部分内部に位置している。
23. 匿名処理班
頭はイルカで体はクジラ。ただそれだけなのに動画みると未知の生き物感すごい...
よく知らない人が見たら未確認生物だと思うだろうなあ
24. 匿名処理班
コウモリの翼も手の変形と考えると
哺乳類の手の形はスゴいポテンシャルと汎用性を持っているんだなと
25. 匿名処理班
以前スッポン鍋を始めて食べた時に、スッポンの手の骨の配置とサイズ感が人の赤ん坊のレントゲン写真でとらえた骨を想起してゲンナリした。
もう二度とスッポンを食いたいとは思わない。
26. 匿名処理班
知識としては脊椎動物は骨格の構成はほぼ一緒で四肢があり五本指というのは子供の頃に図鑑読んで知ってたなぁ。現物は生々しいねぇ。
27. 匿名処理班
>>12
なんかワロタw