
それはどうやら海から浜に打ち上げられたらしかった。少年たちはクジラではないかと思い、地元で医師をやっていたデウィット・ウェッブに報告した。
翌日、ウェッブはその死骸を検査しに向かった。だがなかなか手がかりがつかめず、ミステリーは高まった。
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骨もヒレもない。巨大な肉塊「グロブスター」の正体は?
オーガスティンの海岸に打ち上げられたことから、この肉塊は後に「セント・オーガスティンモンスター」と名付けられた。その死骸はひどく腐敗が進んでおり、何の肉なのかわからない。手がかりとなるるようなはっきりとした特徴はない。
骨も目も、手足やヒレのようなものもないことからクジラではなさそうだという。
ウェッブ氏によれば、死骸はほとんど白に近いうっすらとしたピンク色で、どこもゴムのような弾力があったという。その重量は5トン程度だと思われた。
そして数時間検査を行った末、ウェッブ氏はこう結論を出した。
巨大なタコである可能性が高いと。

巨大タコなのか!?
数週間後、ウェッブは手紙にその死骸の写真を同封し、ハーバード大学の動物学者ジョエル・アサフ・アレンに鑑定を依頼。そこから、その手紙は、当時頭足類の権威であったイェール大学のアディソン・エメリー・ヴェリルの手に渡った。一目見て、ヴェリルは巨大なイカの死体ではないかと考えた。しかし、しばらくして考え直し、確かに巨大なタコの死骸であると返事を書いた。
それから2ヶ月が経った翌年の2月、その生き物は、オクトパス・ギガンテウス(Octopus giganteus)と命名された。
ウェッブは馬6頭で死骸が波にさらわれない場所まで引っ張った。その生物にとって安住の地となったアナスタシアのサウスビーチは、人々の関心を惹きつけ、大勢が訪れるようになった。
その後、死骸がどうなったのかは不明だ。おそらくは、腐敗臭がひどいことになり、砂に埋められたか、海に還されたかしたのだろう。

その後もタコ説を裏付ける分析結果が
死骸は失われてしまったが、そこから採取された標本は残っており、それから100年以上もの間、いくども検査にかけられた。そして1970年代に行われた分析によっても、やはりその海の怪物はタコであったと確認された。
「それが示唆することは驚きだ」とフロリダ大学の細胞生物学者ジョセフ・F・ジェンナロは研究論文に記している。「長さ22.8〜30メートル、基部の直径がおよそ45センチという巨大なタコ(完全に伸ばせば60メートル)とは、想像を絶する。」
この分析結果は15年後に別の研究者によっても支持された。そのシカゴ大学の生化学者もまた、死骸は巨大な頭足類のもので、おそらくタコだろうという結果にいたったのである。

だがのちに、クジラであることが判明
1995年、電子顕微鏡と生化学分析の進歩によって、標本のさらに詳しい研究が可能になった。ところが今回、肉塊は皮膚に見られる構造タンパク質であるコラーゲンそのものであることが判明した。
ここからこの研究者は、クジラの皮膚以上でも以下でもないと結論づけた。さらにその後の解析でも、クジラの肉であることが確認された。

世界各地の海岸に打ち上げられる謎の肉塊「グロブスター」
じつは世界中の浜辺には、セント・オーガスティンの怪物に似た死骸がたびたび打ち上げられてきた。それは「グロブスター」と呼ばれており、昔から人々の好奇心を掻き立ててきた。もしかしたら、大昔から船乗りによって語り継がれてきた、巨大な海の怪物の伝説や神話の類と結び付けられたこともあったかもしれない。
だが、ほとんどはクジラやサメのような既知の海洋生物の死骸であると特定されている。
このセント・オーガスティンの怪物は写真に撮られ、きちんと資料が残された最初のグロブスターである。だが、世界的に有名なものは他にもある
トランコ(1924年)
トランコは1924年、南アフリカのマーゲイトの海岸に打ち上げられた。2頭のクジラと3時間に渡り戦っているところを目撃されており、目撃者によると「巨大なホッキョクグマ」に似たものが、尻尾でクジラを攻撃していたという。

数十年後、残されていたトランコの写真を調査した古生物学者は、クジラの死骸であると結論づけている。白い毛皮のようなものは、クジラの組織に豊富に含まれているコラーゲンがひどく腐敗したものだという。
タスマニアン・グロブスター(1960年)
タスマニアン・グロブスターは1960年8月にタスマニア西部の海岸に打ち上げられた。大きさは6×5.4メートルほどで、重さは5〜10トンと推定されている。目はなく、口と思われる場所には「柔らかい牙状の突起物」があった。また背骨と6本の柔らかく肉質の腕があり、体は白い剛毛によって覆われていた。

ニュージーランド・グロブスター(1965年)
こちらは1965年3月、ニュージーランド、オークランドから42キロ離れたムリワイビーチに打ち上げられた。
チリアン・ブロブ(2003年)

重量13トン、長さ12メートルで、当初は完全に正体不明であったが、DNA解析の結果、マッコウクジラの一部であることが判明している。
ということで、グロブスターの正体はほとんどがクジラである場合が多いようだ。
References:Globsters: When Sea Monsters Wash Ashore | Amusing Planet/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
>>「巨大なホッキョクグマ」に似たものが、尻尾でクジラを攻撃していたという。
なんか可愛いな
2.
3. 匿名処理班
よくモフモフした肉塊が漂着してUMAだって
騒がれるけど、アレって鯨やなんかの海洋哺乳類の
肉が水に洗われて筋繊維が残った部分が体毛状に
見えるようになっただけなんだってね
4. 匿名処理班
髭の部分でもないのにどうして鯨の死骸は海水にもまれて海岸に打ち上げられると毛が生えたみたいになるの?
5. 匿名処理班
クジラかぁ、ちょっと超巨大タコにロマンあったのになぁ
6. 匿名処理班
現在では大抵すぐに正体が判明するから昔みたいに伝説の怪物が空想される余地がなくなってしまった
7. 匿名処理班
その一方で深海では新たに発見された生物がいるから何とも言えん
8. 通りすがり
>>4
トンカツ作るときにスジを切ったりしますよね
あれです
大きな生き物ほどスジが多いと言われてます
9. 匿名処理班
※8
え、脂肪分が繊維状にバラけてるとかじゃなくて?
10. 匿名処理班
首長竜の死骸でびっくりしてたあの頃。
11. 匿名処理班
どう見てもマッコウクジラの死骸
腐敗して骨格が抜け落ちた状態で漂着した姿
12. 匿名処理班
グロ ブスター
グロブ スター
グロブス ター
13. 匿名処理班
タコだったら大したモンだよ。あん。でもまぁ、クジラだろうなー。何コラ、タココラ!
14. 匿名処理班
コメント欄に長州力がいるな
15. 匿名処理班
でっかいダイオウイカだと思ってたけど、UMAなのかな?なのかな?
16. 匿名処理班
日本のスラングにおきかえると酷い言葉になるな
17. 匿名処理班
>>10
クジラの背骨を恐竜の長首に見立ててた時代は…、あのドキドキはもぅ帰ってこないんだよね。ネオ・ネッシーとかなんとか言ってたっけ?
18. 匿名処理班
筋繊維ですよね、筋ではなくて。
19. 匿名処理班
レベルが低すぎる・・・
学者も自分で見た事無く想像で言ってるだけだからな?
コラーゲンが腐って白い毛皮に見える事は有り得ないし
背骨や牙も存在が確認されてるのにクジラの脂肪で片付ける
海にいるの大型哺乳類がクジラだけと思ってやがる
地球の七割が海でそのほとんどが200m以上の深海だ
人跡未踏の所が多いから未確認生物がいくらいても不思議ではない
日本の船の網にかかった生物もどう見ても首長竜だし
ウバザメと言われてるが船員さんは匂いが全然違ったと証言してる
20. 匿名処理班
クジラやろなぁ→巨大タコ!?→なんだやっぱりクジラか…。
まぁクジラだよね
DNA解析でわかってしまう事で謎は解明されるけど何処か寂しいという