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恒星間天体「3I/ATLAS」太陽系を通過中に生命の種をばらまいている可能性を科学者が示唆

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(著)

公開: (更新: )

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Image by Istock estt
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 宇宙のはるか彼方から太陽系にやってきて、現在も木星と土星の軌道のあいだを猛スピードで移動している謎の恒星間天体「3I/ATLAS」。

 この天体が太陽系を通り過ぎる際に惑星へ生命の種を落としていった可能性があると、ハーバード大学の天文学者アヴィ・ローブ博士が示唆している。

 ローブ博士は、3I/ATLASが太陽に近づいた後にだけ放出したメタンと、地球の公転面にほぼ沿った奇妙な軌道に注目した。

 偶然にしては出来すぎというこの条件の一致が、3I/ATLASが太陽系に生命の種をばらまいていった可能性を示しているという。

参考文献:

観測史上3例目の恒星間天体の正体「3I/ATLAS」

 2025年7月1日、チリにある観測システム「ATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)」が、太陽系の外から飛んできた天体が、猛スピードで太陽系内に入ってきているのを確認した。

 3I/ATLASは、2017年に発見されたオウムアムア、2019年発見のボリソフ彗星に続く、観測史上3例目の恒星間天体となった。

 恒星と恒星のあいだの空間、つまり太陽系の外からやってきた天体を恒星間天体と呼ぶ。

 3I/ATLASは秒速約60kmという猛烈なスピードで太陽系内を駆け抜け、2025年10月に太陽に最接近した。12月19日には地球から約2億6870万kmの距離まで近づいた。

 2026年5月30日現在、木星と土星の軌道のあいだを通過中で、現在位置はNASA「Eyes on the Solar System」でリアルタイムに確認できる。

 2026年7月に土星の軌道を、2027年4月に天王星の軌道を、2028年頃に海王星の軌道を通過する予定だ。

 3I/ATLASは二度と太陽系に戻ることのない軌道に乗っており、やがてはオールトの雲を抜け、恒星間空間へと去っていくとみられている。

 NASAもESAも公式に「彗星」と分類したが、従来の彗星にはない特徴を数多く持ち合わせており、現在も世界中の天文ファンや研究者の興味を引き続けている。

NASAの3I/ATLASの現在位置を示すサイト「Eyes on the Solar System

太陽に近づいた後にだけ現れたメタン

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とNASAの赤外線宇宙望遠鏡SPHEREx(スフィアエックス)は3I/ATLASの特異な性質を観察した。

 太陽に接近した後、3I/ATLASのまわりからメタノール、ホルムアルデヒド、メタン、エタンといった有機分子が次々と検出されたのだ。 

 なかでもメタンが検出されたタイミングが奇妙だった。

 宇宙空間の真空環境では融点や沸点は意味を持たず、固体が液体を経ずに直接気体になる「昇華」が起きる。

 昇華温度は一酸化炭素が約-250℃、メタンが-220℃、二酸化炭素が-97℃で、この順に揮発しやすい。

 メタンの昇華温度は-220℃と非常に低く、わずかな熱でも蒸発する。

 太陽系に入った時点ですでに十分な熱があるため、表面にメタン氷があれば早い段階で検出されているはずだった。

 ところが2025年8月、まだ木星と火星の軌道のあいだにいた時期のJWSTとSPHERExの観測では、メタンはまったく検出されなかった。

 メタンが現れたのは、3I/ATLASが太陽のすぐそばを通り過ぎた後のことだ。

 太陽の強烈な熱によって初めて天体の深い内部まで温められ、そこに閉じ込められていたメタン氷が放出されたと考えられている。

 表面から枯渇しているはずの一酸化炭素でさえ太陽接近前から検出され、深部に閉じ込められていたはずのメタンは太陽接近後にしか現れなかった。

 この2つの現象は科学的な説明がつきにくい。

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探査機Juiceがが撮影した3I/ATLAS Image credit:ESA/Juice/JANUS

メタンは生命が存在するサインになりうる 

 系外惑星の大気中でメタンが検出されると、天文学者たちは「生命の存在を示すバイオシグネチャー(生命指標)」として注目する。

 地球でも大気中のメタンの多くは、生物の活動によって生み出されているからだ。

 2022年に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文は、メタンが地球外生命を発見する最初の手がかりになりうると主張している。

 一方でローブ博士は別の角度からも仮説を立てている。

 3I/ATLASが生命を持っているかどうかにかかわらず、氷や岩石の破片に乗せて生命の種を太陽系の惑星へ届けた可能性だ。

 その根拠として博士が注目したのは、メタンだけでなく3I/ATLASの軌道とジェットだった。

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3I/ATLASの表面からは、渦を巻くような噴出物が噴出しているように見える。Image credit: Josep M. Trigo-Rodríguez/B06 Montseny Observatory

ローブ博士が唱える「宇宙の種まき」仮説

 アヴィ・ローブ博士は宇宙物理学者で、ハーバード大学天文学科特別教授だ。

 2011年から2020年まで同学科長を務め、地球外知性の痕跡を科学的に探索する「ガリレオ・プロジェクト」の責任者でもある。

 かつてオウムアムアを「人工物の可能性がある」と主張し、科学界に大きな論争を巻き起こしたことでも知られる人物だ。

 ローブ博士は3I/ATLASの軌道が、地球が太陽を周回する面(黄道面)に対してわずか4.88度しかずれていなかったという事実にも注目した。

 太陽系の惑星はほぼ黄道面上を公転しているため、3I/ATLASはまるで惑星たちが並ぶ「通り道」に沿って飛んできたことになる。

 加えて3I/ATLASは、太陽に向かって大量の氷や岩石の破片を噴き出すジェットを持っていた。この破片は太陽風や太陽放射を突き破るほど大きなものだったという。

 軌道の一致、メタンの謎、そして太陽方向へのジェット。

 ローブ博士はこれら3つの条件が重なったことを根拠に、パンスペルミア説の可能性を論じた。

 パンスペルミア説とは、生命の種が宇宙空間を移動して別の惑星に届くという「宇宙播種説」だ。

 タンポポが風に綿毛を飛ばして種を広げるように、3I/ATLASが氷や岩石の破片に生命の種を乗せ、太陽系の惑星へと届けていったかもしれないというのだ。

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木星探査機JUICEが、約1億8000万km離れた場所から3I/ATLASを撮影した画像。彗星が緑色に見えるのは、核のまわりに広がるガスが緑の波長の光を出しているため。 Image credit:ESA

生命は宇宙の極寒に耐えられるのか

 地球では、微生物が氷の中で数百万年間生き続けた証拠が複数確認されている。

 地球では、微生物が氷の中で長期間生き続けた証拠が複数確認されている。

 カリフォルニア大学バークレー校の物理学者ビューフォード・プライス博士とロバート・ロード氏が2007年にPNASで発表した研究によると、雪の下3km以上の氷の結晶に閉じ込められた微生物が最大10万年生存できることが示された。

 2020年にNature Communicationsに掲載された研究では、南太平洋の海底75m下(海面下5700m)の岩盤の中にいた微生物が、ほぼエネルギーも栄養もない状態で1億年以上生き続けたことが示された。

 実験室で蘇生させると、休眠状態から回復して代謝を再開し、再び増殖したという。

 だがいずれも地球の生命の話だ。

 太陽系の外で生まれた生命があるとすれば、恒星間空間という極限環境に適応した、さらに強靭な存在である可能性もある。

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ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した3I/ATLASの画像(2025年7月21日) credit: D. Jewitt et al/NASA/Wikimedia

偶然か、意図された「種まき」か

 ローブ博士はさらに踏み込んだ仮説も提示している。

「指向性パンスペルミア」と呼ばれる考え方だ。知的な存在が意図的に生命の種を別の惑星系へ届けようとした、という仮説である。

 3I/ATLASの軌道が黄道面とほぼ一致していたこと、太陽方向へ氷の破片を大量に噴き出していたこと。

 博士はこれらの条件がすべて揃っていたのは偶然ではないかもしれないと言う。

 今後、チリに建設中の大型望遠鏡「ルービン天文台」が黄道面に沿って飛んでくる恒星間天体を次々と発見するようなことがあれば、指向性パンスペルミアの仮説はより現実味を帯びてくる。

 新たな恒星間天体が見つかった際には探査機を送り込み、天体の表面に衝突させて放出される物質を分析することで、生命の痕跡があるかどうかを調べることができるとローブ博士は言う。

 万が一、太陽系外の生命が見つかり、地球の生命と似た構造を持っていたとしたら、「地球の生命はもともと宇宙のどこかから届けられたものだった」という結論に行き着くかもしれない。

 だが主流の天文学者の多くはこの仮説に懐疑的だ。

 恒星間天体は遠くの恒星系から自然に弾き飛ばされた岩石や氷である可能性が高く、生命を運んでいる証拠はまだ何もない。

 ローブ博士は、だからこそ探査機を送り込んで直接調べるべきだと主張し続けている。

まとめ

ローブ博士の主張

  • 3I/ATLASが太陽に近づいた後にだけメタンが検出されたのは科学的に説明がつきにくい現象
  • 3I/ATLASの軌道が惑星の並ぶ軌道面にほぼ沿っていたのは偶然にしては出来すぎている
  • ローブ博士は、これらの条件が重なることから3I/ATLASが生命の種を太陽系にばらまいた可能性を示唆した

身近な例に例えるなら?

タンポポが風に乗って綿毛を飛ばし、遠くの土地に種を届けるように、3I/ATLASが氷や岩石の破片に生命の種を乗せて太陽系の惑星へ届けた可能性がある。もしこれが本当なら、地球の生命そのものが宇宙から届けられた種から始まったことになる。

まだわかっていないこと

  • メタンが太陽に近づいた後にだけ現れた理由は、まだ科学的に解明されていない
  • 3I/ATLASが実際に生命を運んでいたかどうかを確かめる手段が現時点では存在しない ・主流の天文学者の多くはこの仮説に懐疑的で、証拠はまだ何もない
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この記事へのコメント 18件

コメントを書く

  1. 秒速60キロの物体を調べるのは大変だなー

    • +7
  2. >揮発しやすいはずの一酸化炭素が先に出てきて、もっと揮発しやすいはずのメタンが後から現れた。この順序は科学的に説明がつきにくい。

    ここは誤訳?
    揮発しやすさは一酸化炭素>メタンだけど
    その前にはメタン氷の昇華点が-220℃とあるから、メタン氷の性質が特殊ってことだろうか?

    メタン
    融点:−182.456 °C 、沸点:−161.49 °C
    一酸化炭素
    融点:−205.02 °C 、沸点−191.5 °C

    • -5
    1. >昇華温度は一酸化炭素が約-250℃、メタンが-220℃、二酸化炭素が-97℃で、この順に揮発しやすい

      とあるのでメタンより一酸化炭素の方が揮発しやすいということで合ってるはず。
      メタンが後から出てくるのはおかしくないはずだから確かに記事の説明がおかしい気がするな。

      • +1
    1. 彗星のマージョ。
      (タイムボカン放送五十周年記念)

      • -1
  3. ・メタンは生命が存在するサインになりうる 
    ・ローブ博士が唱える「宇宙の種まき」仮説

    この二つのことは全く別物なのにごちゃまぜに解釈している記事

    • -6
  4. 3I/ATLASがどこから来たのか知らないけど、太陽系に接近するまで下手すると何十億年もかかってるだろ?
    気の長い話だ

    • +1
  5. アヴィ・ローブ博士は、かつてオウムアムアを「人工物の可能性がある」と主張した
    とんでも学者なんで、耳を傾ける必要はない
    しかし生命の部品は宇宙から来たという説は支持するが

    • -1
      1. 小学生の夏休み終わり、24時間TVアニメスペシャルを親と戦いながら見たのを思い出した。

        • 評価
  6. 地球人もクリンゴンもバルカンも元は同じで
    先に進化を遂げた宇宙人に依って宇宙のあちこちに
    撒かれた種という話がスタートレックに有ったなー

    • +1
  7. 彗星って宇宙の花咲かじいさんだったんだな

    • +2
  8. こういうSFネタ好き
    でも最深部の生き物死んでそうで悲しい

    • -1

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