
例え二束三文のような「ガラクタ品」でも、自分の感性にピッタリとはまれば、それは「掘り出し物」なのである。
そんなわけで、イギリス、ダービーシャーのカール・マーティンさんも、フリーマーケットで、自分にとっての「掘り出し物」を発見し、購入した。
ところがこの「掘り出し物」、実は客観的にも価値があるものだったと判明したのである。骨董も骨董、なんと4千年前の品だというのだ。
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一目で気に入った小さな壺
マーティンさんがその小さな壺を「発見」したのは、南ダービーシャーで行われた「カー・ブート・セール」の会場である。カー・ブート・セールとは、出品者が不用品を「車のトランクに詰め込んで」持ち寄る、日本の自治体が主催するフリーマーケットと同じようなものだ。
アンテロープ(レイヨウ)の描かれたその小さな壺を「一目で気に入りました」というマーティンさんは、他の壺と合わせて2つを4ポンド(約574円)で買った。
そして、その壺を自宅に持ち帰ると、バスルームに置き、歯ブラシと歯磨き粉を入れておくことにしたのである。おかげで、壺には歯磨き粉の跡がついてしまった。

image credit: Hansons Auctioneers
あの壺は実は骨董品なのでは?
さて、そのマーティンさんだが、実は熱心な骨董ファンだったりもする。熱意が嵩じて、7年前にはダービーシャーのオークション会社、ハドソンズ・オークショニアズ (Hansons Auctioneers) の査定人として就職してしまったほどなのだ。ところがマーティンさん、自分の買ったアンテロープの壺を「とても古いものかもしれない」と思いながらも、「そのことをすっかり忘れてしまった」のである。
そしてある日のこと。マーティンさんは、ハドソンズで古代遺物の専門家、ジェイムズ・ブレンチリー氏の荷解きを手伝っていた。
「私の歯ブラシ入れによく似た陶器を見かけました。絵のスタイルは同じものに思えましたし、似通った、ラフな動物の姿が描かれていました」
「私はバスルームから歯ブラシ入れを救い出し、ブレンチリー氏に精査を依頼しました」

image credit: Hansons Auctioneers
紀元前1900年頃のインダス文明の陶器
その結果。マーティンさんの壺は、正真正銘、紀元前1900年ごろのアフガニスタンの壺だということが判明したのである。「4千年近く昔のものということですよ――キリストが生まれる2千年前です。本当に驚きです。これが一体どうして、南ダービーシャーのカー・ブート・セールにやってきたかは知る由もありませんが」

image credit: Hansons Auctioneers
ブレンチリー氏はこの壺について、以下のように述べている。「これはインダス・ハラッパー文明の陶製の壺で、紀元前1900年ごろに遡ります。南アジアの北西部を中心に栄えた青銅器文明です」
「(インダス文明は)エジプト・メソポタミアと共に『文明のゆりかご』と呼ばれるもののひとつで、最も広がりました。現在のインド、パキスタン、そしてアフガニスタンにあたる地域から発祥しています」
「このような品には時々行き会いますので、この描画法には馴染みがあります。何十年も以前に、裕福な旅行者がイギリスへ持ち込んだのでしょう」
ハラッパー遺跡

imege credit: Shamshad Hussain / Wikimedia Commons [CC BY-SA 3.0]
オークションにかけたら、購入時の20倍の値段に
マーティンさんはこの壺を気に入っていたが、それでも自分の勤めるハドソンズのオークションに出品することにした。「どうなるか見てみたい」と思ったのだ。値はすぐにつり上がっていき、最終的には80ポンド、約11,480円に達した。
「ひと財産、とまではいきませんが、なかなかの利益ですね。おそらく、手放すべきではなかったのでしょう」とマーティンさん。「あの壺を歯ブラシ入れにしていたことに、今は少々、後ろめたさを感じるのですよ」
References: Hansons Auctioneers など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
4000年前の陶器とかさぞ高価だろうと思ったのに
1万円!?安すぎません!?!?
たくさん現存してるのかな
2. 匿名処理班
豪運やなー。エライ貴重なのは理解したけど、おっさんの歯ブラシ入れだった思うとなんか骨董ロマンが薄れるw
3. 匿名処理班
陶器なの?土器っぽく見える
4. 匿名処理班
「しかるべき場所」にしまうのもいいけど 、4000年後に歯ブラシ入れで余生ってのも素敵だと思う
5. 匿名処理班
ちょっとフリマ行ってくる。
6. 匿名処理班
4000年前の壺が1万ちょっとにしかならない事にびっくり。
7. 匿名処理班
え〜〜っ、たった11,480円!?
そこ一番驚いたw
8. 匿名処理班
リオオリンピックのメダル立てもいつか未来の世界で歯ブラシ立てとして発見されるであろうことだよ。
9. 匿名処理班
え 80£で買えるんですか?
10. 匿名処理班
たった1万なんか
1000万は軽くこえるのかとおもってた。綺麗な状態だし
11. 匿名処理班
そんな安い値段で購入できるのなら自分も欲しいと思ってしまった
12. 匿名処理班
横からのパッと見、茶碗状に見えたがホンまに壺だった。
割りと味わい深い風情でエエなぁ、歯ブラシ立てにしてたんわスゴいがw
13. 匿名処理班
安いって言うが歯ブラシ立てとしてみれば高級だよね!
14. 匿名処理班
もしかして歯磨き粉の跡が付いちゃってるから値が上がらなかったとか?
研究所とか博物館とかならこの値段でも大事にしてくれそうだが…。
15. 匿名処理班
ずっと歯ブラシ立てにしてほしかった。4000年前の壺を普段使いにするほうがロマンチック
16. 匿名処理班
1万円ちょいにしかならないことにまず驚いて、
実際に売って手放してしまったことにまた驚いた
用の美っていうけど、歯ブラシ立てに使い続けるのが粋で良かったのに
17. 匿名処理班
こんな値段なら売らずに手元に置いておきたいな
18. 匿名処理班
インダス文明のクッリ式土器ですな。ちなみに言うとマーケットに存在してるのはみんな盗品か贋作だから買っちゃダメだぞ。でも盗品が一番出回ってるのは日本なんだよなぁ。
19. 匿名処理班
一万円なら絶対欲しい
20. 匿名処理班
4千年も経ってるのに普通に日用品として使えるのが笑える
21. 匿名処理班
正体が判明した後も売らずに、引き続き歯ブラシ立てとして使用して欲しかったな
22. 匿名処理班
はぶらしの置く頃に
23. 匿名処理班
戦国時代の茶器の名物狩りみたいだな
24. 匿名処理班
もしかしたら4000年前も歯ブラシ置きに使ってたかもよ?
25. 匿名処理班
一万なら買うわ。
26. 匿名処理班
「お前さんの歯ブラシはいい歯ブラシだねぇ、どうだい私に3両で譲ってくれないかい、ついでにその壺も頂いてこうか。」 「いや、この壺は譲れないんだよ、インダス・ハラッパー文明の壺でね。」 「じゃあなんで、歯ブラシ置きになんかにしてるんだい。」 「いや、こうしてるとね、歯ブラシが時々3両で売れてくものでね、、 」
27. 匿名処理班
博物館の展示されてないものを置いておく場所とかみると古いだけでは価値はないみたいね
ギリシャのローマ時代の遺跡とか雑に扱われてるし
28. 匿名処理班
俺もそうだか「古いから高価」じゃないのね
ま この人、そこそこの「目利き」ってことで。
29. 匿名処理班
ギャラリーフェイクでありそうな話だ。
30. 匿名処理班
※1
多分、当時の日用品とか大量生産品だったのだろう。
歯ブラシたては理にかなった使用法だったと思われる。
31. 匿名処理班
こんな柄のお茶碗が欲しいです。どこかで作ってないのかなぁ
はっっ!!新たなビジネスチャンスか!!
32. 匿名処理班
オークションで競り落とした人は何が気に入ったんだろう?
落札者「いやあ、歯ブラシ立てにちょうどいいんじゃないかと思いましてw」
なんてねw
33. 匿名処理班
ハラッパー遺跡、ホントは草ボーボー。
(器は?と問われても、俺自身語れる器じゃないの)
34. 匿名処理班
もっと値がついてもいいと思うけど古銭程度に残ってるのかしらね。そんなことないと思うけど…
35. 匿名処理班
>>33
原っぱーだけにな
36. 匿名処理班
※35
だけにはいらねーよ。