この画像を大きなサイズで見るいつかはカラスと分かり合いたい私の場合、散歩中、カラスに目配せする日々が続いている。
敵に回すと怖いけど、信頼してくれたら、守ってくれたり贈り物を届けてくれたりする、賢さ天井知らずのカラスのまた別のすごさが明らかとなった。
日本でもおなじみのハシボソガラスは、目で見た情報を処理し、判断する速さが人間やサルの2倍に達することが、ドイツのテュービンゲン大学の研究で明らかになった。
近所のカラスたちと分かり合うために参考になるかもしれない。
この研究成果は『Science』誌(2026年10月22日付)に掲載された。
参考文献:
- Crows make decisions twice as fast as humans and monkeys | University of Tübingen
点の動きを見分けるテストをカラスで実施
脳がどうやって視覚情報を処理して判断を下すのかは、主にサルを使った実験で調べられてきた。
画面の上でちらちらと動く点を見せて、点が流れる方向を答えさせるテストを実施したところ、サルの脳は目で見た情報を少しずつ集め、一定の量に達したところで答えを決めていることがわかっている。
人間やサルの脳の表面には、細胞が層になって重なった大脳新皮質(だいのうしんひしつ)があり、判断にも関わっている。
一方、鳥の脳には、層になった大脳新皮質がない。
鳥がどのように脳で視覚情報を判断を下しているのかを調べるため、テュービンゲン大学のアンドレアス・ニーダー教授らは、日本にも生息するハシボソガラス2羽に、サルと同じテストを行った。
研究チームは、人の手で育てた2羽のカラスをタッチパネル式のモニターの前に置き、サルと同様、黒い画面にちらちらと動く白い点の集まりを見せた。
点の一部は同じ方向へそろって流れ、残りの点はばらばらに動いている。
カラスは点の集まり全体がどちらへ流れているかを見極め、画面の左右にある的のうち正しい方をくちばしでつつく。
正解すると、ごちそうのミールワームがもらえる。
そろって動く点の割合は、ほとんどの点がそろう簡単な条件から、3%しかそろわずほとんど見分けがつかない条件まで変えられた。
この画像を大きなサイズで見るカラスはサルの半分の時間で正解を選ぶことができる
カラスは、そろって動く点が3%しかない難しい条件でも、偶然より高い割合で正解を選んだ。
はっきり見分けられる条件では、正答率はほぼ100%に達した。
点が現れてから、カラスが答えを突こうと頭を動かし始めるまでの時間は、平均235mm秒(0.235秒)だった。
ほぼ同じテストを行った過去の研究では、サルは約410〜600mm秒(0.410秒~0.6秒)かかっており、カラスはサルの約2倍の速さで答えていたことになる。
研究チームはカラスに急いで答えるよう求めておらず、カラスは自分のペースで答えていた。
にもかかわらず、カラスの正確さは人間やサルと同じくらいで、答えるまでの時間だけが半分だったのだ。
ニーダー教授は、自分が知る限り、どのサルや人間と比べてもカラスは2倍速かったと語っている。
脳の作りは違っても判断方法はサルと同じ
研究チームは、テスト中のカラスの脳で、人間やサルの前頭前野(判断や計画を担う脳の前の部分)にあたる領域の神経細胞の働きを記録した。
点が現れてから約70mm秒後には、カラスが左右どちらを選ぶかによって、神経細胞の信号に違いが出始めた。
信号は答えを決めるまで少しずつ強まり、一定の強さに達したところでカラスは答えをつついた。
カラスもサルと同じように、目で見た情報を少しずつ積み上げて答えを決めていた。
鳥と哺乳類の祖先は3億年以上前に分かれ、脳もそれぞれ違う形に進化したとされる。
ニーダー教授は、進化が同じ判断の仕組みを2度、別々に生み出したかのようだと話している。
同じ研究チームは2020年にも、カラスに人間のような主観的な体験(意識)がある可能性を示している。
大脳新皮質のないカラスの脳がサルの脳とよく似た働きをすることが、今回の研究でも確かめられた。
速さの理由は小さな脳と高い体温、飛ぶ暮らし
ニーダー教授は、カラスの速さの理由を1つに絞ることはできず、目で見る、判断する、体を動かすという流れのすべてが速いのだろうと考えている。
教授は、速さを支える体の特徴として2つを挙げている。
1つ目の特徴は脳の小ささだ。
空を飛ぶ鳥は体を軽くする必要があるため、とても小さな脳に小さな神経細胞をぎっしり詰め込んでいる。
神経細胞どうしをつなぐ線(軸索)が短いので、信号が伝わる時間も短くてすむ。
2つ目の特徴は体温の高さだ。
人間の体温は約36.6度だが、鳥の体温は41〜42度にもなる。
体温が高いと体の中の化学反応が速く進み、脳の中で情報を伝える物質も速く移動する。
ニーダー教授は、鳥の体は脳も呼吸も血液の循環も、限界近くまで速く働くように進化してきたと説明している。
ニーダー教授によると、空を飛ぶ鳥は障害物をよけ、動くものに素早く反応しなければならないため、目で見た情報を速く処理する必要があるという。
2026年2月にアイルランドの研究チームが発表した別の研究では、237種の動物を比べた結果、空を飛ぶ動物は飛ばない動物に比べ、ちらつく光を見分ける能力が約2倍高かった。
ニーダー教授も、飛ぶ暮らしの中で素早い判断が求められたことが、カラスの速さにつながった可能性があると考えている。
今回の研究に参加したカラスは2羽だけだった。
ニーダー教授によると、行動と脳の記録を組み合わせた複雑なサルの研究でも、2頭ほどで行うのが一般的だという。
また、235mm秒という数字は、点の流れる方向を見極めるまで待つ必要がある今回のテストでの結果で、判断の速さの限界を示すものではない。
他の多くの鳥は今回のテストをこなせるように訓練するのが難しいため比べることができず、カラスの速さが鳥全体に共通するものなのか、カラス科の鳥が特に賢いためなのかは、まだわかっていないという。
ハシブトカラスとハシボソカラスの見分け方
日本で一年中見られるカラスは、今回の実験に使われたハシボソガラスと、ハシブトガラスの2種類だ。
2種類はよく似ているので、カラスと分かり合いたい界隈では、全力で見分けたいと思うはずだ。
Canonの野生写真図鑑によると、見た目の違いは「大きさ、くちばしと額の形」にあるという。
ハシボソガラスはハシブトガラスよりひと回り小さく、くちばしが細めで、額(くちばしの付け根から頭のてっぺんまで)がなだらかだ。
一方でハシブトガラスはくちばしが太く、額が出っ張って見える。
この画像を大きなサイズで見るもし鳴いているのなら、そっちの方がわかりやすい。
ハシボソガラスは「ガァー、ガァー」と濁った声で、お辞儀をするような動作をしながら鳴く。
ハシブトガラスは「カァー、カァー」と澄んだ声で鳴く。
歩き方は、ハシボソガラスが足を交互に出して歩き、ハシブトガラスは両足をそろえて跳ねるように移動することが多い。
すみかも違い、ハシボソガラスは農地や河原のような開けた場所を好む。
もともと森林で暮らしていたハシブトガラスは都市部にも多く、東京の都市部ではハシブトガラスが増え、ハシボソガラスは珍しくなっている。
クルミを空から落としたり車にひかせたりして割る行動や、水道の栓をひねって水を飲む行動など、賢く見える行動の多くはハシボソガラスで観察されている。
もし今度カラスを見かけたら、どっちなのかを見分けてみよう。
とことんカラス
このPRリンクから注文に進んだ場合、販売サイトからカラパイアに紹介料が支払われることがあります。紹介料が発生した場合は、サイト運営の継続と記事制作の資金として活用いたします。
















