この画像を大きなサイズで見る1930年代を最後に記録が途絶え、絶滅したと考えられていた霊長類「バンカ・スローロリス」が、インドネシアのバンカ島に生存していることが確認された。
インドネシアとオーストリアの研究チームによると、人為的な森林破壊で住む場所を失い、人間の家屋や庭に迷い込んだ個体が、10年以上前から地元の救護センターに保護されていたという。
約1世紀ぶりに、その生存が科学的に証明されたのだ。
この研究成果は『Spixiana』誌(2026年10月)に掲載された。
参考文献:
- Venomous primate thought lost to science for nearly a century turns up in gardens and on roads across Indonesia | Asia Research News
1930年代から記録が途絶えていた有毒の霊長類
バンカ・スローロリスはスローロリス属の霊長類で、インドネシアのバンカ島に生息している。
夜行性で体長は26cmほど。大きな目と赤褐色の毛皮を持ち、木々の上をゆっくりと移動して生活している。
かわいらしい見た目だが、他のスローロリスの仲間同様、毒を持つ唯一の霊長類として知られている。
危険を感じると、上腕の内側にある腺から出る有毒な分泌液を舐めて唾液と混ぜ、その口で相手に噛みついて毒を送り込む。
人間の大人がかまれると、血圧低下や呼吸困難を引き起こすアナフィラキシーショックに陥り、命に関わることもある。
毒は主に仲間同士の争いに使われるが、毛づくろいして全身に塗ることで、捕食者や寄生虫から身を守る役目もあると考えられている。
バンカ・スローロリスに関する科学的な記録は、1930年代前半で途絶えていた。
バンカ島は、巨大都市るジャカルタから飛行機で約1時間の距離にある島でありながら、その後ほぼ1世紀にわたって、科学者からほとんど注目されてこなかった。
国際自然保護連合(IUCN)は2020年、絶滅の危険性が最も高い種として分類し、科学の世界では、失われた動物として扱われていた。
この画像を大きなサイズで見る人里に現れた個体を、地元の救護センターが保護していた
外部の科学者たちが絶滅したかもしれないと考えていた裏で、地元の人々はスローロリスを見つけるたびに救護センターへ通報し、救助活動が行われていた。
インドネシアのアロビ野生動物救護センター(Alobi Wildlife Rescue Center)では、2015年から2025年にかけて、バンカ島の各地から90個体以上を保護していたのだ。
保護された個体の多くは、人間の生活圏で見つかったものだった。
詳細な記録が残る43個体のうち、16個体は家屋や庭に忍び込んだところを発見された。道路脇で立ち往生していた個体もいた。
他の7個体は電線に登って感電し、火傷を負った状態で保護された。
バンカ島は300年以上前から世界有数のスズの産地で、採掘によって島の自然は大きく傷ついてきた。
近年は違法なスズ採掘に加え、アブラヤシ農園の大規模な開墾も進んでいる。
2000年から2012年までの間に、バンカ・スローロリスがすむ森は62%も減った。
救護センターの所長であるランカ・サニ氏によると、バンカ島の自然の生息地は大幅に縮小しているという。
住む場所が奪われたことで、バンカ・スローロリスが人間の居住区に現れる機会が増えているとみられている。
この画像を大きなサイズで見る約1世紀ぶりの生存確認と、残された森を守る課題
SNSの写真や未発表の研究といった手掛かりは以前からあったものの、救護センターの記録が正式な論文にまとめられたことで、バンカ・スローロリスの生存は約1世紀ぶりに科学的に確認された。
島の各地で保護されていたことから、今も島の広い範囲で生き残っている可能性がある。
保護された個体のうち86個体は、治療を経て、島に残る森に戻された。
この画像を大きなサイズで見るただし、生存が確認されたからといって、絶滅の危機が去ったわけではない。
サニ氏は「バンカ・スローロリスは失われてはいないが、今も絶滅の危機にさらされている」と語っている。
野生の個体数を調査し、残された森を守る対策が急務となっている。
スローロリスのひみつ: きけんなものが 森をまもった夜
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