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人間の脳が数千年も腐敗せずに残されている理由を解明

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(著)

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Image by pixabay / SebastianEd
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 人間の脳は死後、真っ先に腐敗が始まる臓器だ。にもかかわらず、世界各地で数千年もの間、無傷のまま保存された古代の脳が次々と発見され、長年科学者たちを悩ませてきた。

 イギリスのオックスフォード大学などの研究チームが、ついにこの謎を解明した。

 遺体が水に浸かって酸素が届きにくい場所に埋もれた場合、本来なら組織を分解するはずの化学反応が逆転し、タンパク質同士を強力に結びつけて腐敗を完全に止めていたのだ。

 この研究成果は『Journal of Proteome Research』誌(2026年8月7日付)に掲載された。

参考文献:

4400以上も発見された、腐敗しない古代の脳の謎

 人間の脳は水分と脂質が多く、細胞が自らの酵素で溶けていくため、死後数日で液状になって頭蓋骨の中から失われる。

 だが、世界中の考古学の発掘現場からは、これまでに4400例以上の腐敗していない古代の脳が発見されている。

 中には過去1万2000年間も無傷のまま残っていたものもある。

 1300以上のケースにおいて、骨格だけになった遺骨の中で、脳は唯一残された軟組織だった。

 他の臓器や筋肉がすべて消滅する中で、なぜ脳だけが数千年もの間形を保ち続けることができるのだろうか。

 これまで多くの科学者がこの「脳保存のパラドックス」に頭を悩ませてきた。

 腐らずに無傷で残された脳の多くは、難破船や川底、浸水した洞窟など、水に浸かり酸素が少ない場所で発見されている。

 水は腐敗を早める主な要因であるため、この事実はさらに謎を深めていた。

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約200年前にヴィクトリア朝時代の救貧院墓地(英国ブリストル)に埋葬された人間の脳の断片。水浸しの墓から掘り出された遺体には、他の軟組織は残っていなかった。Image credit: Alexandra Morton-Hayward

72匹のマウスの死骸を使った4つの環境での埋葬実験

 なぜ脳だけが水に浸されても腐らないのか?

 イギリスのオックスフォード大学の古生物学者、アレクサンドラ・セヴィア氏らの研究チームは、72匹のマウスの死骸を用意し、それぞれを砂が部分的に入ったガラス瓶に入れた。

 そして、瓶の中を「水分が多く酸素が豊富」「水分が多く酸素が少ない」「乾燥して酸素が豊富」「乾燥して酸素が少ない」という4つの条件に分けた。

 水分量は加える水の量で調節し、酸素量は瓶を開けたままにするか、気密性の高いシリコンパッキンで密閉するかでコントロールした。

 その後、24時間から6か月までの6つの期間に分けてマウスを取り出し、脳の組織がどのように変化したかを分子レベルで分析した。

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実験の概容図 Image credit:i Morton-Hayward et al. / Journal of Proteome Research (2026) / CC BY 4.0

水没した低酸素状態がタンパク質を頑丈に結合させる

 実験開始からしばらくは、4つの条件すべてで脳は同じように腐敗を始めた。

 しかし時間が経つにつれ、決定的な違いが現れた。

 酸素が豊富な瓶の中の脳は、他よりも早く広範囲にわたって崩壊した。

 一方、水分が多く酸素が少ない瓶の中では、脳の腐敗が途中で完全に止まったのだ。

 研究チームは、酸素の量と「フリーラジカル」の働きが腐敗の行方を左右していることを明らかにした。

 フリーラジカルは、周囲の物質から電子を奪い取る、非常に反応しやすい不安定な分子だ。

 生きている人間の体内でも発生し、細胞にダメージを与えて老化や病気の原因になることで知られている。

 酸素が豊富にある環境では、フリーラジカルが脳のタンパク質を急速に分解する連鎖反応を引き起こす。

 しかし、水没して酸素が少ない環境では、この化学反応が異なる動きを見せる。

 フリーラジカルが周囲のタンパク質を分解するのではなく、タンパク質同士を強く結合させる働きへと変わるのだ。その結果、脳の組織全体が強靭になり、それ以上の腐敗を受け付けなくなるのである。

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英ブリストルで埋葬されていた保存状態の良い成人の脳。脳は水浸しの墓から採取された粘土で覆われている。Image credit: Alexandra Morton-Hayward

アルツハイマー病などの医学研究への応用の可能性

 通常なら組織を分解して腐敗を引き起こすはずの化学反応が、特定の条件下では逆に組織を頑丈に保つメカニズムとして働いていた。

 セヴィア氏は、「適切な条件下では、保存は腐敗そのものから生じる。組織を分解するのと同じ反応が、分解によってできた産物同士を溶接して、はるかに頑丈なものに変えるのだ」と語っている。

 今回の発見は、考古学の長年の謎を解明しただけでなく、医学の分野にも役立つ可能性がある。

 死後に脳のタンパク質が生き残るための化学変化は、アルツハイマー病などの神経変性疾患や、脳の老化で見られる変化と非常に似ているからだ。

 イギリスのブリストル大学の有機地球化学者であるリチャード・エヴァーシェッド氏は、この研究が脳以外の臓器や筋肉、さらには古代の土器や歯石に残されたタンパク質の保存状態を解明する足がかりになることを期待している。

 古代の脳から得られた知見が、未来の医療技術の発展につながるかもしれない。

References: Archaeologists Have Found Thousands of Intact Ancient Human Brains. Scientists Say They've Figured Out Why the Organs Don't Always Rot / doi.org/10.1021/acs.jproteome.6c00200

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この記事へのコメント 3件

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  1. 死後に脳が腐敗してもいいのでアルツハイマーになる仕組みなど取り除いて欲しい

    • 評価
  2. オー脳
    でなかった、嘘か本当か不明だが日本でも江戸時代の墓地から
    脳が残った遺体が発見されたというデマが流れてたことあるが
    嘘とは言えないネタとはあの時は疑って悪い

    • 評価
  3. フリーラジカルは酸素があるところだと玉突きで周囲のタンパク質を急速分解するが、
    酸素がない状態だと、玉突きが出来ずタンパク質を強く結合させるってことなのかな。
    老化すると活性酸素ができやすく細胞破壊することで益々老化するらしいので、
    この研究が脳疾患の治療や健康寿命により良く活用されるといいですね。

    • +1

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