この画像を大きなサイズで見る哺乳類全体では体が大きい種ほど長生きする傾向にある。しかし犬の場合、大型犬の方が小型犬よりも早く老化し寿命が短い傾向にある。
その理由は何なのか。アメリカのアリゾナ州立大学などの研究チームが約900匹の犬のデータの細かく解析した。
その結果、大型犬は年を取るにつれて、DNAを傷つける「ジャンピング遺伝子」を抑える仕組みが速く失われていくことが判明した。
ジャンピング遺伝子が暴走しやすくなった結果、大型犬の老化を早めている可能性があるという。
この研究成果は『Science』誌(2026年10月8日付)に掲載された。
参考文献:
- Why big dogs age faster | EurekAlert!
大型犬が小型犬より短命な理由
哺乳類全体を見ると、ネズミの数年からクジラの200年近くまで、体が大きい種ほど寿命が長くなるのが一般的である。
しかし、犬という種の中で比べると、小型犬のほうが大型犬の方よりも長生きするという逆の現象が起きる。
犬種や個体によって異なるが、平均すると大型犬は小型犬よりも寿命が3〜5年ほど短い傾向がある。
さらに、大型犬は加齢に伴う多くの病気にもかかりやすい。
アメリカのアリゾナ州立大学の研究チームは、大型犬が短命になる根本的な原因を探るため、大規模な研究を行った。
この画像を大きなサイズで見るDNAを傷つける「ジャンピング遺伝子」の存在
研究チームは、全米の飼い犬の老化を追跡する「ドッグ・エイジング・プロジェクト(Dog Aging Project)」に登録された894匹の犬から毎年採取した血液をもとに、「DNAメチル化」のパターンを解析した。
DNAメチル化とは、DNAの設計図は変えずに、「どの遺伝子のスイッチをONにするかOFFにするか」を決める目印のことで、年齢とともに変わるため、老化を示す目印にもなる。
加齢に伴い、遺伝子を制御するDNAメチル化は広範囲で失われていくが、特にゲノム(生物が持つ遺伝情報の全体)の中でも、「ジャンピング遺伝子(トランスポゾン)」と呼ばれる領域で多く失われていたことがわかった。
ジャンピング遺伝子は、その名の通りDNAの中を移動(ジャンプ)できる特殊なDNA配列で、自分を切り取って別の場所に差し込んだり、コピーして別の場所に割り込んだりする。
ジャンピング遺伝子の一種である「LINE1」は、ゲノム全体を動き回り、動き回る過程でDNAにダメージを与える性質を持つ。
LINE1は通常、DNAメチル化によって抑制されているが、加齢によって抑制が失われると活発になることがある。
LINE1の活発化は、ゲノムの不安定化や、がんなどの加齢に伴う病気との関連が指摘されている。
この画像を大きなサイズで見る大型犬はジャンピング遺伝子の制御が速く失われていく
研究の結果、ゲノム内のLINE1に関連する領域の40%以上が、加齢とともにメチル化を失うことが判明した。
メチル化が失われるスピードは、犬の大きさによって大きく異なり、大型犬は小型犬に比べて、メチル化の減少が著しく速く進行する。
超大型犬は小型犬に比べて、LINE1のメチル化が年を取るにつれて減っていくペースが、平均で約35%速かった。
論文の筆頭著者であるブレイズ・マリナー博士によると、今回の結果は、犬は大きいほど短命という関係と一致する分子レベルの手がかりとして、これまでで最もはっきりしたもののひとつだという。
また、大型犬の老化が速いのは、少なくとも部分的には、ジャンピング遺伝子に対する制御の低下が原因かもしれないと指摘している。
この画像を大きなサイズで見る人間の健康寿命を延ばす治療につながる可能性
研究チームは、ジャンピング遺伝子が、哺乳類全体に共通する老化の仕組みの一部かもしれないと考えている。
犬はペットとして人間と同じ家で暮らし、同じ環境で生きているため、今回の発見は人間の老化の解明にも役立つ可能性がある。
研究チームによると、ジャンピング遺伝子の活動が老化の直接的な原因なのか、結果なのかを断定するには、さらなる研究が必要だという。
ジャンピング遺伝子や、ジャンピング遺伝子を制御する仕組みを標的にすることで、将来的に人間の健康寿命を延ばす治療法につながる可能性があるかもしれない。
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