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深海で採取した鉱物が研究室で自然発火!海底に潜む予期せぬリスク

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(著)

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深海で採取した岩石。Image credit:United States Geological Survey (USGS)
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 深海の底に眠っていた岩石が、地上に持ち帰られた後に自ら燃えだした。

 アメリカ地質調査所の研究チームが深海底から採取した岩石を研究室に持ち帰ったところ、岩石に含まれる硫化鉱物が空気に触れたとたん、自然発火したのだ。

 銅や亜鉛、金などの金属を狙う深海採掘への期待が高まる中、自然発火する鉱物の存在は、採掘船の上で火災を引き起こすおそれがあるとして警戒されている。

 この研究成果は『Scientific Reports』誌(2026年9月28日付)に掲載された。

参考文献:

水深3,300mの深海底から金属を含む岩石を採取

 アメリカ地質調査所(USGS)の研究チームは、2022年5月から6月にかけて、アメリカ海洋大気庁(NOAA)などと協力し、カリフォルニア州北部の沖合およそ320kmにある深海「エスカナバ・トラフ」を調査した。

 エスカナバ・トラフは、海底の岩盤がゆっくりと引き裂かれて広がっている「ゴルダ海嶺」の南端にあり、水深はおよそ3,300mに達する。

 海底の割れ目からは、地下の熱で温められた海水が金属を溶かし込んで噴き出しており、熱水が周りの海水で冷やされると金属が沈殿して、金属を多く含む「海底熱水鉱床」ができる。

 研究チームは遠隔操作の無人潜水機「ジェイソン」を使い、エスカナバ・トラフの4つの地域から57個の岩石を採取した。 

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エスカナバ・トラフの深海底から岩石を採取。Image credit:ROV Jason/Woods Hole Oceanographic Institute

研究室で割った岩石が煙を上げて自然発火

 研究チームは採取した岩石を船の上で−20℃に凍らせて保管し、陸上の研究室に持ち帰ってから、凍結乾燥(フリーズドライ)で水分を抜いた。

 さらに、分析用の粉を作るため、フリーズドライさせた岩石を粉砕機にかけようとした。

 粉砕機の容器に入りきらない大きな岩石は、手で割って数cmほどの塊にした。

 手で割っていた岩石のうち2個が、割れて新しい面が空気に触れたとたん、目に見えて熱を帯び、煙を上げ始めた。

 研究室は室温23℃ほどのごく普通の環境で、岩石に熱を加えたわけではない。

 2個の岩石は自然発火して100℃を超える熱を出し、最後には元の岩石がすべて酸化して、酸化鉄の一種であるマグヘマイトに変わってしまったのだ。

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Image credit:Gartman et al. / Scientific Reports, CC BY 4.0(動画をGIFに加工)

燃えた岩石は極小の白鉄鉱の結晶でできていた

  研究チームが成分を分析したところ、57個のうち41個は、鉄や亜鉛などの金属と硫黄が結びついた「硫化鉱物」を主な成分としていたことがわかった。

 燃えた2個はどちらも、主に「白鉄鉱(マーカサイト)」という鉱物でできていた。

 白鉄鉱は鉄と硫黄からなる硫化鉱物で、金色に光るため金と間違えられて「愚者の金」と呼ばれる黄鉄鉱と、成分がまったく同じ鉱物として知られている。

 海底の泥には地下の熱で作られた石油が含まれていることがあり、石油も自然に発熱して燃えることがある。

 しかし2個に含まれる石油などの有機物の量はほかの岩石と変わらなかったため、石油は発火の原因から外れた。

 燃えた2個の白鉄鉱は、海底でもともとできていた別の硫化鉱物が溶けて作り直される途中でできたもので、結晶の大きさは5~16nm(ナノメートル、1nmは100万分の1mm)と、髪の毛の太さの数千分の1ほどしかなかった。

 結晶が細かいほど、空気中の酸素に触れる表面は広くなる。

 岩石を割ると新しい面が空気に触れ、硫化鉱物と酸素が反応して熱が出る。

 出た熱が逃げきれずに岩石の中にたまると反応はさらに進み、最後には燃え出してしまう。

 エスカナバ・トラフの海底は水温2℃ほどと冷たく、酸素も少ない。

 研究チームは、反応がゆっくりとしか進まない海底の環境のおかげで、不安定な白鉄鉱が燃えずに残っていたと考えている。

 ただし、白鉄鉱を含む岩石がすべて燃えるとは限らないという。

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細かい粒でできた海底の硫化鉱物の岩石に、紫外線を当てた様子。紫外線を受けて光る鉱物が見える。Image credit: Peter Pearsall / USGS, Public Domain

深海採掘の船の上で火災が起きるおそれ

 海底熱水鉱床には銅や亜鉛、鉛、金、銀などの金属が含まれており、世界各国が採掘に向けた探査を進めている。

 国際海底機構(ISA)は大西洋中央海嶺の北部と南西インド洋海嶺で探査を認めているが、商業的な採掘はまだ始まっていない。

 日本も2017年に、沖縄近海の水深約1,600mにある海底熱水鉱床から、鉱石を連続して引き揚げる試験に世界で初めて成功している。 

 研究チームによると、海底熱水鉱床は陸上の鉱山の鉱床よりもできてからの年月が短く、結晶が細かくてすき間も多いため、陸の鉱石よりも熱を出して燃えやすいという。

 さらに、陸上の鉱山で使われてきた火災対策が、深海から引き揚げた鉱石にもそのまま通用するとは限らない。

 引き揚げた鉱石を船の上で砕いたり、乾かしすぎたりすると、研究室と同じように鉱石が空気に触れて熱を出し、火災が起きる可能性がある。

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エスカナバ・トラフの海底から岩石採取のようす。Image credit:ROV Jason/Woods Hole Oceanographic Institute

 だが、鉱石から酸素や水を取り除くか、たっぷりの水をかけて熱を吸い取れば燃えるのを防げる。

 研究チームは、深海の鉱石に合わせた安全対策を考える必要があると提言している。 

 深海の資源を地上に引き揚げるときには、海底と地上の環境の違いにも備える必要がありそうだ。

References: 41598_2026_70438_MOESM3_ESM.pdf

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この記事へのコメント 2件

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  1. 水につけて保管するしかないかね。

    • 評価
  2. 嫌気性細菌ってのがありましたっけ
    酸素のない環境で活性化するけれど、酸素のある環境では活性が落ちるとか
    酸素って、見方を変えると〝猛毒〟なんですよね

    酸素のある環境で活動してる人間の感覚で考えるのは落とし穴があるという教訓かと

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