この画像を大きなサイズで見る217年もの間、誰にも解読できなかったフランス皇帝、ナポレオン・ボナパルトの指示で書かれた暗号の手紙が、ついに解読された。
1809年、クロアチアで孤立した将軍へ宛てて送られた暗号文を、サイバーセキュリティ企業のエンジニアが最新AI「GPT-6 Astra」に画像を読み込ませたところ、わずか6時間で解読することに成功したという。
手紙には、オーストリアとの開戦を目前に控えた連合軍の配置や戦法、将軍への激励が記されていた。
参考文献:
- Breaking the Marmont Cipher, 1809 - Carter Church
ナポレオンの命令で書かれた歴史的な暗号文の手紙
ナポレオン・ボナパルトは、フランス革命後の混乱の中で軍人として頭角を現し、1804年にフランス皇帝となった人物だ。次々と戦争で勝利を重ねてヨーロッパの大部分を支配下に置いた。
1809年3月16日、ナポレオンは、義理の息子でイタリア副王のウジェーヌ・ド・ボアルネに対し、オーギュスト・ド・マルモン将軍宛てに暗号の手紙を書くように命じた。
当時北イタリアにはナポレオンが王を兼ねるイタリア王国があり、ウジェーヌは副王として、ナポレオンに代わってこの国を治めていた。
この時、マルモン将軍は、現在のクロアチア周辺にあたるアドリア海沿岸のダルマチアに軍隊とともに配置され、他のフランス軍から完全に孤立していた。
手紙の最初の1行はフランス語だったが、残りの24行は数字やアルファベット、記号が入り混じった暗号で書かれていた。
暗号を解くための鍵(解読表)はすでに失われており、フランスの暗号史家が復元した解読表でも、読めるのは全体の約3分の1の記号だけだった。
そのため手紙は、217年もの間、未解決の歴史的暗号として残されていた。
この画像を大きなサイズで見る最新AIが画像を読み込み6時間で解読
この暗号の解読に取り組んだのは、暗号学者ではなく、アメリカのサイバーセキュリティ企業「センチネルワン」のエンジニアであるカーター・チャーチ氏だ。
これまで、暗号を解いた経験のなかったチャーチ氏は、OpenAIの最新のAIモデル「GPT-6 Astra」に手紙の画像1枚を読み込ませ、暗号を解くという目標だけを伝えた。
AIは画像を行ごとに切り分けて記号を読み取り、175個の手書きの印のうち、どれとどれが同じ記号なのかを見分けてから解読作業に取りかかった。
そして約6時間後、記号の書き起こしから解読までの全工程を終え、手紙の内容を明らかにした。
解読結果は、未解決の歴史暗号をリストにまとめている東京在住の日本人研究者、友清理士氏が確認し、「解読済み」と認められた。
この画像を大きなサイズで見る内容は孤立した将軍への激励と援軍
解読された手紙は、オーストリア軍がドイツ南部のバイエルンに攻め込む約2週間前に書かれたものだった。
手紙には、フランス軍と同盟軍の兵の数と駐留地が軍ごとに書き並べられ、孤立して不安を抱えるマルモン将軍を強く激励する内容が記されていた。
ロシア軍はオーストリアに向かって進軍しており、フリウリの軍隊は今日8万人を数える
当時、ロシアはフランスの同盟国だったため、ロシアの援軍がオーストリアに向かっていることを伝えている。
「フリウリの軍隊」とは、イタリア王国北東部のフリウリ地方に集まっていたウジェーヌの軍のことだ。
さらにこう続く。
ダルマチア軍団を加えれば、オーストリアがあらゆる方面から一斉に攻撃されることがわかるだろう。オーストリアは破滅へと突き進んでいる
ダルマチア軍団とは、手紙を受け取ったマルモン将軍自身の部隊のことだ。
手紙は、ロシア軍とウジェーヌの軍によってオーストリアを挟み撃ちにし、そこにマルモン将軍の部隊が加われば、オーストリアは四方から攻められて敗北するはずだと伝えている。
進軍の命令を受けたら、わずかな兵や烏合の衆にひるんではならない
そして、孤立したマルモン将軍に向けて、目の前にいる少しばかりの敵兵や寄せ集めの兵が現れても恐れずに進めと励ましている。
この暗号文は、ナポレオンの手紙に残されていた謎を解く手がかりにもなった。
ナポレオンがウジェーヌに出した命令は1865年に書簡集として出版されているが、この励ましに当たる部分は「一握りの……」と点線で途切れていた。
今回解読された手紙には同じ内容の文が途切れずに書かれていたため、点線の部分には「烏合の衆」という言葉が入っていた可能性が高くなった。
この戦いの行方は?
では実際に、手紙にあるようにフランスはオーストラリアに勝利したのだろうか?
歴史の現実は違っていた。
手紙が送られてから2ヶ月後の1809年5月21日 – 5月22日、ウィーン近郊で行われた「アスペルン・エスリンクの戦い」で、ナポレオンは自身が指揮する大規模な会戦で10年ぶりの敗北を喫した。
この戦いによるフランス軍の死傷者は、2万から2万3000人に上ったという。
この画像を大きなサイズで見るだがナポレオンは軍隊を立て直し、1809年7月の「ヴァグラムの戦い」でオーストリア軍に勝利した。
ダルマチアで孤立していたマルモン将軍も、オーストリア軍を破りながら進軍してこの戦いに駆けつけ、戦いのあと元帥に昇進している。
未解決の歴史は部外者の好奇心で紐解かれる
チャーチ氏は自身のブログで、今回の暗号そのものは決して難解なものではなかったと語っている。
時間と労力さえかければ、暗号学者は解読できたはずだという。
だが、記号の書き起こしから分類、翻訳、解読に至るまでの作業には、多くの時間と複数の分野の知識が必要になる。
専門家にはほかに取り組むべき重要な仕事があるため、1通の手紙のために時間を割く人はいなかった。
チャーチ氏が今回費やしたのは、AIの作業時間の6時間と、自身の数晩の時間だけだった。
チャーチ氏が指摘するように、これからの未解決の歴史を紐解いていくのは、単に好奇心を持った部外者たちなのかもしれない。
ナポレオン 1 台頭篇 (集英社文庫)
このPRリンクから注文に進んだ場合、販売サイトからカラパイアに紹介料が支払われることがあります。紹介料が発生した場合は、サイト運営の継続と記事制作の資金として活用いたします。














ナポレオンの油断が敗北に繋がったということが、
AIによる手紙の暗号解読で分かったということですかね。
>解読された手紙
>オーストリアは破滅へと突き進んでいる
>烏合の衆にひるんではならない
>「アスペルン・エスリンクの戦い」で、
>ナポレオンは大規模な会戦で10年ぶりの敗北を喫した。
その後、手紙を受け取ったマルモン将軍も駆けつけた、
「ヴァグラムの戦い」でオーストリア軍に勝利したということですね。
時間と労力さえかければ解けるが、面倒で放置していた暗号文を、
AIでさっと解くことで新たな事実が分かったということかな。
AIの有効活用事例と言っていいかも知れませんね。
全くのノーヒントから解いたわけではないところがちょっと残念だったなと。