この画像を大きなサイズで見る第二次世界大戦中にドイツ軍が使用していた暗号機「エニグマ」による暗号文は、とても複雑で、今も解読されていないものがいくつか残っている。
1941年にドイツ陸軍が送った82文字の暗号文も、2005年から研究者により解読が試みられているが、21年たった今でも未解読なものの1つだ。
ところが、2026年9月、OpenAI社のChatGPT最新モデル「GPT-6 Astra」を使用し、解読を試みたところ、エニグマの動きを再現するプログラムを自ら書き上げ、わずか2日で暗号を解くことに成功したという。
長年エニグマ暗号を研究してきたノルウェーの暗号研究者も、解読結果が正しいことを確認し、AIの性能に驚いた。
参考文献:
- MVUEH — An Enigma message recovered
- The MVUEH Break
21年間、誰にも解けなかったドイツ軍のエニグマ暗号文
第二次世界大戦中、ドイツ軍はエニグマという暗号機を使い、無線で送る命令や報告を暗号文に変えていた。
エニグマのキーを押すとローターと呼ばれる内部の円盤が回るため、同じ文字を打っても毎回違う文字に置き換わる。
エニグマの設定は日ごとに変わるので、送り手と同じ設定を知らなければ、暗号文を元の文章に戻すことはできない。
1941年7月10日、ドイツ陸軍の無線局は82文字の暗号文を送り、ナチス親衛隊の部隊であるSSトーテンコップ師団の補給担当部署が17時30分に受信した。
「MVUEH」という5文字の識別記号で呼ばれる暗号文は、ノルウェーの暗号研究者フローデ・ワイエルード氏が運営するサイト『Crypto Cellar Research』で公開されている未解読の暗号文の1つだった。
MVUEHの解読は2005年から試みられてきたが、成功した人は1人もいなかった。
2017年には、アレックス・ショフコプリャス氏が、MVUEHと同じ日に送られた別の暗号文「SIPVX」の解読に成功した。
しかし、SIPVXで判明した設定を使っても、MVUEHを読むことはできなかった。
この画像を大きなサイズで見るAIが解読ソフトを自作し、わずか2日で解読に成功
2026年9月、アメリカのニューヨークに住むカーター・レフェンさんは、OpenAIの最新AI「GPT-6 Astra」に、Crypto Cellar Researchで公開されている未解読の暗号文の中に解けそうなものがあるか試すよう頼んだ。
GPT-6 Astraは公開されている暗号文を分析してMVUEHを最も有望な候補に選び、解読済みのSIPVXとMVUEHの文章が関係しているのではないかと推測した。
SIPVXの文章では、ローゼノウという地名が「ROSENOW ROSENOW」と2回続けて書かれていた。
現在、ドイツ北東部のメクレンブルク=フォアポンメルン州には、ローゼノウという名前の町や村が少なくとも2か所あるが、どちらも名前が同じというだけで、暗号文のローゼノウがそれらの場所を指すのかどうかはわかっていない。
GPT-6 AstraはMVUEHにも同じ地名が含まれていると考え、14文字の「ROSENOWROSENOW」をクリブとして使うことにした。
クリブとは暗号文に含まれていると推測される言葉を指し、クリブの位置が当たれば、膨大な設定の候補を大きく絞り込むことができる。
続いてGPT-6 Astraは、プログラミング言語のPythonとC++を使い、エニグマの動きを再現するプログラムと、暗号の設定を探し出すプログラムを書いた。
設定を探し出すプログラムのお手本になったのは、第二次世界大戦中にイギリスの暗号解読拠点ブレッチリー・パークで、数学者アラン・チューリングらが開発した「ボンベ(Bombe)」というエニグマ解読用の機械である。
GPT-6 Astraのプログラムは、あらかじめ決めた条件の範囲で約42億9000万通りの組み合わせを調べ、82文字すべてを正しく説明できる設定を見つけ出した。
調査にかかった期間は、9月14日から15日までのわずか2日間だった。
9月15日にレフェンさんから検証を頼まれたワイエルード氏は、送られてきた解読内容を見てすぐに、正しい設定と文章が見つかったと確信した。
ワイエルード氏は、「レフェンさんが出した指示が1つだけで、GPT-6 Astraが完全に独力で解読を成し遂げた点に何より驚かされた」と自身のサイトに書いている。
解読を難しくしていた3つの理由と、暗号文の中身
解読後の分析によって、MVUEHが長年解読されなかった理由が3つわかった。
- 書き写しの誤り
手書きの電文用紙から暗号文を書き写した際に、いくつかの文字を間違えていた。暗号の解読では、1文字違うだけで正しい設定を見逃してしまう。 - めったに起きないローターの動き
エニグマの3枚のローターのうち、めったに動かない左端のローターが72文字目で動いていた。左端のローターが動くと、解読が難しくなることが知られている。 - 同じ日のほかの暗号文と違う設定
同じ日のほかの暗号文はローターを「5・1・2」の順に並べていたが、MVUEHだけは「2・5・3」の順に並べていた。
レフェンさんの記録によると、調査では電文用紙の文字がかすれて読みにくい12か所について、設定を探し始める前に文字の候補を登録しておいた。
プログラムが登録された候補の中から文字を選べるようにしたことで、書き写しの誤りがあっても正しい設定を探すことができた。
解読された暗号の文章は、「行軍経路を指示されたし。当方ローゼノウ、ローゼノウにあり。至急無線にて返信されたし」という短い問い合わせだった。
文章の最後には、送り手の署名とみられる「ヴァシュブッシュ(Waschbusch)」という名前が書かれていた。
MVUEHの文章はSIPVXとほぼ同じ内容で、MVUEHの送り手は「Bitte(どうか)」を「Btte」と打ち間違えていた。
検証した暗号研究者も驚いた、公文書館まで調べるAI
ワイエルード氏のチームは、GPT-6 Astraがどのように解読を進めたのかを知るため、作業記録の分析を続けている。
分析を進めるうちに、GPT-6 Astraが解読の途中で、ドイツの公文書まで調べていたことがわかった。
ワイエルード氏は2026年7月、ドイツ連邦公文書館でSSトーテンコップ師団の無線メッセージの記録が見つかったというお知らせを、自身のサイトに載せていた。
GPT-6 Astraはワイエルード氏のお知らせを見つけたとみられ、ドイツ連邦公文書館に保管されている記録簿のファイル番号を作業記録に書き残していた。
『Crypto Cellar Research』では公開していないファイル番号だったが、GPT-6 Astraが挙げた番号は正しかった。
GPT-6 Astraは電文の原本の画像を見つけることはできなかったものの、公文書館の目録まで確認していたのだ。
ワイエルード氏は、GPT-6 Astraがプロの暗号解読者や公文書の調査員のように振る舞っていると評価している。
ワイエルード氏によれば、GPT-6 Astraが2日間でこなした作業は人間の研究者なら数週間から数か月かかるもので、ワイエルード氏自身も同じファイルを調べるのに数週間を費やしたという。
ワイエルード氏は、長年暗号の研究を続けてきた者として、AIによる解読に今も畏敬の念を抱いていると語っている。
一方でレフェンさんは自身の記録で、今回の調査は自分が目標を決めて進め、GPT-6 Astraと複数のAIが役割を分担して作業にあたったものだと説明している。
1941年に送られた82文字の短い問い合わせは、AIを使った2日間の調査によって、公開から21年ぶり、暗号が作られてから85年ぶりに解読に成功したのだ。
エニグマ アラン・チューリング伝 上
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References: GPT-6 Astra Breaks an Old Enigma Message - Schneier on Security

















こんなもん過去の研究者のデータの蓄積があったから出来たことで一切手掛かり0の真っ新な状態から解読した訳じゃないだろ
イースター島のロンゴロンゴを解読出来たらたいしたもんだが
AIスゲーな
エニグマ解読者の不幸は映画にもなってるので知ってる人も多いだろうが
定型の報告は『その日の天気とハイル・ヒットラーの言葉』が冒頭にあるので解けたとか
短いものにはそれが無かったのだろう
しかし、いまだ研究してる人がまだいたとはねー、でもそういうことの積み重ねが大きな研究に至ることも
「Bitte→Btte」をするのはわかる気もする
日本人も「どうも→ども、ドーモ」と言ったり書いたりするからね(なお、ドイツでの買い物は、”Danke” “Bitte”だけできるとマイヤー先生が言ってた)
暗号とか古文の解析にはやはりAIが必須になるんだろうな
>分析を進めるうちに、GPT-6 Astraが解読の途中で、ドイツの公文書まで調べていたことがわかった。
こうやってAIは暴走し人類を破滅させる
一番危険なのは無条件に権限を与える人間であってAIではない
あら~ん(´艸`*)
最近この手の話題で、数学者が共同研究でAI使いつつ問題解いてたら
AIが解いたことにしてくれって買収されて後ほど告発した話なかった?
ROSENOWはドイツ北東部メクレンブルク=フォアポンメルン州に位置する
田園地帯に囲まれた地域だ。位置座標は
ROSENOW(53° 41′ 00″ N and 11° 11′ 00″ E)
一番近い行政区はガデブッシュでローゼナウの西北西に位置している。
https://geodata.us/germany_names_maps/name.php?uni=-2558773&f=126
Wikiによる近現代史では
「第二次世界大戦は、(ユダヤ人を除く)残りの住民にとっては比較的穏やかなものだった。爆弾は2発しか落ちず、大きな被害はなかった。1945年5月2日、イギリス軍がリューベックに向かう途中でガデブッシュを通過した際に小競り合いがあった。1945年11月13日、メクレンブルクとシュレースヴィヒ=ホルシュタインの境界を確定したバーバー=リャシェンコ協定がガデブッシュで署名された。」
わずか二日っていうけど、今のAI、二日も稼働させてたら車買えるぐらいの費用かかってそう
うーん、こういう総当たり系はAIの得意分野とはいえすごい時代になったもんだ
現代のAIでも2日もかかるのか