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ダ・ヴィンチの水工学の研究メモに描かれた甲虫の謎。媚薬の効能を知ってスケッチした可能性

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レオナルド・ダ・ヴィンチ、アランデル手稿に描かれた羽のない甲虫(右下) Image credit: British Library Board
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 飽くなき探求心と湧き上がる独創性で万能の天才と呼ばれる、レオナルド・ダ・ヴィンチは、芸術家でありながら様々な科学技術分野で功績を遺した。

 飛行力学に夢中で、空を飛ぶ生物を数多くスケッチしていたが、水利工学のメモの中に、なぜか羽のない甲虫「ツチハンミョウ」の仲間が描かれている。

 イタリアとイギリスの昆虫学者は、ダ・ヴィンチがこの甲虫を描いた理由について3つの説を提唱した。

 その1つが、ツチハンミョウの分泌する成分「カンタリジン」が古くから媚薬として使われてきたことを、ダ・ヴィンチが知っていたという説だ。

 この研究成果は『npj Heritage Science』誌(2026年8月11日付)に掲載された。

水利工学の研究メモに描かれた謎の飛べない甲虫

 飛行力学に夢中だったレオナルド・ダ・ヴィンチのノート(手稿)には、トンボやミツバチなど、羽を持つ昆虫が多く描かれている。

 研究者たちは長い間、ダ・ヴィンチが描いた昆虫の絵を、飛行機械を設計するための研究だと考えてきた。

 しかし、ロンドンの大英図書館に所蔵されている「アランデル手稿」には、奇妙なスケッチが残されている。

 アランデル手稿は、ダ・ヴィンチが1478年から1518年までの40年間に、力学や幾何学、鳥の飛行などさまざまな研究テーマについて書いたメモを1冊に綴じたものだ。

 水利工学(水の流れや水理構造物の研究)のメモやスケッチで埋め尽くされたページに、なぜか羽のない甲虫が描かれていた。

 スケッチは、ダ・ヴィンチが2度目にフィレンツェに滞在していた1503年から1504年ごろに描かれたとみられている。

 スケッチには説明が一言も添えられておらず、なぜ水の研究メモに甲虫がいるのかを示す手がかりはページのどこにもなかった。

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精密なスケッチから「ツチハンミョウ」であることが判明

 イタリアのローマ第三大学のマルコ・A・ボローニャ氏と、イギリスのロンドン自然史博物館のアルベルト・ジッリ氏は、昆虫学者の立場からスケッチを分析した。

 2人は、描かれているのがツチハンミョウ科ツチハンミョウ属の甲虫だと特定した。

 ツチハンミョウ属の虫はオスもメスも羽が退化しており、飛ぶことができない。スケッチの触角の形から、描かれた虫はメスとみられる。

 さらに2人は、ダ・ヴィンチが滞在していたイタリア中部のトスカーナ地方の生息状況を調べた。

 そして、スケッチの虫はフィレンツェ近郊の低地にも分布する「オオツチハンミョウ(Meloe proscarabaeus)」である可能性が高いと結論づけた。

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なぜダ・ヴィンチは飛べない甲虫を描いたのか?

 鳥や虫の羽の動きに夢中だったダ・ヴィンチが、水利工学の研究メモに飛べない虫を描いた理由について、2人は3つの仮説を打ち出した。

 1つ目は、野外調査中に草むらを這う虫を見つけ、純粋な好奇心からスケッチしたという説だ。

 2つ目は、飛行機械の研究に関連して、飛ぶ昆虫との比較対象としてあえて飛ばない昆虫を記録したという説である。

 さらに興味深いのは3つ目の仮説である。

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オオツチハンミョウ(Meloe proscarabaeus) Image credit:G. Venturini

甲虫が「媚薬」の効能があると知っていた可能性

 3つ目の仮説は、ダ・ヴィンチがツチハンミョウの用途をすでに知っていたというものだ。

 ツチハンミョウは「カンタリジン」という刺激性の毒を分泌する。

 カンタリジンは、少なくとも2000年前から、中国、ペルー、南アフリカ、地中海沿岸など世界各地の人々が、炎症やイボ、腫瘍の治療薬として使用していた。

 さらに、乾燥させた虫の粉を飲むと、カンタリジンが尿として排出される際に尿道の血管を広げて充血させ、性的興奮に似た症状を起こすことから、男性の媚薬としても使われていた。

 イタリアでも、ダ・ヴィンチが生きたルネサンス期を通じて民間療法に使われていた。

 ダ・ヴィンチ研究の第一人者カルロ・ヴェッチェ氏によると、ダ・ヴィンチは1491年にドイツで出版された博物誌(Hortus Sanitatis)を持っていた。

 博物誌には、ツチハンミョウの仲間が皮膚の刺激剤や媚薬として使われることが書かれており、ダ・ヴィンチは媚薬の効能を知っていたと考えられる。

 さらにダ・ヴィンチ自身、男性の生殖器の仕組みに関心を持ち、勃起に血液が関わることを観察して記録していた。

 別のノートであるアトランティコ手稿には、媚薬の実際のレシピまで残している。

 ただし、ボローニャ氏とジッリ氏は、3つの説のどれか1つに絞ることはできないとして、結論を出していない。

 水利工学の研究メモに描かれた小さな甲虫は、好奇心旺盛で何にでも興味を持った万能の天才の頭脳の広さを後世に伝えているかのようだ。

References: DOI.10.1038/s40494-026-02896-8 / Leonardo da Vinci Was Obsessed With Flight. So Why Did He Draw a Wingless Beetle Next to His Water Engineering Notes?

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この記事へのコメント 9件

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  1. なんか…偉人ってふとメモしたこともこうして仮説色々立てられて大変だなって

    • +15
  2. カンタレッラの正体だっりして

    • +3
  3. カンタリジンって発毛剤としても使われていたらしいよ
    ちょっとツチハンミョウ探して来るわ

    • +4
  4. 触角の有無、口髭の有無、頭の形、腹の模様
    どう見ても全く違う虫

    精密さを誇るダ・ヴィンチがこんな間違いをするわけがない

    • 評価
  5. 紙が貴重な時代だったので、ふと思いついたアイデアや目に留まったものをごちゃまぜに描いたのかな。あとで整理しようと。

    そういえば昔Evernoteってはやりましたね。
    時代は変われど考えることは同じなのかもしれませんね。
    人の記憶は曖昧で消えやすいですから。

    • +4
  6. 頭の中にあるものをアウトプットしてい途中で昆虫見つけて、「おっ珍しい虫おる」みたいな感じでアウトプットそっちのけでスケッチした感じかな。常人なら集中力ないよね。で終わるけど多方面で極めてるから大騒ぎね。

    • +5
  7. 天才ダ・ヴィンチについては凡人である自分は全ての解説が当てはまる気がしてしまうな。
    それより薬とか毒とか誰が実証したのか気になる。
    自分の想像では奴隷とか捕虜にこれ食べて何も無ければ開放するチャンスを与えるとしたり、体の変化を細かく報告したりすると報奨金がたっぷりもらえるとかした積み重ねだろう思えけど、結果だけは有難く受け取っているのだと思う。

    • +2
  8. オオツチハンミョウに小さい羽虫?ダニ?が何匹もいるのが気になる

    • 評価
  9. なにも説明がないなら多分スマホで写真撮って後でちゃんと調べよっとって感じで、綺麗な虫ちゃちゃっとスケッチしただけって考える方が私は歴史上の人物に少し人間味みたいなのがあって、良い感じがする

    • +1

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