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スタートレックに登場するワープを利用した戦術を物理学者が検証。効果は予想以上だった。

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(著)

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スタートレックのスターゲイザー号 Image credit:Paramount Pictures
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 アメリカのSFドラマ『新スタートレック』には、ワープを利用した架空の宇宙戦闘機動戦術「ピカード・マニューバー」が登場する。

 光やセンサー信号よりも宇宙船が速く移動することで、敵のセンサーには「古い位置の残像」と「実際の現在地」の2つの映像が同時に映し出される。それにより、敵を混乱させ、誤射を誘うという戦術だ。

 ブラジルの物理学者が、この戦術を時空図を用いて検証した。

 宇宙船が光より速く動けると仮定して計算したところ、特定の瞬間に、敵には宇宙船の像が複数見えることが判明した。

 しかも特定の瞬間は、劇中で描かれた2つではなく3つの像が見えるため、さらに複雑に敵を惑わせる効果があることが示された。

 この研究成果は、プレプリントサーバー『arXiv』(2026年8月22日付)で公開され、『American Journal of Physics』誌に掲載される予定だ。

参考文献:

スタートレックのワープ戦術、ピカード・マニューバー

 1987年に放送された『新スタートレック』の第1シーズン9話「The Battle」の中で、ジャン=リュック・ピカード艦長が編み出した「ピカード・マニューバー」という戦術が登場する。

 自船であるスターゲイザーのシールドがダウンした絶体絶命の状況で、敵の宇宙船に接近するために編み出されたものだ。

 この戦術は、宇宙船が敵に向かって光より速いワープ(超光速航法)で突進し、至近距離で急停止して攻撃を仕掛けるというものだ。

 光より速く動く宇宙船は、自分が出した光を追い越してしまう。そのため、ワープ前の位置から出た光と、停止した位置から出た光が同時に敵に届き、敵の目には2か所に宇宙船がいるように見える。

 劇中では、敵が間違った方の像を撃ち、ピカード艦長が戦いに勝った。

物理学者が研究中にスタートレックの戦術の原理に気付く

 ブラジルのABC連邦大学の物理学者であるニコラス・デ・アギアル・アルヴェス氏は、素粒子物理学の現実的な問題に取り組んでいた。

 光が真空よりも遅く進む水などの物質の中を、粒子がどのように移動するかを計算していたのだ。

 光より速く動くという状況は、SFの中だけの話ではない。

 水の中を進む光より速く動く粒子は現実に存在し、チェレンコフ放射と呼ばれる青い光を出す。

 アルヴェス氏が図を描きながら思考を整理していたところ、この状況が大学院生時代に見たスタートレックの戦術と同じ原理であることに気がついた。

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スタートレックのスターゲイザー号 Image credit:Paramount Pictures

劇中を上回る3つの像が生み出される

 現在の物理学では、質量を持つ物体は光より速く動けない。

 そこでアルヴェス氏は、宇宙船が光より速く動けると仮定し、時空図を使って軌道を調べることにした。

 時空図は、横軸に位置、縦軸に時間をとり、物体の動きと光の進み方を1枚に描き表す図である。

 宇宙船が光より速い一定の速度で進み続ける場合、敵に見える像は最大2つにとどまる。

 ところがピカード・マニューバーでは、宇宙船はまずワープの速度まで加速し、敵の近くで停止するために減速する。

 この2回の速度変化が重要な違いを生む。

 加速と減速を行うことで、特定の瞬間に敵には3つの像が見えることが判明したのだ。

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左: 細い灰色の線は、フェレンギの船からそれぞれの時点で何が見えるかを表している。時間帯によっては、スターゲイザーの像が3つまで見えることになる。右: 同じ動きをもう一度繰り返した場合で、スターゲイザーの像は5つまで増える。Image credit: Níckolas de Aguiar Alves

敵の目を欺く宇宙船の正体

 アルヴェス氏によると、この3つの像にはそれぞれ明確な違いがある。

 1つ目は戦法を始める前にとどまっていた宇宙船の像だ。

 2つ目は戦法を終えて敵の近くで停止した後の宇宙船の像である。

 3つ目は、戦法の最中に移動している宇宙船の像だ。

 光の到達時間のズレにより、この移動中の像は時間が逆向きに進むように見えるという。劇中では、この移動中の像が描かれていなかった。

 論文で示された例では、3つの像が同時に見えるのは約4秒から7秒の間だけであり、その前後は1つか2つの像になる。

 アルヴェス氏は番組が像の数を過小評価していたものの、根底にあるアイデアを見事に捉えていると称賛している。

References: Doi.org/10.48550/arXiv.2608.23624

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この記事へのコメント 25件

コメントを書く

  1. 反応差を利用した初見殺しだけど戦法が知られてしまうと幾つに見えようが関係無くなってしまうね

    • +1
  2. ジャンリュックピカード船長これにどう答えるの?

    • -2
  3. 何もかもスポックのおかげですからな。

    • +3
  4. スターゲートやゼノサーガの世界観では通用しない戦術ってことですね。

    • +2
  5. 普通にワープできる時代にこれくらいのことが画期的な初見殺しになるわけないよ

    • -3
  6. 砲弾とか、そういった兵器でなくても岩塊を敵艦内にワープアウトさせたほうが効果的じゃね?
    そもそもワープアウトした座標になんかあったらどうなるの?

    • 評価
    1. 物体の転送が可能ならステルス艦同士で先に見つけたら勝ちって潜水艦みたいな戦いになるだろうね

      戦艦の砲撃戦というスタイルである以上、ワープできるのは装置を搭載した艦艇のみ、かつ諸般の問題は解決できていると考えるのが妥当だね

      • +2
    2. シリーズの中で爆発物を送り込むのはあるよ
      基本はシールドで防いでいるし、通常は転送室しか受け付けない
      さらに感染や毒物の除去、爆発物の拒否も(癌なども通常の転送で処理してる)
      あるいは再転送で船外投棄もある(仕掛けられたやつに通信バッジをつけて飛ばすとか)
      ワープしてくる魚雷もあったな

      向かい合いの戦闘とかおかしなことはあるけどね

      • +2
    3. スタートレックのワープは、移動速度が光速を超えるというもので、物体がA地点からB地点へ瞬時に位置を変えるようなものではないんだよね。光速以上の速度だけど必ず移動するので、外壁などをすり抜けていきなり敵船の中に突然登場ってのはない。なお、光速以上の速度で飛ぶミサイルみたいな兵器は登場する。

      • 評価
  7. 宇宙船が水やガスなどの物質で満たされた宇宙空間を進む場合、
    理論上、光より速く進むことが可能であるということですね。(チェレンコフ放射の例)
    そして加減速をうまく使うと、敵から見える宇宙船像を3つや5つに増加可能であると。
    敵からすると、突然宇宙船が現れ、その後、光が追い付くので、
    過去の宇宙船の像が同時に或いは遡って次々と表れてくるのですかね。
    実現性はともかく、ビジュアル的には面白そうではありますね。

    • +1
  8. その技術レベルに達して、戦争なんぞしてる
    くだらない脳みそからまず改造しろよ

    • -16
  9. 始動、途中、停止で速さが違うせいで、受け手側には順番通りに見えないんだな
    プロペラや扇風機が止まる前、逆回転に見える時間があるけどあの感じかな
    いやーこれは役に立つぞ

    • +2
  10. スターウォーズ8でワープ特攻攻撃あったけどあれはちゃぶ台返しの卑怯な攻撃だと思う。いやマジであれOKにするとスターウォーズの過去の戦闘が全部おかしくなる特に4と6がね
    デス・スターにぶつけてしまえば良いわけだし・・・・

    • +1
    1. SWは初期の三部作(4,5,6)以外は要らない子だから・・・

      • 評価
    2. スター・ウォーズのハイパースペース航行(ジャンプ)は設定的には(正しく準拠していれば)けっこうシビアな設定で

      ・ジャンプ前に緻密な計算が必要(一般的には信頼性・安全性が確保された航路しか利用しない)
      ・近くに大質量があると安全装置が働いてできない or ジャンプが解除される
      ・それを応用してジャンプを妨害する(逃走を防ぐ)装備がある(インターディクター艦)
      ・ハイパースペースは別次元であり、リアルスペースには影響しない
      ・ただしハイパースペースにいる船はリアルスペースにある質量等の影響で破壊される危険性がある
      ・そもそもでハイパースペースに入る前と出た後はさほどスピードは出ていない(ハイパースペースに入っていれば前述の通りハイパースペース側だけが壊れる)

      …なのでEP8のアレは考えたら負け

      • 評価
  11. 超光速分身の術!
    質量を持つ残像!
    トンデモSF忍法とかはかどりそう
    でもそんな急激な加減速を繰り返してると乗員のワープ酔いとか大変そう

    • 評価
  12. SF作品では当たり前の技術として「人工重力」が扱われているが、実はワープよりも遥かに難しいのではないかと思う。

    • +1
  13. という事は、分身の術を使える忍者は光速を超えてたのか?

    • 評価
  14. 偽科学者のワシから言わせると、時空を破壊しかねない行為で断じて容認できない

    • -1
  15. こういう話の初出典は宇宙船艦ヤマトなんですかね?もしそうなら松本零士さんのアイディアはスゴイですね。
    ワープや瞬間物質移送器とか最初見た時ワクワクしたなー

    • 評価
    1. 最初に思いついたのは昔のSF作家なんじゃないかな。宇宙モノSFは戦前からあるしね。1960年代ぐらいになると、小説ならペリーローダンとかでじゃんじゃん使われてたし、スタートレックの初代シリーズでも「SFでは当たり前の小道具」として出てきてる。

      • 評価
  16. あの時代のなっても毛根再生はできないのか

    • +2
  17. 雑誌が潰れて中断した星野之宣のStar Fieldでは主役艦(異星人の遺物)の超装甲と短距離ワープによる時空の歪みで敵艦を引き裂くのが唯一有効な攻撃手段だった

    • 評価
  18. 敵艦座標に砲弾を転移させるとどうなるかな

    • 評価
  19. エンタープライズ号の主砲はレーザー砲なんだが敵と遭遇して打ち合いになった時被弾して他の衛星に軟着陸したりするわけだが、あの主砲の威力が1発で地球が吹き飛ぶ威力と聞いた時は波動砲が玩具に感じたな
    (あのドラマ設定は面白いけどPCの時代遅れ感はどうにもならないのかな)

    • 評価

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