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ティラノサウルスの成体の連続した足跡を初めて発見。6650万年前の歩行の痕跡

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(著)

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発見されたティラノサウルスの足跡 Image credit:Falkingham et al., J. Vertebr. Paleontol., 2026
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 アメリカのノースダコタ州で、成体のティラノサウルス・レックスが歩いた跡が史上初めて見つかった。

 約6650万年前、巨大隕石の衝突で恐竜が絶滅する少し前の地層に、長さ約1mの巨大な足跡が4つ、約7mにわたって並んでいたのだ。

 見つけたのは高校の理科教師で、アメリカとイギリスの研究チームが足跡の間隔を調べたところ、歩幅は約4m、このとき歩いていた速さは人間の早歩きほどだったとわかった。

 この研究成果は『Journal of Vertebrate Paleontology』誌(2026年9月8日付)に掲載された。

史上初、ティラノサウルス成体の歩行痕跡を示す足跡

 恐竜の代名詞ともいえるティラノサウルス・レックスの骨格の化石は世界各地で数多く見つかっている。

 だが、実際にどうやって大地を歩いていたのかを示す証拠は、これまでほとんどなかった。

 成体のティラノサウルスの足跡は、ニューメキシコ州とモンタナ州で1つずつ見つかっているだけで、どちらも1個だけの足跡だったため、歩いている様子まではわからなかった。

 2025年、モンタナ州との州境に近いノースダコタ州南西部で、成体のティラノサウルスが続けて残した足跡の化石が史上初めて発見された。

 高校の理科教師でアマチュアの化石ハンターでもあるケント・ハップス氏は、ひざの手術を受けたあと、歩きやすい道を探して谷を移動していた。

 すると、地面から突き出た奇妙な岩に気づいた。三つに分かれた巨大な指の形に見えたため、数km離れた場所で発掘していた友人の古生物学者、タイラー・ライソン氏にすぐ連絡を入れた。

 足跡は、アメリカのデンバー自然科学博物館とイギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学の研究チームによって調べられた。

 すると、ティラノサウルスの成体が歩いた痕跡であることが確かめられたのだ。

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ドローンで撮影したティラノサウルスの足跡の全景。右から順に左足(L1)、右足(R1)、左足(L2)、右足(R2)と4つ並んでいる。Image credit:Falkingham et al., J. Vertebr. Paleontol., 2026

長さ約1mの足跡が4つ、約7mにわたって並んでいた

 ライソン氏は最初、ハップス氏の報告を疑っていた。

 ノースダコタ州、サウスダコタ州、ワイオミング州、モンタナ州にまたがる白亜紀後期の地層が露わになった「ヘルクリーク累層」は恐竜の骨が大量に出ることで有名だが、足跡が残ることはめったにないからだ。

 ライソン氏は「1つでは偶然かもしれない。3つ見つかれば確信できる」と言い、足跡が続いているはずの場所に印をつけた。

 掘り進めると、そこから本当に3つの足跡が現れ、さらに4つ目も出てきた。

 こうして確認された足跡は、全長約7mにわたって並んでいた。

 足跡1つの長さは約1mあり、炭酸カルシウムによって固められて残っていた。

 研究チームは、足跡がとても大きいこと、指の形が細いこと、周辺の地層からティラノサウルスの骨の化石が数多く見つかっていることから、足跡の主として最も可能性が高いのは成体のティラノサウルスだと結論づけた。

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B:上が高さを色で表した3Dモデル、下が実際の色に近いモデル。マス目は1m四方。C:右足の足跡(R2)の横にしゃがむタイラー・ライソン氏。足跡の大きさがわかる。。Image credit:Falkingham et al., J. Vertebr. Paleontol., 2026

歩幅は約4m、この時の歩く速さは人間の早歩き程度

 歩幅と足の大きさから算出された歩行速度は、秒速1.5〜2m(時速約5.4〜7.2km)で、人間の早歩きとほぼ同じスピードだった。

 また、足跡と足跡の間隔から、歩幅は約4mだったとわかった。

 ただし、いつもこの速度でティラノサウルスが歩いているわけではない。

 この個体がこのとき歩いていた速さであって、獲物を追うときのスピードとは異なる。

 また、足跡は激しく風化しているため、算出された速度もおおよその値になる。

 とはいえ、変わった歩き方をしていたわけではなさそうだ。

 2021年にオランダのアムステルダム自由大学などの研究チームが、尾の振れ方から計算した結果、ティラノサウルスの一般的な歩行速度は秒速1.28mで、今回の足跡から出た値に近い。

 足跡が刻まれた約6650万年前は、巨大隕石(チクシュルーブ衝突体)が地球に衝突して恐竜が絶滅する、およそ50万年前にあたる。

 地球の長い歴史から見れば、ほんの直前である。

 やがて訪れる絶滅を知るはずもなく、ティラノサウルスは、人間の早歩きほどの速さで大地を闊歩していたのだ。

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Image by Istock /  JoeLena

好奇心が生んだ大発見。足跡は博物館へ運ばれる

 論文で報告された足跡は4つだったが、その後の発掘で5つ目も見つかった。

 ただし現場は急な斜面で、粘土質の土砂が厚く積もっているため、これ以上掘り進めるのは難しいとされている。

 足跡のうち3つは現場で保護され、2026年内にはヘリコプターでデンバー自然科学博物館へ運ばれる予定だ。

 ハップス氏は、科学は好奇心と情熱、そして注意深い観察から始まると生徒たちに教えてきたが、自分がこれほどの発見をするとは想像もしていなかったという。

 6650万年前に刻まれた4つの足跡は、骨の化石だけでは見えなかったティラノサウルスの歩く姿を、我々が頭に思い描くヒントをくれた。

References: DOI.10.1080/02724634.2026.2706201 / Denver Museum of Nature & Science discovers first-ever adult T. rex trackway | EurekAlert!

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