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マンホールのふたが盗まれる事案が続出。安全ネットが張られる(パキスタン)

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(著) (編集)

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image credit: X @MaryamNSharif
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 マンホールの蓋の盗難は日本でも問題になっているが、パキスタンでも深刻な社会問題となっていという。

 転売目的の盗難も問題だが、盗まれて蓋がなくなったマンホールは、通行人や車両にとっても危険極まりない落とし穴となる。

 そこでパキスタン東部のパンジャーブ州では、「マンホールの内部にネットを張る」という、一風変わった安全対策が進められている。

 2026年9月2日には、パンジャーブ州のマリヤム・ナワズ・シャリフ州首相自身が、SNSにこの取り組みを紹介する映像を投稿した。

 だがこのネットの、とても「安全」とは思えないビジュアルに、世界中からつっこみが殺到する事態になっているようだ。

マンホールにネットを張って転落防止に

 2026年9月2日、パンジャーブ州のマリヤム・ナワズ・シャリフ州首相が、安全ネットを取り付けたマンホールの画像を自身のXで紹介した。

 そこには、次のようなメッセージが書かれていた。

パンジャーブ州全域で、すべての市民、とりわけ罪のない子供たちの命と安全を守るため、開いたマンホールの内部への安全ネットの設置を急ピッチで進めています。

すべての地区行政と自治体には、あらゆる通りや地域、幹線道路のマンホールに、高品質の安全ネットと耐久性のある蓋を直ちに設置するよう厳しく指示しました。

市民の安全にかかわることに、怠慢は一切許しません。これが盗難にも強い解決策となることを願っています!

 その「安全ネット」とは、マンホールの内側に紐テープを格子状に張り巡らせたものである。どう考えても「安全」とは到底思えないシロモノに見えるのだ。

 この、現職の大臣本人による、冗談か本気か反応に困ってしまう投稿には、案の定たくさんのツッコミが殺到している。

  • いっそのこと、トランポリンでも設置したほうがいいんじゃないか……
  • なんてこった。これ、冗談だよな?
  • 笑った。これで問題が解決すると本気で思ってるのか
  • こんなの長持ちしないよ。本当の解決策は、盗まれないようにPVCや再生素材でマンホールの蓋を作ることだ
  • あなたは豪華な航空機で飛び回っているのに、一般市民の子供たちにはこんな一時しのぎの対策なのか。もしあんたの息子が落ちる可能性があったとしても、こんな仮設のネットで覆うのか? 国民に答えてくれ
  • ぜひこの技術の特許を取って、パキスタンだけで大切に使ってください。インドのどの都市にも、このハイテクAI最先端工学による解決策を使ってほしくありませんから(インド人コメ)
  • この国には、建築家や都市計画家、デザイナーが足りないんだ。パンジャーブ州に世界水準の建築・都市計画の大学をいくつか設立したらどうだ?
  • くだらない。なぜ政府は鉄の蓋を盗む泥棒や、それを買い取る業者を捕まえようとしないんだ?
  • パンジャーブ州首相は、教育、工学、建設の各分野に恥をかかせ続けているよ
  • そもそも、慎重にネットの上に立つ場合と、上から人が落ちてくる場合では、かかる力がまったく違う
  • 誰かに完全にだまされて、それをそのまま信じちゃったんだよね
  • アッラーがあなたに報いてくださいますように。アーミーン
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image credit: X @MaryamNSharif

法律の整備も進めているが…

 パンジャーブ州では以前から、マンホールの蓋や、それを支える金属部品を狙った盗難が相次いでいる。

 2025年12月時点で、新しいマンホールの蓋は鉄製リングを含めて8,000~12,000パキスタン・ルピー(約4,400~6,600円)ほど。

 特に狙われるのが最大30kgほどの鉄製リングや、コンクリート製の蓋に使われている鉄材で、盗まれた金属が工場や金物店などへ流れる問題も指摘されていた。

 一応、州当局も決して手をこまねいているわけではないという。

 2026年2月3日、マリヤム州首相は記者会見で、マンホールの蓋をめぐる問題に言及している。

パンジャーブ州では、マンホールの蓋を盗む者、それを売る者、買う者に1~10年の刑を科す法律を導入しようとしています。

蓋が盗まれたことで誰かが死亡した場合には、10年の禁錮刑と300万~500万ルピー(約166万~277万円)の罰金が科されます。

私たちは朝にマンホールの蓋を取り付けても、夜には盗まれてしまいます。どうか蓋を盗まないでください

 その後、2月23日には「パンジャーブ公共公益インフラ保護条例2026」が承認された。その罰則の内容は以下の通り。

  • マンホールの蓋や街灯などの公共設備を盗んだ場合
    禁錮刑:1~3年
    罰金:20万~300万パキスタン・ルピー(約11万~166万円)
  • 許可なく撤去したり、購入・販売したりした場合:
    禁固刑:1~3年
    罰金:50万~300万パキスタン・ルピー(約28万~166万円)
  • 盗品を購入・加工したスクラップ業者や圧延工場など:
    禁固刑:最大3年
    罰金:100万~1,000万パキスタン・ルピー(約55万~554万円)

 さらに窃盗が原因で死亡者が出た場合には、この条例に加えてパキスタン刑法の関連規定も適用される。

 盗む側だけを取り締まるのではなく、盗まれた金属を売買する仕組みそのものを断とうという対策が立てられてはいるのだ。

人が落ちないよう安全ネットを設置

 いくら罰則を強化しても、蓋が盗まれた直後の道路に、危険な穴がポッカリ開いたままになることまでは防げない。

 そこで5月、マリヤム州首相は州内にある約84万か所のマンホールの蓋の下に、安全ネットを設置するよう指示した。

 7月にはパンジャーブ上下水道局(PWSA)が、既存・新設を問わず州内すべての下水マンホールについて、蓋の下への安全ネットの設置を義務化。

 今では3,000か所以上にネットやメッシュが取り付けられ、20万か所には新しい耐久性の高い蓋が設置され、排水設備の清掃や整備も進められているとのこと。 

 この安全ネットとは、認可されたナイロン素材を使用した円形の構造で、「最大300kgの重量に耐えられること」が条件となっているそうだ。

 だが大臣の投稿した画像では、300kgの荷重に耐えられるようには見えないのが、ちょっと不安なところではある。

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 なお、パキスタン南部のカラチでも、2026年7月から上下水道公社(KWSC)により、マンホールの安全ネットの設置が始まっている。

 下の動画がその様子だが、幅広の帯を格子状に組み、金具で固定する構造だ。実際に荷重試験も行われ、最大180kgに耐えられることが確認されたという。

 ただし、メンテナンスのたびに外さなければいけないのが欠点だそうで、何回もつけ直していたら、内壁がボロボロにならないか心配だ。

Facebookで開く

それでも事故はまだ発生する

 だが、約84万か所ものマンホールすべてに短期間で対策を施すのは容易ではなく、現在も事故は起き続けている。

 9月3日にはパンジャーブ州フォート・アッバースで、学校から母親と帰宅していた12歳の少女が、蓋の壊れたマンホールに転落して負傷した。

 ただし、この事故現場の蓋は盗難に遭ったわけではなく、過積載車両によって壊れたものらしい。

 つまり、危険なマンホールが生まれる原因は、盗難だけではないのである。

 また、9月1日にはラホールで、マンホールが開いたまま放置されていたことをめぐり、上下水道局の幹部が職務停止処分となった。

 州当局は、開きっぱなしになっているマンホールについても、「一切容認しない」とする方針を示している。

蓋そのものを再生プラスチックにする動きも

 安全ネットとは別に、蓋そのものの素材を変えようという動きも始まっている。

 パンジャーブ州の州都ラホールの上下水道局(WASA)は7月、100%再生プラスチック複合材を使ったマンホールの蓋を調達する入札を実施した。

 予定額は4,874万パキスタン・ルピー(約2,700万円)で、黒とグレーの2種類に当局のマークを刻印する仕様になるそうだ。

 さらに9月1日には、マリヤム州首相が道路沿いの排水口に再生プラスチック製の蓋を使用するよう関係当局に指示しており、金属製とは異なる素材の蓋を導入する動きも広がっている。

 これが盗難対策だという公式の発表はないが、 鉄などをスクラップとして転売することが盗難の目的なら、金属としての価値が低い再生プラスチック製の蓋に替えることは、盗難の動機を減らす効果も期待できそうだ。

蓋のないマンホールをスマホで通報するアプリも

 カラチのみを対象としたものだが、「Dhakkan(ダッカン、ウルドゥー語で蓋)」というAndroidアプリを開発した市民もいた。

 これは蓋がない、壊れている、あるいは開いたままになっているマンホールを見つけた市民が、その場で通報するためのものだ。

 アプリを開くとカメラが起動し、危険なマンホールを撮影するとGPSから位置情報を取得。

 写真や位置情報などを添えたメールを、カラチ上下水道公社(KWSC)の苦情受付窓口へ送ることができる。

 これは民間で開発されたアプリだが、マンホールをめぐる安全問題に対し、市民側からもこんな解決策が生まれている。

 裏を返せば、当てにならない当局に業を煮やして…という見方もできるかもしれないが。

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日本でも盗難・転落防止の対策はとられている

 日本でも、銅線や銅板、溝やマンホールの蓋などの金属類を対象とした窃盗被害は全国的に増加している。

 2026年6月には愛知県豊田市で、ラリージャパンのために設置されていたデザインマンホール蓋3枚が盗まれ、市が残る蓋をすべて撤去する事態となった。

 各都道府県の警察も、マンホールや側溝の蓋を含む金属類の盗難について、注意を呼びかけているところだ。

 なお、日本のマンホール蓋には、簡単に開けられないようロック機能を備えたものもあり、盗難防止に役立っているという。

 また転落防止対策もとられており、大阪府寝屋川市では、マンホールの深さに応じて転落防止ネットや転落防止はしごを設置するよう定めている。

 また、新潟県柏崎市では、耐荷重4.5kN(キロニュートン、約460kgの重さを静かにかけた場合に相当)以上のステンレス製転落防止装置を採用しているとのこと。

 簡易的な転落防止ネットは通販でも購入できるようなので、庭のマンホールのメンテナンス時など、一時的にペットが落ちるのを防止するためには使えそうかもしれない。

References: Pakistan puts safety nets inside manholes as cover thefts turn into a public safety crisis / What Is Pakistan's 'Dhakkan' App? Punjab CM Maryam Nawaz Sharif Urges People To Support

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