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タイで新種の「悪魔の花」が発見される。光合成をせず菌類から栄養を奪う寄生植物

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(著)

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タイで発見された新種の花 Image credit:Neeranuch Taosiri
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 緑の葉を広げて太陽の光を浴びて光合成をするという植物の常識を覆す、新種の植物が発見された。

 タイのチュラロンコーン大学などの植物学者たちがトーンパープーム国立公園の落ち葉の下で見つけたのは、光合成をせず地中の菌類から栄養を奪う黒色の寄生植物だ。

 頭部に角が生えたような姿から「悪魔」を意味するティスミア・ダエモナと名付けられた。

 だが発見された時点で、生息地は東京ドームの敷地ほどの狭さで、個体数は50株にも満たないため、すでに絶滅の危機に瀕している。

この研究成果は『PhytoKeys』誌(2026年8月17日付)に掲載された。

参考文献:

タイの国立公園で発見された「悪魔の花」

 2025年5月、タイ西部のカンチャナブリー県にあるトーンパープーム国立公園で、チュラロンコーン大学やプリンス・オブ・ソンクラー大学の植物学者たちが未知の植物を発見した。

 標高約970mの山地林で、小さな竹が混ざった日陰の落ち葉の下にひっそりと生えていたのはまるで昆虫のような、地球外生命体のような奇妙な姿をしている。

 花は大部分が黒みを帯びていて厚みがあり、ドーム状になった頭部には触角のような3本の突起が伸びている。

 黒いドーム状の下からは、赤みがかったオレンジ色の厚い花弁が3枚伸びていて、悪魔の光る目を思わせる。

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Image credit:Sahut Chantanaorrapint

光合成をせず地下の菌類から栄養を奪う寄生植物

 この植物は、「タヌキノショクダイ属」という植物のグループに分類される。

 このグループの植物は「妖精のランタン(fairy lantern)」とも呼ばれるが、最大の特徴は葉緑素を持たないことだ。

 葉緑素がないため光合成で自ら栄養を作り出すことができず、太陽の光をまったく必要としない。

 代わりに地中の菌根菌という菌類のネットワークに入り込み、そこから栄養を奪って生きる「菌従属栄養植物」なのだ。

 光を必要としないため、一生のほとんどを落ち葉の下などの地中で過ごす。

 花や実をつける短い期間だけ地上に姿を現すため、人間の目で見つけることが非常に難しい植物である。

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Image credit:Sahut Chantanaorrapint

DNA解析で新種と確認。近縁種とは異なる独特の生態

 研究者たちは、採取した標本を顕微鏡で詳しく調べ、さらにDNAを抽出して世界中のサンプルと比較した。

 その結果、全く新しい種であることが確認された。

 DNA解析によると、最も近縁とみられるのは、遠く離れたボルネオ島に生息する種だった。

 しかし、ボルネオ島の近縁種が青緑色の花びらを持っているのに対し、タイで発見された今回の新種は漆黒にオレンジ色の模様という全く異なる外見をしている。

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Image credit:Tosak Seelanan

 この不気味で謎めいた姿から、研究チームはこの新種の花を「ティスミア・ダエモナ(Thismia daemona)」と名付けた。種小名の「ダエモナ」は、ラテン語のdaemon(デーモン:悪魔)に由来する。

 また、この新種が属するのは、タヌキノショクダイ属の中でもゲオミトラ(Geomitra)と呼ばれる少数のグループで、これまでは年間を通して雨が多い低地の熱帯雨林にしか生息しないと考えられていた。

 標高が高く、季節によって乾燥するタイ西部の環境に適応して生きていたことは、植物学者たちにとって大きな驚きだった。

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Image credit:Sahut Chantanaorrapint

生息地は東京ドーム1個分。すでに絶滅寸前の危機

 ホラー映画から抜け出してきたような新種の発見は素晴らしいニュースだが、喜んでばかりはいられない。

 ティスミア・ダエモナの生息地は、東京ドームの敷地ほどしかない0.05km²の範囲に限られている。

 現在確認されている個体数は50株未満しかなく、発見された時点ですでに絶滅の危機に直面しているのだ。

 発見場所は国立公園に指定され保護されているものの、観光客が多く訪れる人気スポットでもある。

 人が無意識に足を踏み入れるだけで、この希少な植物の生息環境が破壊されてしまう危険性がある。

 そのため、国際自然保護連合(IUCN)の基準に従い、野生での絶滅の一歩手前を意味する「近絶滅種(CR)」に暫定指定された。

 光合成を行わず地中の菌類に完全に依存するこの植物が生えていることは、その森の土壌が手つかずのまま健康に保たれていることを示している。

 エイリアンの置き土産のようなユニークなこの植物を守るためには、地域の人々と協力し、この植物を支える豊かな森の生態系全体を保護していく必要がある。

References: DOI.10.3897/phytokeys.278.202868

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この記事へのコメント 21件

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  1. 不気味かな
    人の目や生物からも隠れひっそり生きてるし
    むしろかわいい植物だと思うぞ
    例えばリュウゼツランはどうだ見て見ろという
    大胆かつ賑やかに咲いてる

    • +6
  2. これまた不思議なやつだな〜取っ手がついてるみたい

    • +12
  3.  記事中の「人間の目で見つけることが非常に難しい植物」というところに期待して他の地域でもはえてはいるけど見つからないんだったらいいな。 といいつつ現在の地域での生育条件を詳しく調べて絶滅しないように環境を維持する方向も期待です。 てっぺんの画像は花とあるけど、ほんと不思議な形……

    • +10
  4. 元々ほとんどの植物は空気中にいくらでもある窒素を自分で採らないで菌や微生物から略奪してる悪魔なんだから目くそ鼻くそよ

    • 評価
    1. 光合成する植物だと菌側も植物が光合成で生み出す養分を
      利用してる場合が多いから持ちつ持たれつかも知れない

      この植物の場合は菌側に何かしらのメリットがあるのか、
      一方的な寄生関係なのかは気になるところ

      • +8
    2. 窒素固定菌は窒素固定に必要なエネルギーを自力では生産できず植物の光合成に依存しているから持ちつ持たれつ。菌根菌は糖類の供給を宿主に依存する代わりに岩石から無機物を分解して宿主に提供している。この共生関係にただ乗りしているのがこの寄生植物。

      • +9
  5. 3本の触角みたいなものが何なのか興味があったので調べてみたのですが
    説明では、めしべやおしべの周りの部分みたいで、おしべではないみたいなんですよね
    Thismia neptunis だと水滴がついていて羽虫が根元に張り付いている写真があったりします
    食虫植物ではないので、虫媒花であって虫を引き寄せる蜜的なものなんでしょうね
    こちらの写真を見る限りでは、筒花の奥にめしべがあって、その周りの色が変わっている部分がおしべのようです

    • +8
  6. うちの県にも生息地が2か所しか見つかってない希少植物があるんだけど、「希少」と聞くと欲しくなるバカがいるんだよな
    育てられもしないのに
    バカな人類に絶滅させられないように管理頑張って

    • +24
  7. タヌキノショクダイは日本(本州・四国・九州)に生息していますので、「タヌキノショクダイ属は、年間を通して雨が多い低地の熱帯雨林にしか生息しないと考えられていた」というのは間違っています。

    • +4
  8. クマバチみたいなクールで可愛らしい彩りとフォルム

    • +2
    1. 愛嬌あるよな。ずんぐりしてて可愛いと思う

      • +3
  9. ホタルっぽいからそこまで嫌ではない感じがするけど

    • +7
  10. そんなに狭いとなると絶滅じゃなくて、新しくできた種ということはないのかな

    • +3
    1. 「実をつける」とあるし、これからこの種が生育地を広げていったらと思うとわっくわく!
      それにしても「狸の燭台」とか「妖精のランタン」とか、植物学者のネーミングセンスが素敵すぎる
      「大犬のふぐり」なんかも・・・笑

      • +2
  11. 虫にもみえるし、キノコっちゃキノコっぽくも見える。見たこともない造形

    • +5

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