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光合成せず菌類から栄養をもらう幽霊のような新種の植物が発見される

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 日本の美しい森林の片隅で、どことなく幽霊を思わせる新種の植物が発見されたそうだ。不思議なことにその幽霊草は、植物でありながら光合成をしない。

 「ギンリョウソウ(Monotropastrum humile)」は、東アジアから東南アジアにかけて広く見られる腐生植物で、幽霊を思わせる姿から「ユウレイタケ」とも呼ばれる。

 幽霊を思わせるのは、その葉に緑色の色素がないからだ。光合成をしないかわりに、森の菌類と協力して「菌根」を形成し、そこから栄養をもらっている。

 これまで世界に1種だけとされたギンリョウソウだが、このほど日本でピンク色の花びらが特徴の新種が発見され、「キリシマギンリョウソウ(Monotropastrum kirishimense)」と名付けられた。

植物と菌類の根が織りなす森のネットワーク

 森の中には菌類と植物の根で織りなされた広大なネットワークが張り巡らされている。それが植物の根と菌類とが作る共生体「菌根」だ。

 このネットワークは栄養分を運ぶ高速道路として機能すると同時に、電気信号や化学信号による植物の通信網としての役割も果たしている。

 そのおかげで、栄養の多いところから少ないところへと資源を分配して森林全体を強化したり、植物が外敵の接近を知らせあったりと、私たちが気づかない森の絆を育むことができる。

 このサービスの見返りとして、植物は光合成で作り出した炭化水素を協力関係にある菌類におすそわけする。

 ところがギンリョウソウは、この持ちつ持たれつのはずの関係にちゃっかりタダ乗りしている。光合成の養分をネットワークに提供することなく、菌類から栄養分だけは掠めとっているのだ。

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(a–c) キリシマギンリョウソウ、(d–e) ギンリョウソウ、(f) ベニバナギンリョウソウ (ギンリョウソウの色変わり個体) 。矢印は花筒から離れて広がった萼片を示す。スケールバー:3cm / image credit:Suetsugu et al., J Plant Res, 2022

ピンク色の新種キリシマギンリョウソウ

 本州中部以西から九州にかけて自生する新種「キリシマギンリョウソウ」は、ピンク色の花弁と萼片(がくへん)が一番の特徴だ。

 これまで、ギンリョウソウはベニタケ系の菌根に寄生していることがわかっていた。だが、キリシマギンリョウソウは、ギンリョウソが寄生していなかった別系統のベニタケの菌根に寄生対象を乗り換えた。

 またお互いに並んで生えているにも関わらず、キリシマギンリョウソウは普通のギンリョウソウより開花が40日ほど遅い。

 神戸大学の生態学者、末次健司氏らは、「多面的な証拠から、この分類群は形態学的・生物季節学的・系統発生学的・生態学的に異なるものであり、別種として認識されるべきであると結論する」と論文で述べている。

 とりわけ面白いのは、キリシマギンリョウソウが相棒を別系統のベニタケの菌根に変えたことで、別の種に分化するきっかけになった可能性であるという。

 またキリシマギンリョウソウとギンリョウソウは開花の時期が違うために、マルハナバチの受粉ミスを防ぎ、交雑から守られていると考えられるそうだ。

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(a) 開花個体、(b–d) 花の各拡大図、(e) 地下部、 (f) 根の拡大図。矢印で示される通り根の先端は非常に不明瞭であるが、はっきりとした白い菌糸が見られる。スケールバー:3 cm (a-c)、1 cm (d, e)、5 mm (f) / image credit:uetsugu et al., J Plant Res, 2022

 世界の森林の多くは危機に瀕しているが、それは原生林に頼って生きているギンリョウソウも同じだ。

 せっかく発見されたキリシマギンリョウソウだが、希少な植物で、やはり絶滅の危機にある可能性が濃厚とのことだ。

 この研究は『Journal of Plant Research』(2022年11月29日付)に掲載された。

References:Ethereal New Plant Species Doesn’t Use Photosynthesis – It’s Found Something Sneakier : ScienceAlert / 世界でも2種目! 新種の「ギンリョウソウ」を発見 | Research at Kobe / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2023/01/07)本文と追記の日付を一部修正して再送します。

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この記事へのコメント 23件

コメントを書く

    1. ※1
      腐生ランとか高山性の蘭の花かな
      あいつらもこの花も葉っぱ退化させて菌からの栄養で生きてんのすげーよ

      • +1
  1. ギンリョウソウ、昔ススキ生えてるところに生えてて、誰かがあれは死体あった場所に生えるんだと言い出して、幽霊ぽい見た目だから信じて怖くなり、近づかなくなった。
    まあ嘘だよね。

    • +6
    1. ※2
      ススキに寄生するのはナンバンギセルという別種の植物。
      花が紅なので観賞用に珍重されてます。

      • +2
  2. 腐生植物ならランの仲間もよく聞くね
    最近では菌従属栄養植物っての?

    • +11
    1. >>3
      腐った所に生えるという誤解から来た呼び名だからね。改められたよ
      そしてギンリョウソウはあんななりだけれど、遺伝子的にはツツジに近い

      • +7
  3. 幽霊というよりニートみたいな植物だな
    寄生先が先細って自らも終わりを迎える辺りが特に

    • +1
  4. なぜかムーミンのニョロニョロを思い出す

    • +3
  5. ギンリョウソウなら4月後半にトレッキングすれば必ずといって良いほど生えてる

    • +5
    1. ※6
      それくらいありふれてて花の色も開花の時期も違うのに今まで誰も気づかなかったのか
      新種の発見なんてそんなものなのかもな

      • +8
      1. ※15
        魚の新種や亜種も、漁師さんは見慣れてて「これ珍しいの?」みたいな事もあるそうだし
        意外と身近にあったりしてね

        • +4
  6. まるで俺みたいなやつだな
    だれか俺のことも希少種として保護してくれんか

    • +4
    1. ※7
      稀少種さん、研究のために解剖してその後はホルマリン漬けにさせて貰いますね

      • +3
  7. そうか、たまに見るけど日本以外では珍しいのか。
    キノコかと思ってた。

    • +6
  8. 子どもの頃に図鑑で見ていつか遭遇したいと思ってる
    ナンバンギセルならよく見るんだけどなあ

    • +1
  9. 園芸が趣味なんけどこういうのもいつか園芸種が開発されるのかなと思うと
    ワクワクするねえ

    • +1
  10. ナンバンキセルのことかな 薮の根元のあたりに時々生えていた
    みつけると「うわっ」って思うほど不気味な感じはしたな

    • +1
  11. 白いのは山に行くと割とうじゃうじゃ生えてるよな

    • +3
  12. 銀竜草なんて格好いい名前してるのに生態は菌類に完全に寄生してるという

    • +4
  13. 光合成せず菌類から栄養をもらう『幽霊のような植物の新種が発見』されるだな
    銀龍草も南蛮煙管も田舎で見たよ
    ちょうど植物分布の境界線が隣町にあり、少し移動するといくつかの植物が生えなくなるというのもあった(実際は移植するされたものもあるけど)
    だから割と植物に関心が高かった子供時代

    そういえば動物の境界線も近くに

    • +3
  14. 追記の日付間違えてますよ。
    誤:2023/01/17、正:2023/01/07

    • 評価
  15. どこにもちゃっかりした奴はいるんだなぁ

    • 評価
  16. そういえば高校のときに「変な蛙を見つけた」と後輩が…
    それからかなりたってから『新種の蛙見つかる』のニュースがあった
    もしあの時、部活を中断してどこぞに持ち込めば、彼の手柄になっただろう
    とても悪いことをした、ごめんなさい、N田君

    • +1

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