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9000年前のドイツのシャーマンが身にまとった豪華な鹿の角と羽毛の頭飾り

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(著)

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ノロジカの角の頭飾りを含む、華やかな装飾をまとったバート・デュレンベルクのシャーマンの復元図この画像を大きなサイズで見る
Image credit:  Karol Schauer/State Office for Heritage Management and Archaeology Saxony-Anhalt
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 ドイツで、約9000年前のシャーマンが頭に装着していたノロジカの角の頭飾りに、羽毛がついていたことが最新の顕微鏡分析で判明した。

 このノロジカの角と羽毛を組み合わせた特別な頭飾りは、約2000年後の新石器時代の農耕民にも受け継がれており、狩猟から農耕へと暮らしが激変しても同じ儀式スタイルが続いていたことが科学的に証明された。

 当時の人々にとって、シャーマンが身に着けるこの装束が時代や文化の枠を超えた重要な信仰の対象であったことを物語っている。

 この研究成果は『Praehistorische Zeitschrift誌(2026年1月31日付)に掲載された。

中石器時代のシャーマン女性の墓

 2019年、ドイツのザクセン・アンハルト州遺産管理・考古学局(ハレ州立先史時代博物館)の研究チームは、1934年にドイツ中部のザーレ川沿いで発見された「バート・デュレンベルクのシャーマン」の墓を再調査した。

 この墓には、最終氷期が終わり、気候が穏やかになった中石器時代(約9000年前)に生きた30〜40歳のシャーマンの女性と乳児が埋葬されている。

 この女性がシャーマンであると特定された理由は、墓から見つかった遺物の特殊さと、彼女自身の身体的な特徴にある。

 彼女の周囲からは100点を超える動物の歯のペンダントや、今回「羽毛」が発見されたノロジカの角の頭飾りなど、当時の一般的な埋葬ではありえないほど豪華で特殊な儀式道具が見つかった。

 さらに骨の分析の結果、彼女は首の骨に先天的な異常があり、特定の姿勢をとると意識を失ったり幻覚を見たりしやすい体質だった可能性が浮上した。

 当時の人々は、こうした「トランス状態」に入りやすい性質を、精霊の世界と交信できる特別な能力と捉えていた。

 こうした複数の証拠から、彼女は村の精神的なリーダーであるシャーマンだったと結論付けられたのだ。

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Image credit:  Karol Schauer/State Office for Heritage Management and Archaeology Saxony-Anhalt

ノロジカの角の頭飾りには羽毛で装飾されていた 

 フィンランド・ヘルシンキ大学のトゥイヤ・キルキネン博士が最新の顕微鏡分析を行ったところ、シャーマンの頭骨の周りからガチョウの羽毛の微細な痕跡が発見された。

 これにより、狩猟採集を行っていた中石器時代のシャーマンが、ノロジカの角だけでなく羽毛で飾られた非常に精巧な「頭飾り」を頭に装着していた事実が初めて科学的に特定された。

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バート・デュレンベルク遺跡で発見された羽毛の微細な破片 A:種類が特定できない羽の枝(えだ)の破片、B:ガチョウなどの水鳥の羽の破片、C:スズメの仲間の小鳥の羽の破片、D:キジの仲間の鳥の羽の破片 Image credit: Tuija Kirkinen

新石器時代の農耕民へと受け継がれた儀式の伝統

 今回の調査で最も驚くべき発見は、このシャーマン女性が死後も信じられないほど長い間、人々に影響を与え続けていた点にある。

 彼女が9000年前に埋葬されてから約600年後、墓のすぐ目の前には儀式のための穴が掘られ、ライチョウの羽などで飾られたノロジカの角のマスクが供えられていた。

 彼女は死後数百年が経過してもなお、地域の人々から「守護聖人」のように慕われ、その墓は繰り返し儀式が行われる聖地となっていたのだ。

 さらに驚くべきことに、彼女の死から約2000年が経過した新石器時代になっても、彼女の影響力は消えなかった。

 7000年前の新石器時代にあたる時期、地域には狩猟に代わって農耕を行う新たな人々が現れたが、彼らの集落からも、彼女のものとそっくりなノロジカの角の頭飾りが見つかっている。

 本来、狩猟採集民と農耕民は全く異なる文化を持つが、彼女が確立した霊的なスタイルは時代と文化の壁を超え、2000年もの時を生き抜いて継承されたのである。

世代を超えて信仰を集めた聖なる場所 

 先史時代のヨーロッパにおいて、これほど長期にわたり特定の人物が「守護聖人」のように崇拝され続ける例は極めて珍しい。

ザクセン・アンハルト州の研究者たちは、この発見が大陸における宗教の最も初期のルーツを示すものであると結論付けている。

 この研究成果は『Praehistorische Zeitschrift誌(2026年1月31日付)に掲載された。

References: Degruyterbrill / Popsci

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この記事へのコメント 18件

コメントを書く

  1. 現代もこんな感じの手作りファッションだったら
    けっこう楽しいのになぁ。
    「部長!その鹿の角、いけてますな!」
    「だろう?君のアライグマの尻尾ネクタイも良いな」

    • +21
  2. ジャーマン・シャーマンなのか
    シャーマニック・ジャーマンなのか
    よくわからない
    きっと首の異常はジャーマンスープレックスで投げられた後遺症だったのだろう

    さて「精霊に捕まって倒れる」にも首の異常が変性意識に入るスイッチという事例が
    主人公の女児も癲癇があり意識変容しやすいのは特別なことだと両親一族は考えていた

    こういう文化ではシャーマンは族長と並ぶ地位を持ち、優遇される
    さらに偉大なシャーマンは、記事にあるよう神格化されたのだろう
    連綿と続く祈りの儀式、ロマンだね

    • -4
  3. 予言者、あるいは精霊と交信できる特別な人物だったのかな
    しかも死後も崇拝対象になっていたってことは神になったのか
    案外神話の中に残ってたりして

    • +20
    1. 絶対居ると思う、きっと有名な何かだと思う
      いったいどんな人物だったんだろう・・・
      伝承がしっかり繋がってれば良かったんだけれども

      • +2
  4. よほど正しく導いた記憶があったんだろうね

    • +12
  5. ドイツの有角兎伝承は、こういうのから来てたりしてるのかも。

    • +1
  6. 現代も、2000年経てもイエスの墓は聖墳墓教会としてキリスト・ユダヤ・イスラム教共通の聖地になって崇拝されているし、同じような存在だったんだろうね。

    • +5
  7. 文字のほぼない口承の時代に
    2000年以上にも渡って伝承され続けて
    しかもノロジカのマスクという特徴が正確に継承されてるとか
    とんでもない大人物すぎる
    どんだけ偉大な人物だったのか

    • +10
  8. 太古のファッションリーダーか
    当時ワイも鹿角をアレに装着したら流行ってたな

    • +2
  9. 海外のファンタジー・フィギュアでこんな感じのデザインがあるけれど、あながち嘘ではなかったんだ。
    やはり伝承されていたのかな、この姿が。

    • +3
  10. ひゃー、カッコイイ!!
    さぞや人望のあるお方だったのでしょうね。
    ドイツ版卑弥呼かな。

    • +5

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