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タスマニアタイガーは羊を襲う獰猛な捕食者ではなかった。人間の濡れ衣により絶滅

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(著)

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public domain / Wikimedia
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 タスマニアタイガーの名で知られるフクロオオカミは、「羊を襲う獰猛な捕食者」ではなかったことが最新の研究で判明した。

 オーストラリアのフリンダース大学などの研究チームによる頭骨分析で、彼らの顎はワニのように素早く噛みついて小動物を捕らえることに特化しており、羊のような大型動物を押さえ込むのには向いていなかったことが明らかになった。

 人間の勝手な思い込みと濡れ衣による乱獲が、タスマニアタイガーを絶滅に追いやったのである。

 この研究成果は『Nature Communications』誌(2026年8月31日付)に掲載された。

参考文献:

羊殺しは人間の勘違いだった。最新研究で覆る定説

 フクロオオカミは、かつてオーストラリアに生息していた肉食の有袋類だ。

 背中にトラのような縞模様を持つことから「タスマニアタイガー」とも呼ばれている。

 ヨーロッパからの入植者によって「羊を襲う獰猛な捕食者」というレッテルを貼られ、乱獲によって絶滅に追い込まれた。

 だが、その定説が人間の勝手な思い込みであったことが、最新研究で明らかになった。

 オーストラリアのフリンダース大学とメルボルン大学の研究チームが、博物館に残るフクロオオカミの頭骨を詳細に分析したところ、フクロオオカミが狩っていたのは小さな獲物だった可能性が高いことが判明したのだ。

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CTスキャンされたフクロオオカミの頭蓋骨のデジタル復元画像。犬歯はピンク色に着色されている。Image credit:Vera Weisbecker (Flinders)、CC-BY-SA

巨大な頭骨とワニに似た素早く噛みつく顎

 研究チームにとって最大の発見は、フクロオオカミの顎の形状だった。

 顎は長く深いが、羊のような大型の家畜を押さえつけるのにはまったく適していなかった。

 その代わり、はるかに小さな動物に対して、強力な噛みつきを食らわせるのに効果的な構造をしていた。

 平均的なフクロオオカミの体重はオオカミの半分ほどしかないが、頭骨そのものはハイイロオオカミとほぼ同じ大きさだった。

 しかし、鼻面は細長く繊細で、キツネやジャッカルによく似ている。

 フリンダース大学のヴェラ・ワイスベッカー教授によると、顎が長いほど噛むときの先端の動きが速くなり、獲物に与える衝撃が増すという。

 巨大な頭骨は、この強烈な噛む力に耐えるためのものだったと研究チームは考えている。

 大きな頭と素早く噛みつく顎という組み合わせは、現生の肉食哺乳類には見られない。

 その一方で、素早い魚を狙うワニや肉食魚には、よく見られる特徴である。

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Image credit:Vera Weisbecker (Flinders)、CC-BY-SA

オオカミに似ているのは見た目だけの有袋類

 オーストラリアに入植したヨーロッパ人たちは、フクロオオカミの姿を故郷のオオカミやキツネと重ね合わせた。

 その外見から、「犬の頭」を意味する「cynocephalus(キノケファルス)」という種小名が与えられた。

 しかし実際には、フクロオオカミは犬やオオカミの仲間ではなく、コアラやカンガルーに近い有袋類である。

 お腹の袋で未熟な赤ちゃんを育てる動物だ。

 その頭骨は、現生のどの肉食哺乳類とも一致しない、独自の特徴の組み合わせを持っていた。

 かつてオーストラリア本土にいた頃は、自分の何倍もの大きさの獲物を仕留められるティラコレオ(フクロライオン)という別の肉食有袋類が存在していた。

 そのため、フクロオオカミは大型の獲物をフクロライオンに任せ、自分たちは小型の獲物を狙うように棲み分けをしていたと考えられる。

 やがてフクロオオカミは本土から姿を消し、タスマニア島だけに残された。

 島では、ウサギほどの大きさのバンディクートやポッサム、ワラビーといった豊富にいる小動物を素早く狩るのに特化していたのだ。

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フリンダース大学のヴェラ・ワイスベッカー教授が指で示しているのはフクロオオカミの鼻先。机にはオオカミ、キツネ、ワニの上顎の模型が並んでいる。Image credit:T Bawden (Flinders University)

濡れ衣が招いた取り返しのつかない悲劇

 ヨーロッパ人がオーストラリアに到達したとき、フクロオオカミはすでにタスマニア島にのみ生息する希少な動物だった。

 だが入植者たちは「大切な羊を殺す害獣」と一方的に決めつけた。

 1830年には農場主たちが資金を出し合って賞金をかけ、1888年にはタスマニア政府も公式の賞金制度を始めた。

 制度は1909年まで続き、2,000件を超える賞金が支払われた。

 ワイスベッカー教授は、たとえフクロオオカミの数が多かったとしても、大人の羊を狩るのには不向きだったと指摘している。

 親のいない子羊には脅威だったかもしれないが、言われていたほどの大きな被害を出す能力はそもそもなかったのだ。

 フクロオオカミの価値が認められ、保護の動きが出た頃には、すでに手遅れだった。

 そして1936年、タスマニア、ホバート動物園動物園で飼育されていた最後の1頭、ベンジャミンが死に、フクロオオカミはこの世から完全に姿を消した。

最後の1頭となったフクロオオカミのベンジャミン。1935年に撮影された映像でこの数か月後の1936年に死亡したとされる。

 ワイスベッカー教授は、こう締めくくっている。

フクロオオカミは、家畜を襲う獰猛な捕食者だという俗説のせいで狩られました。その証拠はほとんどなかったのにです。

この絶滅は、オーストラリア固有の野生生物と、その土地の先住民の管理者たちに対する無理解と敬意の欠如の物語です。

 人間の勝手な思い込みと濡れ衣が、ひとつの種を永遠に奪ってしまった。現在、フクロオオカミを復活させる取り組みが行われているが、完全に同じ状態で復活させることは難しいかもしれない。

References: DOI.10.1038/s41467-026-76614-0

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