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絶滅種のタスマニアタイガーの標本からRNAを抽出することに史上初めて成功

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(著) (編集)

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 スウェーデンの博物館が常温で保管している絶滅種、タスマニアタイガー(フクロオオカミ)の標本から、130年以上前のRNAを抽出し、その配列を読み解くことに成功したそうだ。

 絶滅した動物から、皮膚と骨格筋のRNA情報すべて(トランスクリプトーム)が得られたのは、史上初となる。

 この成果は、タスマニアタイガーやウーリーマンモスなど、すでに絶滅してしまった動物の研究やその復活、さらには感染症の原因となるRNAウイルスの研究を大きく前進させる可能性があるそうだ。

入植者によって絶滅に追い込まれたタスマニアタイガー

 タスマニアタイガー(フクロオオカミ)は、かつてオーストラリア大陸とタスマニア島に生息して有袋類の肉食動物だ。

 オーストラリアの動物らしく袋をもちつつも、生態系の中ではオオカミの役割を果たしており、「袋を持つオオカミ」で、収斂進化の例としてしられていた。

 だがヨーロッパから入植者がやってくると家畜を襲う害獣とみなされ懸賞金がかけられるほど忌み嫌われ、次々と駆除されるようになった。

 そして1936年、オーストラリア、ボーマリス動物園(現在のホバート動物園)で飼育されていた最後の1頭が死んだことで、ついに絶滅した。

1933年12月にボーマリス動物園で撮影されたタスマニアタイガーの映像をカラー化したもの

 最近ではこうした絶滅種を現代に復活させようという取り組みが進んでいる。

 幸いにしてタスマニアにはまだ自然の生息地が残されている。タスマニアタイガーを甦らせることができれば、彼らが絶滅したせいで失われた生態系の均衡がもとに戻るだろうと期待されているのだ。

130年前のタスマニアタイガーの標本からRNAを抽出に初成功

 今回ストックホルム大学とスウェーデン自然史博物館をはじめとする研究チームは、同博物館が所蔵している130年前のタスマニアタイガーの標本からRNAを抽出し、その配列を解析することに成功した。

 これまで永久凍土で冷凍されていた古代の動物や現生の動物からRNAが抽出されたことはあったが、常温で保存されている絶滅種では初めてのことであるという。

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スウェーデン自然史博物館が常温で保管しているタスマニアタイガーの標本。ここからRNAを回収することに成功した / image credit:Emilio Marmol Sanchez (photograph) and Panagiotis Kalogeropoulos

 DNAと同じく、RNAもヌクレオチドでできた分子構造だ。

 だがDNAが生物の設計図であるのに対して、RNAはこの設計図に記されている内容を読み取って、実際に作業を実行するツールとしての役割がある(例えば、mRNAはタンパク質を作る)。

 タスマニアタイガーのような絶滅種をきちんと復元するには、ただDNAに記されている全情報(これを「ゲノム」という)がわかればいいわけではない。

 それぞれ組織において遺伝子がどのように発現し、遺伝子がどのように制御されているのかといったことも知らなければならない。

 それは各組織のRNAに記されている全情報(これを「トランスクリプトーム」という)を調べなければわからないことだ。

 130年前のタスマニアタイガーからRNAが抽出された重要性はそこにある。

タスマニアタイガーやマンモスを復活させることは、簡単ではありません。それらのゲノムとトランスクリプトーム両方を深く理解していなければなりません。

それらが今、ようやく明らかになりつつあるわけです(ストックホルム大学 エミリオ・マルモル氏)

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1905年に撮影されたタスマニアタイガーのメスとオス / image credit:Smithsonian Institutional Archives / EJ Keller, National Zoological Park.

古代生物や絶滅種を復元できる可能性が高まる

 タスマニアタイガーの皮膚と骨格筋のトランスクリプトームからは、現代の有袋類や胎盤哺乳類のものとよく似た遺伝子発現シグネチャーが見つかったという。

 つまりは1世紀前に絶滅した動物がどのように遺伝子を制御していたのか、そのリアルな様子を観察できたということだ。

 この成功が意味するのは、世界の博物館に保管されている膨大な数の生き物の標本やウイルスを、これまでにはなかった方法で調べられるかもしれないということだ。

 「将来的には、絶滅した動物だけでなく、新型コロナのようなRNAウイルスを、博物館に保管されているコウモリなどの宿主生物から復元できるようかもしれません」(ストックホルム大学 ラブ・ダレン氏)

 研究チームは、DNAを超えた古遺伝学の新時代に向けて、ゲノムとトランスクリプトームを統合した研究が行われることを期待しているそうだ。

 この研究は『Genome Research』(2023年9月19日付)に掲載された。

References:RNA has been recovered from an extinct species for the first time / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 12件

コメントを書く

  1. そうそう 今いるゾウを元にしてマンモスの遺伝子を復元しようって実験があったよね
    タスマニアタイガーは何を元にするんだろう トラ?カンガルー?🦘

    • -3
    1. >>2
      カンガルーをベースにして
      二足でピョンピョン跳ねるタイガーというのも斬新かもですね

      • 評価
  2. 宮本武蔵を復活させたら強すぎて手が付けられなくなって
    霊能力者に魂を吸い取ってもらった国があるらしいな。

    • 評価
  3. 転写RNAが蛋白質作り出してそれが組織を作ったり出来た組織を調節するのはわかる
    クローニングにどう必要なんだろう?
    ドリーのときは話題にならなかったから使ってないのでは(胸腺細胞をリプログラミングした)
    生きた細胞は汎化させられるからかな、死んだ細胞はそこができない

    • +1
  4. いや……
    約100年の間にタスマニアタイガーのいない生態系がすでに構築されているのでは?
    今さら復活させて大丈夫なの?

    • +3
  5. フクロオオカミには近縁種がいないからね。トラの遺伝情報が判ってもイヌからトラは作れないよね。

    復活させるというよりは、より正確な記録、データとして有意義という事じゃないかな?

    • +1
  6. まずマンモスを復活するのが先でしょ
    とっととマンモス出して!
    『マンモスうれぴー♥』ってやってよ、ねえ

    • -4
  7. 確かIPS細胞で受精卵と精子の作成に成功してたよね
    近親種に受精した卵細胞を移植すれば
    復活できる可能性があると言う事か?

    まあマンモスでもまだ実用化は
    されてないけど未来と可能性はあるな

    • 評価
    1. >>10
      前に聞いた話ではタスマニアデビルに借り腹させるのが良いだろうと言ってた

      • 評価

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