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人類史上最速記録を持つ物体はマンホールの蓋!核実験で宇宙へと飛ばされる

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(著) (編集)

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人類史上最速の人工物はマンホールの蓋 /iStock
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 さて、ここで問題だ。人工物の中で史上最速記録を保持している物体は何だろうか? 答えは目にもとまらぬ弾丸や、大気圏を突破して宇宙に飛び立つロケットでもない。なんとマンホールの蓋だ。

 大切なことなので、もう一度言おう。マンホールの蓋である。

 1950年代に行われたアメリカの地下核実験により飛ばされたものだ。

地上から地下へ、アメリカの核実験の歴史

 第二次世界大戦後期に遂行されたマンハッタン計画は、その後の核時代の号砲となった。1945~92年にかけて、アメリカは実験のためにじつに1000発以上の核弾頭を起爆している。

 もちろんそうした実験は、人気のない砂漠や海のど真ん中で行われた。それでも核爆発によって舞い上がる死の灰は危険きわまりなく、風に乗って大気や人々を汚染しかねない。

 1950年代後半、国防総省は核実験の大半を地下で行うことを決定。これ以前にも地下実験が行われたことはあったが、ついに核爆発の爆風を完全に封じ込めることができる容器の設計が進められることになった。

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1962年7月6日、ネバダ核実験場のユッカ平原で行われた浅深度地下核実験「セダン核実験」

image credit:public domain/wikimedia

プラムボブ作戦でマンホールの蓋が世界最速記録

 1957年5月28日から10月7日まで、ネバダ核実験場で29回の実験が行われた「プラムボブ作戦」は、アメリカ国内で行われたものとして最大規模かつ最長の核実験だ。

 伝説が生まれたのは、8月27日夜に行われた二度目となる地下での安全性検証実験「パスカルB」でのことだ。

 この実験では、152メートルの縦坑の中で核弾頭が起爆された。縦坑の上部にあった開口部は、重さ900キロ、直径1.2メートル、厚さ10センチほどのマンホールの蓋(鋼蓋)が溶接されて塞がれていた。だが起爆からほんの数ミリ秒後、駆け昇ってきた爆風によって蓋は吹き飛ばされ、縦坑からキノコ雲が立ち上ったのである。

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プラムボブ作戦スモーキー実験

image credit:public domain/wikimedia

その速度は時速20万1000キロ!

 パスカルBを考案したのは、ロバート・ブラウンリー博士という科学者だった。彼は実験前に鋼蓋が外れる速度について疑似計算を行っていた。2002年、彼はとあるエッセイを発表し、その結果について当時ビル・オーグル副課長と交わしたやりとりを述懐している。

オーグル(オ):縦坑上部に衝撃波が伝わるまでの時間は?
ブラウンリー(ブ):31ミリ秒です。
オ:それからどうなる?
ブ:衝撃波は下へ反射されますが、圧力と温度で溶接された蓋が飛ばされます。
オ:速度は?
ブ:その点については、計算は見当違いなものですよ。衝撃波の反射についてなら正確でしょうが。
オ:どのくらいだったんだ?
ブ:数字に意味はないですよ。蓋の上は真空しかない前提でしたから。蓋には空気も重力もかからないし、物質強度もないんですから。外れて無意味な空間を移動しているようなものです。
オ:いいから、言いたまえ。
ブ:地球からの脱出速度の6倍です。

 計算結果が興味深いものだったため、実際の実験にあたってはハイスピードカメラが設置され、鋼蓋の速度が測定されることになった。

 だが核が起爆されたとき、鉄蓋はたった1フレームにしか映っておらず、その速度を直接計測することはできなかった。そこでブラウンリー博士は「猛スピード!」と推定した。科学的でなくても、そのときの様子をありありと思い浮かべることができるだろう。

 後の計算では、鋼蓋の速度は時速20万1000キロと試算されている。地球からの脱出速度の5倍である。

 実験後、その鋼蓋が発見されることはなかった。ブラウンリー博士は、それが大気圏を脱出したとは考えていなかったようだ。というのも、それだけの速度で吹き飛んだとすると、摩擦熱によって蒸発してしまうからだ。

マンホールの蓋が宇宙まで到達した可能性も

 だが本当に宇宙にまで旅立った可能性だってある。もしそうなら、それはソ連が世界初となる人工衛星スプートニク1号を打ち上げる数か月前のことだ。

 つまり鋼蓋は人類史上最速の物体であるばかりでなく、人類史上でも最初期に宇宙まで打ち上げられた物体だったかもしれないということだ。

追記(2021/02/03)本文を一部修正して再送します。

References:ZME Science/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 64件

コメントを書く

  1. >>大きさ10センチほどのマンホールの蓋(鋼蓋)

    これは不適切な表現だな

    大きさとは、何?
    直径?厚さ?半径?
    直径10cmでその重さとなると、厚さ数mくらいになるんじゃないかな
    厚さ10cmなら、まあ、そんなに大きくはないかも
    半径だとそのマンホールの蓋は球形となるかな

    • -30
  2. 月面をよく調べてみよう どっかにマンホールの蓋が落ちているかもしれない

    • +18
    1. ※5
      月「よせよ、危ないじゃないか!」
              だってさ。

      • +2
    2. >>5
      きっと月面の1番デカいクレーターがそれだ

      • +1
  3. 測定できなかったんだって書いてあるやーん

    • +3
  4. 最初の核爆発のプラズマ球に飲み込まれてるだろうから一瞬スピードカメラでとらえた蓋は
    まばたきする間も無くプラズマに飲み込まれ蒸発してるよw

    • -11
  5. 大気の層の厚さが17km、重さ900キロ、大きさ10センチ?、ここの誤訳だと思うが1秒ちょっとで大気圏行ける速さなんじゃないの、それの摩擦熱計算できないけどやっぱ溶けそうだ

    • +2
  6. 尻で受けたら割れるかもしれないな・・・(錯乱

    • 評価
  7. [銃弾の最大速度]あたりで調べりゃ判るけど
    気体の膨張によるエネルギー伝搬って2000m/s辺りが限界なんで
    マッハ160まで加速させるとか物理的に絶対不可能なんだわ
    なんでこのマンホールの話って100%間違いなく何か重大な事実誤認があるって断言できる

    • -12
    1. ※13
      核爆弾と数グラムの推進剤とじゃ推進時間が段違いなので、ほぼ真空の大気圏上層に至るまで加速されつづけている可能性もありそうな気も。

      • +4
    2. ※13
      銃の原理ならそうかも知れないけど
      蓋は溶接されていたんだからパイプ爆弾の原理になるんじゃない?
      しっかりと爆発の威力を受け止めてから破裂する方が効果が高い

      縦坑という銃身+溶接された蓋のパイプ爆弾
      ※18の言う通り蓋が自己鍛造弾のように弾丸状に変形して飛んだなら断熱圧縮により燃え尽きることもなく宇宙まで飛ぶんじゃないかな?

      • +5
    3. ※13
      蓋の上には真空しかない前提の無意味な数字って本人も言ってない?
      それはそれとして面白い数字が出たから実際を見ようとカメラを設置したけど

      • +1
    4. >>13
      気体の膨張についての知識があれば「物理的に不可能」なんて口が裂けても言えないだろ

      • +2
  8. マンホールのデブリがあるかどうかは分からずじまいなんじゃないか

    • +3
  9. 熱戦や衝撃波の影響を受けないとして、起爆時にこのマンホールの上に何か乗っかってたら一体どうなるのか・・・。

    • +1
  10. 自己鍛造弾みたいに流線形に変形して飛んでったかもしれん

    • +9
  11. これをネタにした特集やTV番組をやった暁にはマンホール女優釈由美子をゲストに呼ばないとな

    • +1
  12. …そしてマンホールの蓋は考えることをやめた…w

    • +11
  13. 笑い事じゃなくて日本の汚染水批判してる
    国の大半が水爆や核実験やりまくりだったよねえ

    • -4
  14. マンホールの蓋は2度と地球には戻れなかった…
    って言おうとしたら先に言われてましてね

    • +4
  15. そういえば核爆発を推進力とする宇宙船の構想があったな。

    • +3
    1. ※25
      オリオン計画だね。
      それと同じようなエンジンの宇宙船の出てくる「降伏の儀式」と言うSF小説は面白いのでを読む事をお勧めする。

      • +4
      1. >>27 戦うゾウさんが出てくるアレだね♪

        • +1
        1. ※30
          最後「踏んづけてやる!」しちゃうアレですね♪

          • 評価
  16. 中国のマンホールに爆竹放り込むイタズラを想像したけど
    爆発の規模も蓋のサイズも桁が違った

    • +6
  17. 第二宇宙速度の5倍なら、第三宇宙速度も優に達成しているから、もしかしたらボイジャーより先に太陽系を離脱した初めての人工物ってことにもなるかもしれない。

    • +7
  18. 原爆であれだけ殺しておいてまだ懲りないのか

    • -9
  19. プラムボブって兵士をバッチリ参加させた実験じゃないっけ
    焼け焦げはしなかったけど原爆症にガッツリ罹ったはず

    • +3
  20. > そこでブラウンリー博士は「猛スピード!」と推定した。

    とりあえず学者さんの語彙力も消失するレベルだということは分かった

    • +7
  21. 真空状態ってのはプラズマが作り出してるから、マンホールが何もない真空にあるわけないw

    • -4
    1. ※37
      「マンホールのふたに塗られたチョコレートについてきみには何が言えるか?」
      僕もこれはアレに転用されたと思ったんだ。

      • +1
  22. もっと大規模にやれば地球ごと移動できるかも
    後のことは別として

    • 評価
  23. パーカー・ソーラー・プローブ
    「2024年に計画されている最終接近では、太陽の表面から600万kmほどしか離れていない距離を飛行し、速度は時速69万kmに達する見込みである」

    • +1
  24. 爆発のプラズマで溶けて無くなったんじゃ無いかと思うけど吹っ飛ぶ方が速かったのかな。
    兵士も居るとか怖い実験だわ。

    • +2
    1. >>42
      爆発後にきのこ雲が立ち昇る爆心地に向かって前進する部隊を撮影してる動画とかあるよね
      アレだよ
      参加していた兵士は、当時はスゲェー!スゴイな!とお互いに声をかけながら陽気に訓練に参加していたというインタビュー映像もあったように記憶している

      • +3
    1. ※43
      衝撃波にだって耐えるんだもんな。で、何百メートルも飛ばされてるのに中のインディさんは痣一つ無しと

      • 評価
  25. パーカー・ソーラー・プローブはまだ打ち上げてないとしても、
    現状でもヘリオス2の方が速いじゃないか(時速25万3000km/h

    • 評価
  26. あれは何だ! 鳥だ!飛行機だ!いや、スーパーマンだ! いや、マンホールの蓋だ!

    そうーです、マンホールの蓋です。

    • +2
  27. 8月27日夜の実験で、マンホールは宇宙へ、地球は少し太陽へ近づいた。
    こんなところにも温暖化原因があったとは。

    • -1
  28. 遠い銀河の果てで…
    ある文明の許に宇宙から金属塊が落下し、
    少なからぬ被害が発生した。
    研究者達は、それが天然の物では無く
    意図的に精錬された金属であり、
    そして恐らくは核反応によって
    投射されたと結論づけた。
    彼等は反撃の準備を始めた。

    というSFのネタにして欲しい。

    • +1
  29. 昔のこととはいえ、核の話題は胸にくるなあ…

    • +1
  30. 秒速約 55 km/sだから脅威的だな
    ちなみにISSが 7.66 km/s で
    はやぶさ2のインパクタが 2 km/s

    • +1
  31. 名前が良いよね
    たぶんだけどパスカルAで思う以上に高速化したんだろうね
    そしてパスカルBで特化させたんだろうね
    パスカルBは絶対四面体配列なんだろうねw

    • 評価
  32. 900 kgの塊を空にふっとばして
    おいて、それが見つからないという
    ところがなんともアメリカっぽい

    • +2
  33. ロケットが宇宙へ飛ぶよりも早く核兵器ができていた事のほうが衝撃的。

    • +2
    1. >>63
      ミサイルや砲弾であれば宇宙という範疇になる高さ迄は上がってる

      第1次世界大戦時に大口径列車砲の砲弾が何故か当初の計算(地上で射撃したときに使う射程距離の計算式)よりも遠くに飛んでいる事に各国共に気がついていてね、実は砲弾は大気圏外(大気による摩擦抵抗を受けない高さ)に一旦出てから落下していた事がわかっている
      また、第二次世界大戦時には、V2ミサイル(中距離弾道ミサイル)がロンドンに落下する前に一旦大気圏外に出てから落下している、この兵器を防ぐ防御兵器は当時存在していなかった

      戦後は、米ソ両国は、このV2ミサイルを元に各種のロケットや大陸間弾道ミサイルを開発している、特にソ連は燃料系統を変更する事なく使用しているので、ソ連系統のロケットは皆、ヒドロジンを燃料として使っている

      • +1
  34. 古代進「前方に飛来物あり。・・・!?マンホールの蓋です!」

    • +1
  35. 蒸発したか、又は近くに埋まってんじゃね。

    • 評価

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