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新種の古代サイの化石を北極圏で発見、2300万年前の陸橋を渡り北米へ移動

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2300万年前に生息していた古代サイのイメージ図 Image credit:  Julius Csotonyi
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 カナダの北極圏で、2300万年前の新種のサイの化石が見つかった。この古代サイは、当時まだ陸続きだった北極を通ってヨーロッパから北米へ移動した可能性が高い。

 これまでは、このルートはもっと大昔に海に沈んで通れなくなったと考えられていたが、カナダ自然博物館などの研究により、北極が想像以上に長く「動物たちの通り道」だったことが判明した。

 この研究成果は『Nature Ecology & Evolution』誌に掲載された。

参考文献:

北極圏で2300万年前の新種のサイの化石を発見

 カナダ自然博物館の研究チームは、北極圏にあるデボン島のホートン・クレーターから、絶滅した新種のサイの化石を特定した。

 約2300万年前の中新世初期にこの地に生息していたこのサイは「エピアケラテリウム・イッチリク(Epiaceratherium itjilik)」と名付けられた。

 特筆すべきは、全身の骨の約75%(4分の3)が揃った状態で見つかったことだ。

 数千万年も前の動物は、バラバラの破片や数本の歯しか残らないのが普通だが、このサイは全身の形がわかるほど「驚異的な完成度」で保存されていた。

 これは、クレーター内にできた湖の底に沈んだことで、外気や他の動物から守られ、タイムカプセルのように密封されたからである。

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砂の上に並べられた、古代サイ「エピアケラテリウム・イッチリク」の化石。全身の約75%もの骨が見つかっており、新種だと特定する決め手となった歯や顎、頭蓋骨の一部も含まれている。Image credit:Pierre Poirier © Canadian Museum of Nature

角がなく小柄な古代サイの意外な姿

 この「北極のサイ」は、現代の私たちが知る姿とは大きく異なっていた。

 現代のインドサイと体格は似ているが、サイズはずっと小柄だった。

 肩までの高さは約1m、体重は約450kgと推定されており、現代の大きなサイ(体重2000kg以上)の4分の1ほどの重さしかない。

 また、鼻の上に「角」を持っていなかったのも大きな特徴だ。

 この個体は、奥歯のすり減り具合から、大人になりたての若さで死んだと考えられている。

 種名の「イッチリク」は、現地の先住民イヌイットの言葉で「霜(しも)」を意味する。

 かつて北極圏の厳しい自然の中で生きたこのサイに敬意を表し、イヌイットの長老であるジャーロー・キグクタック氏の助言を得て命名された。

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約2300万年前、緑豊かな森が広がっていたデボン島の湖畔を描いた想像図。右手前の古代サイだけでなく、ネズミやウサギ、アザラシの先祖「プイイラ・ダルウィニ」など、周囲に描かれた動植物はすべて同じ場所で見つかった化石に基づいている。Image credit:Julius Csotonyi

陸橋を使って移動していた可能性が高まる

 この発見は、古代の動物たちがどのように世界へ広がったかという「生物地理学」の常識を塗り替えた。

 解析の結果、このサイは数百万年前にヨーロッパに住んでいた種と最も近い親戚であることが判明した。

 このサイの仲間は、ヨーロッパからグリーンランドを経由し、北米へと渡ってきたと考えられる。

 ここで重要なのが、かつて北米とヨーロッパを陸続きにしていた「トゥーレ陸橋」の存在だ。「トゥーレ北大西洋陸橋」とも呼ばれるこの巨大な陸の道は、動物たちが海を越えて別の大陸へ移動するためのルートだった。

 これまでの定説では、この道は約5600万年前までしか機能していなかったと考えられていた。

 しかし、2300万年前の地層からこのサイの化石が見つかったことで、陸橋が想像以上に長く残り、機能していた可能性が浮上した。

 当時の北極圏は、哺乳類が大陸をまたいで移動し、世界中で種類を増やしていくための「重要な中継ルート」だったのである。

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新種のサイ「エピアケラテリウム・イッチリク」の骨が見つかった、デボン島のホートン・クレーター。ここは約2300万年前(中新世初期)の化石が数多く眠る貴重な場所であり、当時の北極圏の様子を現代に伝える重要な窓口となっている。 Image credit: Martin Lipman © Canadian Museum of Nature

かつての北極圏は緑豊かな温帯の森

 現在、デボン島は一年中凍土に覆われた寒冷な砂漠のような場所だが、2300万年前は全く異なる「温帯の森」が広がる豊かな環境だった。

 地質学的な証拠により、当時はサイのような大型の哺乳類が十分に暮らしていけるほど、気候が穏やかだったことが分かっている。

 この貴重な化石が私たちの目に触れることになったのは、「クリオタベーション(凍結撹乱)」という自然現象のおかげだ。

 地面の中の水分が凍ったり溶けたりを繰り返すことで、土がかき混ぜられ、深く眠っていた骨が地表へと押し上げられたのだ。

 1986年にこの新種のサイの最初の破片が見つかってから約40年。 その後の粘り強い調査によって全身の約75%もの骨が集まり、凍った大地の下に隠されていた地球の進化の物語が、解き明かされようとしている。

References: Nature

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この記事へのコメント 12件

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  1. サイの角って骨じゃないと聞いたが、、
    化石では角の有無は分からんのでは?

    • 評価
    1. サイの頭蓋骨には、角の箇所にカリフラワーのようなふくらみがあるそうな。

      • 評価
    2.  クラゲの化石があるくらいだから、条件が良ければ角も残るんじゃない? 小さいってのが、今回は一体だけだったのでもしかすると群れからはぐれた(群れをつくらないかもだけど)とか、なわばりを持てなかったとか、迷子になったとか、何らかの事情のある弱いサイだったかも? など続く研究に期待ですね~

      • 評価
    3. 鋭い!気になってさらっと見たら
      ①永久凍土でドライ・ミイラ化
      ②涼しい&乾燥してたんでギリ化石化
      の2パターンあるみたい

      • +1
  2. 大陸の移動とか陸橋とかすごく好き
    サイそのものよりもそのサイの化石で陸橋の存在時期に対して考証が加えられるのとかすごくロマンを感じる

    • +4
  3. 今のサイって体重2トンもあるのかよ。
    しかもそれで全速力で走ってくるのか。
    絶対に勝てないわ。

    • +2
    1. 当時も体重20tに達したと言われるパラケラテリウムなど
      巨大なサイの仲間もいたけどね

      • 評価
    2. だよね(なお中の人=職員は軽症のもよう)

      • +1

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