古代ゾウの墓場が発見される
image credit:Florida Museum photo by Kristen Grace, CC BY

 アメリカ、フロリダ自然史博物館の古生物学者とボランティアのチームが、北フロリダの干上がった川底を発掘していたとき、2300万年前から533万年前の中新世時代にこの地域に生息していた絶滅種のゾウの骨が、同じ場所から集中して発見された。

 ゴンフォテリウムという、このゾウのご先祖は大昔に絶滅したが、およそ600万年前、現在の北フロリダで大繁栄していた。

 なんらかの理由で、数多くのゴンフォテリウムが、現在のフロリダ州モントブルックの町近くの川の岸辺で事切れ、まるでそこがゾウの墓場であるかのような場所になってしまったようだ。

年代を隔てた古代ゾウの骨が同じ場所から発見

 このたび発見された化石化した骨の中には、数百年を隔てて死亡したものも含まれていた。年代が大きく異なる骨が、同じ場所から見つかったのだ。

 なんらかの特異な自然現象が、こうした骨の蓄積の原因になったに違いないと思われた。

 幸いなことに、回収されたゾウの骨のいくつかはほぼ無傷で、完全な大人のゾウのものもあった。

 これは、かつては北アメリカを闊歩していた、この巨大で魅力的な生き物を、古生物学者たちが解剖学的に研究できる、またとないチャンスを与えてくれることになる。
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オトナのゴンフォテリウムの頭蓋骨(手前、牙は白い石膏で覆われている)は、保存前に本体(後ろの白い石膏)から分離された/ image credit:Florida Museum photo by Kristen Grace, CC BY

「これは、一生に一度あるかないかの発見です」フロリダ自然史博物館の発掘リーダーで、脊椎動物古生物学の学芸員、ジョナサン・ブロック氏は興奮気味に語った。

「フロリダでこの時代に生きていたもっとも完璧なゴンフォテリウムの骨格で、北米で最高のもののひとつです」

古代動物の化石が集まるモントブルックの川底

 フロリダ州モントブルック郊外の先史時代の川底の発掘は、2022年始め初頭に始まった。

 太古の昔、ここに生息していた動物の化石を見つけるという明確な意図を持って、研究者たちはここにやってきた。
 500万年前から550万年前、中新世後期から鮮新世初期にかけて、今は枯れてしまったこの川には、淡水がとうとうと流れ、多種多様な魚類、両生類、爬虫類、水鳥が暮らしていた。

ついに発見された古代ゾウ、ゴンフォテリウム

 ゴンフォテリウムのような大型哺乳類も、ここへ水を飲みにやってきたことだろう。

 発掘が始まるとほぼ同時に、発掘に参加した者たちは、ゴンフォテリウムの骨を探し始めた。そして、ボランティアのひとり、元科学教師のディーン・ワーナー氏が、とてつもなく巨大な生き物の化石化した骨を発見した。

「爪先や足首の骨が次から次へと見つかりました」ワーナーは語る。「掘り続けていると、尺骨や橈骨(とうこつ、長腕の骨)も出てきたのです」

 その場で大人のゴンフォテリウムの完全な骨格が見つかり、最終的に合計7頭分の幼体の小さな無傷の骨格の発見に至った。
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(左)ゴンフォテリウムの顎の骨と発掘ボランティア、(右)ゾウの骨層に接着剤を流し込む研究者 / image credit:Florida Museum photo by Kristen Grace, CC BY

 大人のゴンフォテリウムの骨は、古代の川底で見つかったその他の種と比べて大きく、現在のアフリカゾウの成獣と同じくらいだ。

 500〜600万年前のゴンフォテリウムの成獣は、体高およそ2.4メートル、頭蓋骨と牙の前から後ろまでの体長は、2.7メートル強。これまで発掘されたゴンフォテリウムの中でも最大だ。

 「これらの骨は、これまでのどの個体よりもかなり大きかっただけでなく、まるで死骸をそこに"安置"したかのように、ひとつの場所に横たえられていました」とブロック氏は語る。

 それはあたかもここが、ゾウが人生の最後の日々を過ごすために訪れ、死んでいった、「ゾウの墓場」であるかのようでした」ブロック氏は言う。
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ゴンフォテリウムは、独特な形、向き、帯状模様がグループによって異なる牙によって、おおまかに識別することができる。(上左)ゴンフォテリウム、(上右)キュヴィエロニウス、(下左)リンチョテリウム、(下右)ステゴマストドン / image credit:Pedro Toledo/ Florida Museum

意図せずしてできたゾウの墓場

 ゾウが死ぬ場所を意図的に選択した可能性については、科学者たちは否定している。とはいえ、必ずしもゾウの墓場説が誤りだと否定しているわけでもない。

 年老いて病に冒されたゾウが、なじみの土地の水場近くで静かに横たわって休みたいと思ったとしてもおかしくない。

 こうしたことが、数百万年前のモントブルック付近で起こったとしたら、たくさんのゴンフォテリウムが、同じ場所で事切れていた理由の説明になるだろう。

 たとえ、ゾウ自身にはまったくそのつもりがなかったとしても、事実上、ゾウの墓場になっていったということはありえるかもしれない。

 現時点では、この驚くべき発見に関わった古生物学者たちは、異なる説を採用している。

 ゴンフォテリウムは、完全な骨格が見つかったこの現場で死んだが、ちょうど川の曲がり角になっていたため、洪水時にほかの個体の遺骸が流されてきて、同じ場所に堆積したのではないかと推測している。

 時がたつにつれて、遺骸が積みあがっていき、あたかもこの場所に彼らが自らの意思でやってきて、死んだかのように見えたというのだ。

フロリダの謎めいたゾウの祖先についての真実を発見する

 その起源がなんであれ、この先史時代のゾウの墓場が発見されたことは、とてつもない幸運なのは間違いない。

「非常にエキサイティングなことです。ゴンフォテリウムがどのような姿形をしていたかがわかるだけでなく、全骨格の骨をひとつひとつ丁寧に記録するチャンスも得られたからです」ブロック氏は語る。

「こうした絶滅生物を解剖学的、生物学的、進化的に理解しようとするのは、科学的な観点から見て、とても興味深いことなのです」
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ゴンフォテリウムは、もっとも多様な長鼻類のひとつで、2000万年の間に、あらゆる大陸に広まり、繁栄していた。 / image credit:Pedro Toledo/ Florida Museum

160万年前に絶滅したゴンフォテリウム

 中新世時代には、現代のゾウのこれらご先祖たちが、現在のアフリカ、ユーラシア、アメリカに見られる開けたサバンナを闊歩していた。

 しかし、北米では、こうしたサバンナの多くが質の違う草原に替わり、貴重な食資源をめぐって競争が激しくなった。そして、およそ160万年前、ゴンフォテリウムは絶滅した。
 絶滅して久しいこの種の生命とライフスタイルに関して、未解決の多くの疑問が残されているが、フロリダ自然史博物館の研究者たちは、古代の川底で発見された非常に保存状態のいいゴンフォテリウムの化石を研究することで得られる知見に興奮を隠せない。

 いずれは、回収された骨はつなぎ合わされ、すでに博物館の化石コレクションの一員であるマンモスやマストドンの骨の隣に、展示されることになるだろう。

References:Paleontologists discover elephant graveyard in North Florida – Research News / Paleontologists Uncover 6-Million-Year-Old Elephant Graveyard in Florida | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2023年06月15日 21:28
  • ID:Do4nUEZo0 #

古代ゾウの一家がここで全滅、それらが分解されず化石となってまとめて出て来たのか。
市川市の縄文時代の住居跡からフグ鍋を食べて全滅したように見える一家が発見されているけど、古代ゾウの一家には何が起きたんでしょうかね。

2

2. 匿名処理班

  • 2023年06月15日 22:29
  • ID:DweXJxFs0 #

古代ゾウ「こりゃ参った…使っちゃったゾウ」

3

3. 匿名処理班

  • 2023年06月15日 22:52
  • ID:MftSA.CQ0 #

子供の頃は学習雑誌で
野尻湖の化石が良く載ってたな。
ナウマン象とか有名。

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