この画像を大きなサイズで見るアメリカ北東部のバーモント州やニューイングランドを旅すると、古い農家の壁に、まるで設計ミスじゃないかと思うような不思議な窓を目にすることがある。
屋根のすぐ下にある壁に、窓が45度傾いた状態で斜めに取り付けられているのだ。これらは現地で「魔女の窓(Witch windows)」と呼ばれ、長く奇妙な伝説とともに愛されてきた。
現在でもこの窓は、バーモント州の個性を象徴する愛すべき文化遺産として大切にされている。この斜めの窓がなぜ誕生し、どのような俗説を生んだのか、その真実に迫っていこう。
魔女は斜めの窓を通れない?その俗説の正体
アメリカ北東部バーモント州では、縦長の窓を傾けた状態でつけた家、通称“魔女の窓”をもつ家が点在する。
その多くが農場にある、三角屋根で二階建ての古い家屋だ。
魔女の窓は、たいてい一階の屋根と二階建ての屋根の間の狭い壁に設けられており、45度ほど傾いているものも少なくない。
その名の由来は、「箒(ほうき)を使って飛べる魔女も、斜めの窓には入れない」というもの。
なかなか興味深い話だが、Wikipediaによると、これはいわゆる俗説であり、建築史資料を確認しても、魔女対策として窓を傾けたという証拠は存在しない。
名前のインパクトの強さから、後世に語られるうちにそんな“物語”が定着したとみられる。
この画像を大きなサイズで見る斜めの理由は、増築で生じた壁の狭さ
歴史を紐解くと、19世紀のバーモントでは、農家が家が手狭になるたびに増築し続ける文化があった。
だが困ったことに、たとえば2階建ての1階部分を横に増築した場合、そこにつける新しい屋根が、すでにある2階の壁に干渉し、2階に必要な窓のスペースがひどく狭くなってしまう。
つまり増設のせいで壁が狭くなり、既成の縦長窓が設置できなくなるのだ。
そこで採用されたのが、「斜めにつければ収められる」というシンプルかつ合理的な解決策。
そうすれば、さらに費用をかけて屋根裏部屋によくある窓(ドーマー)を作る必要もなく、安上がりだし手っ取り早い。
見た目の奇妙さとは裏腹に、魔女の窓は徹底した実用主義の産物だったといえる。
この画像を大きなサイズで見る“棺の窓”という別名も
魔女の窓には、もうひとつの呼び名がある。それは “Coffin window”。直訳で「棺桶窓」だ。
この呼び名の由来は、階段が狭い家の住人が亡くなったとき、2階から棺を外へ出すために使ったというもの。
この説もまことしやかに伝えられているが、建築史家はこの説もほぼ否定している。
棺を2階に運ぶ必然性が薄く、構造的にも無理があるからだ。こちらもやはり俗説で、“もっともらしい後付け”として語られてきたものなのだろう。
バーモントで多く見られる理由
魔女の窓が見られるのは、ほぼバーモント州とその周辺に限られるという。
この画像を大きなサイズで見るアメリカ全土で見ても、これほど地域限定の建築は珍しい。いわばローカルな建築様式といったところか。
その背景には、以下のような要因があげられる。
- 増築を前提とした農家建築の文化
- 山地で土地条件が厳しい地域性
- ローカルな建築様式が他の地域に広がりにくい環境
「別の窓から入れちゃう」「侵入できる魔女もいるかも」の声
魔女の窓は、過去にも話題に上がっており、Youtubeには以下のような動画も。
2022年に@zackdfilmsが公開したバーモントの”魔女の窓”の解説は、1700万回近く再生され、55万ものいいねがついている。
海外のユーザーからはこんな反応が。
- 魔女窓の仕組みはとても単純。バーモント州の田舎の大多数の家屋の構造上、増築後の2階の採光や換気を行うには、屋根の下と1階の隙間の壁に窓を設けるしかなかった。斜めにつけるのが一番現実的な方法だった
- 魔女対策っていうけど、一部斜めにしても他の普通の窓から魔女が入ってこれちゃうじゃん
- 魔女伝説によれば魔女は子供をさらう。だから子どもを斜め窓の部屋に入れとけば安心というわけ
- マサチューセッツ州の北部やニューハンプシャー州南部にもある。30年近くその地域に住んだが、当時はよくある作りだった。ニューイングランド地方でセイラム魔女裁判(1692-1693)が人々の恐怖を煽ったことは知ってるだろう?
- 箒をドリフトさせて侵入するスキルを持つ魔女もいるかも
- そんなわけない!箒はつねに万能だ
- 斜め窓はメイン州やニューハンプシャー州にもある。メイン州の実家にも2か所あったよ
さらに、海外掲示板Reddit の豆知識スレッドr/todayilearnedでも、過去には”ほぼバーモント州にしかない「魔女の窓」”として取り上げられ、建築に詳しいユーザーからコメントが寄せられていた。
- この手法は19〜20世紀の住宅拡張期に広まり、当時の家は平均約900平方フィート(約84㎡)ほどと狭かった。つまり、斜めの窓は「魔女の窓」の由来とされる俗説からではなく、実用性から生まれたと考えるのが自然
地元バーモント州の大学院出身のユーザーも、現地の建築史に基づきこうコメント。現実にはこれらの”斜め窓”と”魔女”は無関係と言い切っている。
- 地元の建築史を紐解く講座の中で、「魔女の窓」というものや、その迷信にふれることは一切なかった。
とはいえ屋根を高くしたり、窓を後付けして増設したのは本当だ。屋根裏やめったに入らない場所への換気のために設けた窓、というのも確かにある。
その他の「魔女の屋根」に関しては、後に続く地元の人がその様式を真似した、というのが正しい。
窓向きじゃないスペースに無理に標準的な窓を取り付けたのも本当。それはこの地域で頻発した問題への実用的な解決策だった。つまるところ、魔女がどうこうといった話じゃない。wikipedia にも同様の説明がある
奇妙な見た目でも実は合理的。愛着がわく窓
結局「魔女の窓」は、見ためも呼び名も印象深いが、現実には魔女除けでも、出棺用の窓でもなかったようだ。
この画像を大きなサイズで見るだがそこには、限られたスペースを最大限に活かそうとた人々の知恵と、奇妙なものに想像をめぐらせ、もっともらしい物語をまとわせがちな人間らしさがうかがえる。
実はかなり昔だが、アメリカでこの窓を見たことがある。でも当時は「魔女の窓」という呼び名も知らず、うっかり大工の雑な仕事か、個性的なDIYの結果だろうと思ってた。
おかげでそれが思い込みだったこともわかってすっきりしたわ。リアルな暮らしの工夫とは考えもしなかったよ。
References: Boingboing / Wikipedia
















窓枠周囲の「水切れ(排水)」を考慮すると非情に合理的と考える事も出来る
匠の遊び心が感じられます
日光がどんなふうに部屋に差し込むのかも気になる
日本に長く居過ぎると
バーモントカレー🍛に
何の疑問も抱かなくなるそうだ
煙突があるからサンタクロースは入れるね
御猫様用かと思った
ググルマップでバーモント州見て来たけど場所が悪かったのか魔女の窓発見できず残念
それにしても土地が平たんという以外、町の廃れた感じとか近所と似ていて物凄く親近感湧いた
日本でなら名付けてイヌマド!
「そうすれば、さらに費用をかけて屋根裏部屋によくある窓(ドーマー)を作る必要もなく、安上がりだし手っ取り早い。」
という文章の真下の写真が斜めの窓と一緒にドーマーが2個もついてる家なのが味わい深い
たしかに他の写真の家にはドーマーが無いから、この家の家主は費用よりも採光or換気orおしゃれを重視する人だったんだろうな
最後の画像の左の家(雪の中に建つ紺ぽい屋根の家)を見ると手前の∧(屋根の山型部分)の下には縦長の窓が縦についてる
増築中、用意した縦長窓をみて「これどうする?」「…斜めにつけるか!」とか言ってたのかなあと妄想