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固体なのに液体のように流動する金ナノ粒子の謎、東北大が解明

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ナノ粒子表面の有機分子は通常、動きが非常に制限されている。(イメージ画像):Image credit: Tohoku University
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 金ナノ粒子の配列構造を変えるには、これまで100°C以上の高温が必要だった。東北大学の研究チームは水面を使うことで40°Cでその配列が液体のように自在に組み替わることを発見した。

 粒子表面のわずか2種類の有機分子の動きが、配列全体の構造を大きく変えていたのだ。

 体温に近い40°Cで起きるこの現象は、将来的にがん治療の薬物送達やスマート材料への応用につながると期待されている。

 この研究成果は『Journal of the American Chemical Society』誌(2026年5月1日付)に掲載された。

参考文献:

金ナノ粒子の並び方が光と電気の性質を変える

 金ナノ粒子とは、金でできた直径1〜100nm(ナノメートル)ほどの超微細な粒子だ。1nmは1mmの100万分の1という、肉眼では到底とらえられないスケールである。

 金ナノ粒子には特異な性質がある。粒子同士の並び方によって、光の反射・吸収のしかたや電気の流れ方が変わる。

 この配列を意図的に設計できれば、光学材料や電子材料など用途に応じた性質を持つ新素材の開発につながる。

 さらに外部刺激に応じて配列を動的に切り替えられれば、環境に応じて性質が変わるまったく新しい材料設計が可能になる。

 しかし従来の方法では、配列構造を変化させるには100°C以上の高温が必要だった。生体や精密機器への応用を考えると、これは越えがたい壁だった。

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Image credit: Ramin Hasanalizade

水面での構造変化を検証

 東北大学多元物質科学研究所の佐藤梨奈氏(現・物質・材料研究機構ICYS研究員)と、同大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの蟹江澄志教授らの研究チームは、空気と水が接する界面(水面)に着目した。

 水面では、疎水性(水をはじく性質)の分子で覆われたナノ粒子が自然に浮かんで二次元の層を形成する。

 乾燥環境と比べて表面分子の自由度が高く、はるかに低い温度での構造変化が可能になるかもしれない。

 そこで研究チームは2種類の有機分子で表面を修飾した金ナノ粒子を作製した。

 1つは枝分かれした樹状構造を持つ温度応答性の液晶分子「デンドロン(dendron)」、もう1つは単純な鎖状の有機分子だ。

デンドロンは温度変化に敏感に反応し、形や配置が変わる性質を持っている。

40°Cで粒子が液体のよう変化することを確認

 実験では、予想を超えた動的な振る舞いが観察された。

 室温では、金ナノ粒子は水面上でいくつかのかたまりに分かれて点在していた。

 温度を上げていくとかたまりがほぐれて鎖状につながり始め、40°C付近に達すると鎖がさらに広がって網の目状の大きな構造へと変化した。

 圧縮を加えると、網目状の構造は再びかたまりに戻った。固体の粒でありながら、液体が形を変えるような柔軟で可逆的な振る舞いだ。

 このメカニズム解明に使用されたのが、ドイツ・ハンブルクにある世界最大級の放射光施設、ドイツ電子シンクロトロンでのX線測定である。

 放射光施設では、電子を光速近くまで加速させたときに生じる強力なX線を使って、原子・分子レベルで物質の内部構造を観察できる。

 X線測定の結果、温度が上がるとナノ粒子表面のデンドロン分子が自発的に再配置され、粒子の見かけの形に方向性(異方性)が生まれることがわかった。

 室温では粒子はほぼ丸い対称形のため、方向性のないかたまり状に並ぶ。

 温度が上昇してデンドロンが粒子表面で偏って配置されると、粒子が特定の方向に引き合うようになり、配列全体が鎖状・網目状へと変化する。

 分子レベルの小さな動きが、金ナノ粒子の配列全体に大きな構造変化を引き起こしていた。

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金ナノ粒子表面での有機分子の再分布による粒子形状異方性の変化と 島状から網目状への粒子配列構造の変化。Image credit:Journal of the American Chemical Society 2026 CC-BY 4.0

がん治療の薬物送達やスマート材料の開発につながる

 金ナノ粒子の流動化が体温に近い40°C付近で起きるのなら、医療分野での応用が期待できる。

 がん細胞の周囲はわずかに温度が高いことが知られている。

 この性質を利用すれば、腫瘍部位だけで金ナノ粒子の配列構造を変化させ、狙った場所にだけ薬を放出する薬物送達システムを作ることができる。

 副作用を抑えながら患部に集中的に薬を届ける治療技術への道が開ける可能性があのだ。

 医療分野にとどまらず、髪の毛より細い流路の中で液体を精密に制御するマイクロ流体デバイスや、外部環境に応じて機能が自動的に変わるスマート表面材料への展開も視野に入る。

 蟹江澄志教授は、分子レベルのきわめて小さな変化がナノ粒子系においていかに劇的な構造変化をもたらすかを示したとし、この発見が環境に動的に応答するスマートで適応型の材料設計への新たな道を切り開くと述べている。

今後は温度だけでなく、pHやイオン強度など他の刺激にも応答する分子設計へと発展させ、より高度な機能を持つ適応型ナノ粒子薄膜の実現を目指すという。

References: DOI: 10.1021/jacs.5c22437

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この記事へのコメント 2件

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  1. 固体なのに液体のように流動する…つまり、猫だな!

    • +1
  2. 固体なのに液体 ネコの事か

    • +1

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