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ヨーロッパに伝わる奇妙な魔除けの風習。家の見えない場所に靴を埋め込む「靴隠し」

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Image credit: Edmund Patrick – Own work,CC BY-SA 3.0
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 イギリスやヨーロッパ各地の古い家を解体すると、壁や床下、天井裏、煙突などからボロボロになった古い靴が発見されることがある。すでに履き潰された状態のこれらの靴は、意図的に埋め込まれたものだ。

 この奇妙な風習は「「Concealed shoes(靴隠し)」と言われるもので、少なくとも14世紀から20世紀にかけて続いていた。

 なぜ人々はわざわざ靴を隠したのかって?靴を隠すことで、家が魔女や悪霊から守られると信じられていたのだ。「魔除け」のおまじないみたいなものだ。

ヨーロッパに根付いた魔除けの風習「靴隠し」

 隠された靴が発見される場所には一定のパターンがある。煙突、床下、天井裏、屋根、ドアや窓の周囲など、建物の「境界」にあたる部分に埋め込まれることが多い。

 これは、魔女や悪霊が侵入するのを防ぐための呪術的な意味があったと考えられている。

 靴を「魔除け」として建物に埋め込む風習の最も古い例は14世紀(1308年)にウィンチェスター大聖堂の聖歌隊席の裏から発見されたものだ。

 一番のピークを迎えたのが18~19世紀で、この時代の建物から最も多く隠された靴が発見されている。

 靴を隠すことが魔除けになるという考えは、「靴が持ち主の足の形を残す」という特性があるからだ。

 履き慣れた靴は、持ち主の足の形に馴染むため、「持ち主の魂の一部」を宿していると考えられた。

 魔女や悪霊は、この靴を本物の人間と勘違いし攻撃する。すると靴の中に閉じ込められ、動けなくなるというわけだ。

 特に、履き潰されたボロボロの靴、より長く履かれた靴ほど、持ち主の「魂」が強く宿ると考えられた。

 当時の人々にとって、魔女は最も恐ろしい存在であり、彼女たちが悪霊を操り、家や家族に害をもたらすと信じられていた。靴を隠すことで、こうした脅威から、家を守れると考えられていたのだ。

 英ノーサンプトン博物館が管理する「Concealed Shoe Index」によると、これまでに3,000足以上の隠された靴が2,000カ所以上の建物から発見されている。

 これらの靴の多くはボロボロに履き潰されている。

 それは靴が持ち主の形に馴染み、「持ち主の魂の一部」を宿していると信じられていたためだ。こうした靴を煙突や窓の近くといった「家の弱点」に置くことで、悪霊の侵入を防げると考えられていた。

靴に込められたもう一つの意味

 靴の魔除け以外の目的として、子宝に恵まれるために隠された可能性もある。

 ノーサンプトン博物館によると、特に子ども用の靴が多く見つかっており、それは家の子どもを守るため、あるいは家族の繁栄を願って置かれたものだという。

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発見された子供の隠し靴 The concealed revealed – Northampton Museum & Art Gallery

ケンブリッジ大学で発見された300年前の靴

 この不思議な風習を示す最新の発見例のひとつが、イギリスのケンブリッジ大学で見つかった300年前の靴だ。

 2016年8月1日、セント・ジョンズ・カレッジの改修作業中に、煙突と窓の間の壁に埋められた古い革靴が発見された。

 考古学者リチャード・ニューマン氏は「これは悪霊を遠ざけるための魔除けだった可能性が高い」と述べている。

 発見されたのは、24cmほどの男性用の革靴で、底に穴が空くほど履き込まれていた。建物自体は1602年に完成しているが、靴が隠されたのは1700年代前半の改修時と推定されている。

 おそらく、当時の大学の責任者や職人が「魔除け」として靴を隠したのだろう。

 興味深いのは、この靴が再び壁の中に戻されることになったことだ。

 現代の新聞やコインを入れたタイムカプセルとともに封印され、未来の誰かが再び見つける日を待つことになった。

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Image credit: Cambridge Archaeological Unit

日本での家を守る歴史的風習は?

 では日本ではどうなのか?

鬼瓦

 日本の伝統的な家屋や寺社の屋根に見られる鬼瓦(おにがわら)は、魔除けの役割を持つといわれている。

 鬼の顔をかたどった瓦を設置することで、悪霊や災厄が家に入り込むのを防ぐとされていた。

 これは、ヨーロッパの「隠された靴」と同じく、建物の境界部分に魔除けを仕込むという考え方に通じる。

注連縄(しめなわ)

 他にも日本では、神聖な領域を示すために注連縄(しめなわ)を張る習慣がある。

 特に、新築の家を建てる際に屋根に注連縄を張る「上棟式(じょうとうしき)」がある。これは、建物の完成を祝い、悪霊が入り込むのを防ぐための儀式だ。

 また、玄関や門にしめ飾りを飾る正月の風習も、家に災いを入れないための魔除けの意味がある。

Photo by:iStock

 また、家を建てるときに地鎮祭が行われるが、工事や建物の安全を願い、土地の神を鎮めるために地中に穴を掘って鎮物(しずめもの)を埋める風習も残っているね。

 方法は違っても、世界各地でそれぞれのおまじない的な風習はあるようだ。

References: Livescience / Wikipedia

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この記事へのコメント 11件

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  1. キリスト教とは無関係なまじないを教会がやっていたというのは興味深い

    • +6
  2. 昔愛知県のホラースポットで
    狛犬の家というのがありました。
    普通の民家に狛犬がおいてある。
    なにか犬絡みで不幸な事故が
    あったとかのうわさ話があった。

    • +1
  3. 義母が履き潰した靴を庭に埋めていた。
    汚れた靴下も50足以上庭や家のあらゆるところに丸めて詰め込んでいた。
    魔除け?私よけ?

    • +3
  4. 学校の下駄箱に入れてた自分の靴がしょっちゅう隠されてたのも魔除けだったんだね
    安心した

    • +3
  5. 日本でも、魔除けに草鞋を軒へ吊るしたりするよね。
    しばしば大わらじ。

    屈強な守り神が居着いているのを見せつけて、退魔の牽制にするという
    わりと力技な発想。

    • +7
  6. わんこのイタズラかと思ったらおまじないの話だった
    日本だとしめ縄に加えて盛り塩とかお札貼ったりとかもあるね
    やることは違えど、魔除けという概念は世界中にあるのが面白い

    • +3
  7. 梁の上になんか色々置く風習なかったけ。
    呪いの方だったっけ。

    • +2
  8. 形代みたいなものか。

    日本の風習だと、形代は身代わりなので廃棄する事で厄祓いになるが、ヨーロッパだと反対なんだね。
    興味深いわ。

    • 評価
    1. 髪を切り落とした房なんかは、
      厄祓いだけでなく
      同行できない状況のとき(出陣や配流etc.)自分の分身として相手を守るよう
      御守りの形代として渡すケースもある。

      愛用の着物とか刀なども、似たような使われ方はある。

      • 評価
  9. だいたい、匂いの強いものは魔除けにされてるよね
    ニンニク、イワシ、ハーブ類、糞尿
    子供にウンコとかおしっこって名前をつけたり
    自分が嫌なら、災厄も嫌だろうという
    もっともな・・・

    • +1
  10. 人間の知性など、先人からの継承がなければその程度ってワケよ

    • +1

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