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宇宙で進化したウイルスが薬剤耐性菌を撃退。ISSの微小重力で殺菌能力が向上

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(著)

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Image by Istock peterschreiber.media
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 国際宇宙ステーションで独自に進化したウイルスが、地球の薬剤耐性菌を撃退する強力な武器になることが明らかになった。

 アメリカのウィスコンシン大学マディソン校の研究チームは、重力がほとんどない微小重力という特殊な宇宙環境下で、細菌とウイルスの進化の過程を調査した。

 その結果、宇宙で生き抜くために適応したウイルスは、地球で問題となっている「抗生物質が効かない薬剤耐性を持つ大腸菌」に対しても、優れた殺菌能力を持つことが示唆された。

 この発見は、既存の抗生物質に代わる新しい治療法の開発や、将来の長期にわたる宇宙ミッションでの健康管理に大きく貢献すると期待されている。

 この研究成果は『PLOS Biolog』誌(2025年1月13日付)に掲載された。

宇宙で繰り広げられる細菌とウイルスの戦い

 細菌の中には、現代医療の主力である抗生物質が効かなくなった薬剤耐性菌が存在する。これらはスーパーバグとも呼ばれ、既存の薬では退治できないため、人類にとって大きな脅威となっている。

 この薬剤耐性菌との戦いにおいて、新たな希望として注目されているのが、細菌を攻撃するウイルスの一種、ファージだ。

 ファージはギリシャ語で細菌を食べるものを意味するバクテリオファージの略称だ。

 蜘蛛のような足がついたロボットのような姿をしており、特定の細菌に取り付いて自分の設計図を送り込み、細菌の体内で増殖し、内側から突き破って飛び出す性質を持っている。

 細菌は生き残るためにファージを防ぐ壁を作り、ファージはその壁を突破しようと進化する。

 国際宇宙ステーション(以下ISS)で行われた最新の研究によれば、細菌とファージの戦いの舞台が宇宙の微小重力環境に移ると、その方向性が大きく変化するという。

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ウイルスの一種であるファージが宿主細胞の表面に留まっている様子 Image credit:University of Wisconsin-Madison

微小重力がウイルスの感染速度を変える理由

 研究チームは、「T7ファージ」と呼ばれるウイルスと、それに感染する大腸菌の集団を比較した。

 一方をISSで培養し、もう一方を地球上で育てる実験を行った結果、宇宙の環境がファージの感染速度を根本的に変えていることがわかった。

 宇宙でもファージは細菌を殺すことができたが、そのスピードは地球上よりも遅かった。

 地球では重力によって液体がかき混ぜられ、細菌とウイルスが頻繁に接触する。

 しかし重力のない宇宙では対流が起きず、すべてがただ浮遊しているだけだ。そのため両者がぶつかり合う機会が極端に少なくなる。

 この環境に適応するため、宇宙のファージは少ないチャンスを確実に物にする必要があった。通りすがりの細菌をより効率的に捕まえるように、自らを鍛え直したのである。

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国際宇宙ステーション NASA

宇宙帰りのウイルスが薬剤耐性菌を圧倒

 全ゲノム配列を解析した結果、ISSで育った細菌とファージには、地球のサンプルには見られない独特の遺伝子変異が見つかった。

 宇宙のファージは、細菌の表面にある受容体と呼ばれるスイッチに結合する能力を大幅に高めていた。

 同時に、大腸菌側も宇宙で生き延びるために受容体を微調整するなどの防御策を発達させていた。

 宇宙帰りのファージを地球に持ち帰ってテストした結果、過酷な環境に適応するために獲得した変異が、地球上の病原体を殺す際にも高い効果を発揮することがわかった。

 特に、薬が効きにくい尿路感染症の原因となる薬剤耐性大腸菌に対しても、宇宙産のファージは高い攻撃力を示した。

 研究を率いたスリヴァツァン・ラマン准教授は、宇宙で特定された変異ウイルスがこれほどまでに地球の病原体を撃退したことは、予期せぬ発見だったと語っている。

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宇宙実験に使用するサンプルを準備する研究者  Image credit:University of Wisconsin-Madison

地球の医療と未来の宇宙探査への貢献

 今回の発見は、ファージを使って感染症を治すファージ療法の活性を高める大きなヒントになる。

 薬剤耐性菌の脅威が世界中で増す中、宇宙環境を利用してウイルスの攻撃力を引き出す手法は、新たな治療の選択肢となる可能性がある。

 また、研究成果は地球上の患者だけでなく、月や火星を目指す宇宙飛行士の健康を守る上でも重要だ。

 ウィスコンシン大学のチャーリー・モー助教は、長期の宇宙ミッションにおいて限られた資源で病気を治療するために、微小重力下で最適化されたファージ療法が役立つだろうと指摘している。

 宇宙という極限の実験場が、現代医学が直面している薬剤耐性菌という難問を解く鍵を握っているのかもしれない。

References: Journals.plos.org / News.wisc.edu / Sciencedaily

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この記事へのコメント 14件

コメントを書く

  1. 身内が多剤耐性大腸菌で死んだので頑張っていただきたい

    • +10
  2. 逆に病原菌もパワーアップしたら怖いので、民間宇宙旅行が本格したら地球帰還後の検疫が厄介なことになりそう。

    • +24
    1. 「天冥の標」ってSF小説で同じような設定がありましたね
      作中では特定の致死性ウィルスへの対策と、一般的なウィルスの変異種への対応のために
      抗体チェックが義務付けられるって設定ですが

      現実世界では数日程度ならばまだそこまでは問題ならないだろうけど
      現時点で数か月宇宙に上がるISSなどでは、行く前に一カ月程度。帰還後に1週間程度の隔離期間があるので
      長期の宇宙旅行や年単位のミッション、果ては宇宙都市なんかが一般化したら、そういった問題は顕現化してきそう
      早い段階では2030年代には月開発が本格化していく予定なので、その過程でなんかありそうだ

      • +3
    2. 薬剤耐性菌を圧倒した宇宙帰りのウイルスが人類に牙をむくことも?

      • +4
  3. 突然変異で巨大化して襲い掛かってくるんだよね…

    • +1
    1. スカイツリーより巨大なバクテリオファージが空から・・・

      • +2
  4. 何者かに意図的に造られたような形状と機能

    • +2

    1. 人間の作るものが自然を模倣してんだよ

      • 評価
  5. ファージくん、君だけなんか姿違くね?

    • 評価
    1. まあ普通の細胞に取りつくウィルスとちがって、細胞壁とかそれどころか莢膜とかぶち抜いて侵入しないといかんからね。

      • +1

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