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細菌にも“記憶”があり、何世代にもわたって受け継いでいることが明らかに

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(著) (編集)

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 目には見えないほど小さな体で、脳すらない大腸菌だが、じつは環境についての”記憶”があり、それを生存戦略に利用していることが判明した。

 脳がない彼らが、どうやってそうした情報を処理しているのだろうか?

 米国テキサス大学オースティン校のチームが『PNAS』(2023年11月21日付)で発表した研究によれば、その秘密は地球上でもっとも豊富に存在する元素のひとつ「鉄」であるという。

 初期の細胞生命を支えてきた鉄を利用した記憶システムは、感染症の予防や治療薬対策、あるいは薬剤耐性菌への対応などに応用できる可能性もある。

大腸菌には記憶がある。情報を収集して細胞内に保存

 小さな細菌が何やら学習しているらしいことは、以前から観察されていた。鞭毛を使い群れで移動(「遊走」という)した経験のある細菌は、動き回るのが上手なのだ。

 脳がないはずの細菌は、なぜ行動を改善できるのか?カリフォルニア大学の研究チームは、その謎を解明するべく、「大腸菌」を調べてみることにした。

 その結果明らかになったのが、彼らは環境から集めた情報、すなわち”記憶”を細胞内に保存できるということだ。

 大腸菌にニューロンやシナプスで構成された神経系はない。だからそれは、私たち人間と同じような意味での記憶ではない。むしろコンピューターに保存された情報のようなものだ。

 テキサス大学オースティン校のスービク・バタチャリヤ氏は次のように説明する。

細菌に脳はありませんが、環境から情報を収集することができます。そして、その環境によく出会うようなとき、保存された情報に素早くアクセスして、役立てるのです

顕微鏡で観察した細菌の群れの映像

鉄が大腸菌の記憶の鍵を握っていた

 脳のない大腸菌は、どうやって情報を保存しているのだろうか? その鍵を握るのが、地球上でもっとも豊富な元素のひとつ「鉄」だ。

 彼らの小さな細胞に含まれている鉄の量は、個々によってそれぞれ異なっている。

 そして鉄が少ない細菌ほど、群れて移動するのがうまい。それとは反対に、鉄をたっぷり含んだ細菌は、ベタベタした粘着性のバイオフィルムを形成するのが得意だ。

 また鉄のバランスがいい細菌は、抗生物質への耐性を備えている。

鉄を利用した情報保存システムは4~7世代に受け継がれる

 しかも、こうした鉄の記憶は1世代では消えず、4~7世代は受け継がれる。

 バタチャリヤ氏によると、地球の歴史を考えれば、鉄を利用した情報保存システムはとても理に適ったものだという。

地球の大気に酸素が含まれるようになる以前、初期の細胞生命は鉄を利用して、さまざまなことを処理していました。

鉄は地球上の生命の起源においても、生命の進化においてもきわめて重要なものです。ですから、細菌がこのように鉄を利用するのは理に適っているでしょう

 大腸菌の行動と鉄レベルの関係もまた、おそらく理に適ったものだろう。

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顕微鏡で拡大した大腸菌の姿 / image credit:National Institutes of Health

 バタチャリヤ氏らの考えでは、鉄が少ないと移動が得意になるのは、もっと鉄の豊富な環境に移動するためだという。

 反対に鉄が多い場合、今いる環境には求める鉄があるということなので、そこに腰を落ち着けるべくバイオフィルムを形成する。

 こうした特性は、新しい治療薬の開発や薬物耐性菌(世界的に深刻な問題だが、なんと雲の中でもその遺伝子が見つかっている)への対策など、医療にも利用できるだろうという。

 「鉄は病原性において重要な因子です。そのため鉄レベルは間違いなく治療薬のターゲットになります」

 肉眼では見えない小さな細菌かもしれない。だが、その行動をよく観察して理解すれば、時に病気を引き起こす彼らとの戦いを有利に運べるようになるだろう。

References:Bacteria Store Memories and Pass Them on for Generations – UT News / Bacteria store memories and pass them on for generations | ScienceDaily / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. >環境から集めた情報、すなわち”記憶”

    意味が分かりません

    具体的に何のこと?

    • -7
    1. >>1 >>5
      増殖に適した栄養豊富な側へ効率的に寄って行くとか、
      逆に、自身の細胞を破壊するようなリスクから素早く逃げる
      みたいな感じなのでは?

      • +4
  2. 細菌にも記憶力があるというのに、私の最近の記憶力ときたら酷いもんです

    • +5
  3. スカラカ…チャカポコ…スチャラカ…チャカポコチャカポコチャカポコ………

    • +2
  4. どんな情報を集めてどんな役立て方をするんだ?

    • 評価
  5. 古株の細菌は
    「最近の若いやつらは・・・」って思うのかな

    • +5
  6. 「世代を超えて受け継ぐ」っていうけど、奴ら分裂で増えるから、半分は受け継ぐのも当たり前なんだけどな。こんなんでPNAS一本とるって、商売上手な研究室だな。

    • -4
    1. >>7
      確かに
      こんな当たり前のことが今まで論文化されてなかったんだから、研究者ってよっぽど商売下手なんだね

      • -3
  7. なんか情報熱力学的な振る舞いだよな
    情報を得るということは不規則に規則性を見出すことができるということ
    細菌も周りから情報を得て保存することで自分に有利な行動を選択できるようになる

    • +4
  8. 前にここのコメントで「例えば石っころにも程度の差こそあれ意識がある」みたいなのあったなあ。案外、「記憶する」ってそこまで難しいものじゃないのかもね

    • +7
  9. 漫画のもやしもんに出てくる菌たちみたいだったら微笑ましいんだけどな

    • +3
  10. 生き延びてるんだから必要な情報の受け渡しはしてるだろうなとは思ってたけど、原始的なコンピューターみたいな感じで面白いな

    • +2
  11. >鉄が多い場合、今いる環境には求める鉄があるということなので、そこに腰を落ち着けるべくバイオフィルムを形成する。

    炎症を起こし充血する場所は血液が集まるということなので鉄も多くなりそれで細菌があつまってくるのかも?

    • +2
  12. 要するに生存戦略としての情報がDNAに刻まれてるってだけだろ
    食虫植物が脳もないのに罠を張って虫を誘き寄せるのと同じ
    そういうのを記憶とは言わんけどな

    • -2
    1. >>14
      多分「生存戦略としての情報がDNAに刻まれてる」は正しいんだろうけど、そのスイッチが細胞内の鉄分の多寡なんじゃない?って研究発表なのでは?

      • 評価
  13. 進化した大腸菌がネットワークを構築し
    世界中に広がり(もちろんあなたの大腸の中にも)
    やがて地球の記憶を保持するに至った
    まで読んだ

    • 評価
  14. 大腸菌は細胞分蘖と有性生殖の二通りの方法で増殖するようだが、
    細胞分裂で記憶が継承されるのはあり得るとして、有性生殖でも記憶は継承されるのか、
    そのあたりの研究を進めてほしい

    • +2
  15. 鉄を使えばある程度は細菌の行動を制御できるってことになるのかな?

    • +2
  16. 時々、変わった形の雲を見たり、動きをする雲を知ったりするが。それが、記憶や意識とも…。間違いなく…、気のせいだろうと思うが。

    • 評価
  17. 長期の記憶は残らないのでは?
    細菌だけに、最近のコトだけだろ?

    • 評価
    1. >>22
      その「最近」が細菌にとっての”最近”なのか。人間から観たら”最近”なのかによるだろう

      • 評価
  18. 因果関係がよく分からんな。
    鉄を持ってるから遊走をしやすくなってるだけじゃないの?

    • 評価

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