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カキの体液が救世主に!薬剤耐性菌との戦いの切り札になるかもしれない

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(著) (編集)

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image credit:Pixabay
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  抗生物質に耐性を持つ強力な細菌は、スーパーバグと呼ばれ、現代医療が直面する大問題だ。世界では毎年500万人が抗菌剤耐性菌の感染症で死亡しており、その数は今後ますます増えると予測されている。

 この危機的な状況の救世主は意外なものかもしれない。それは牡蠣(かき)だ。

 オーストラリアの研究チームがカキの血液ともいえる体液(ヘモリンパ)からタンパク質を採取し、その抗菌作用を確かめてみたところ、さまざまな感染症の原因となる細菌を殺菌できることがわかったのだ。

 しかも既存の抗生物質に混ぜれば、その効果を2~32倍にまでアップしてくれることも判明したという。

現代医療の大問題、薬剤耐性菌をどう克服するか

 抗生物質の登場によって、人類は一時は細菌による感染症との戦いに勝利したかに思えた。ところが、細菌たちもやれてばかりではない。過剰に抗生物質が使用されたことで、これに耐性を持つ細菌がますます増えている。

 こうした薬剤耐性菌(スーパーバグ)の出現は、現代医療が直面する最大の問題の1つだ。薬剤耐性菌は国際宇宙ステーションでも発見されている。

 これをさらに厄介な問題にしているのは、細菌が形成するバイオフィルムだ。これはネバネバとくっつく分泌物によって無数の細菌が集まってできる膜のようなものだ。

 これは細菌にとってバリアのような役目を果たし、その内部では抗生物質への抵抗力が大幅にアップするだけでなく、それ自体が頑丈であることから細菌を物理的に取り除くことも難しくなる。

 ほぼあらゆる細菌感染症がバイオフィルムを伴うため、この形成を抑制したり、破壊したりする方法があれば、感染症対策は楽になるはずだ。

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Photo by:iStock

強力な免疫を持つ牡蠣が救世主に

 オーストラリア、サザンクロス大学のケイト・サマー氏らの解説によれば、現在使用されている抗生物質の90%以上は天然由来のものであるという。また開発中の抗生物質の65%以上も同様だ。

 その理由は、新たに抗生物質を開発する際、まず生物の免疫を調べ、利用できるものがないか探るのが常套手段だからだ。

 その点、海で暮らす牡蠣は、普段からさまざまな微生物に大量にさらされている。そのおかげで、強力な免疫系を進化させることができた。

 牡蠣の血液ともいえる体液(ヘモリンパ)には、抗菌作用のあるタンパク質やペプチドが含まれており、彼らはこれで感染から身を守っている。

 サマー氏らによれば、牡蠣には実際、漢方として呼吸器の感染症や炎症の治療に使われてきた長い歴史があるという。

 またオーストラリアの先住民たちも治療に牡蠣を利用してきた。こうした事実が、牡蠣の抗生物質としての有望性を伝えている。

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オーストラリアを流れるリッチモンド川で養殖されるシドニー岩牡蠣 image credit:Kirsten Benkendorf

驚きの殺菌力、抗生物質と合わせた相乗効果も

 そこで今回サマー氏らは、シドニー岩牡蠣(Saccostrea glomerata)のヘモリンパに含まれる抗菌タンパク質の効果を実際に確かめてみることにした。

 すると肺炎などを引き起こすレンサ球菌をよく殺菌してくれることが判明したという。さらにレンサ球菌のバイオフィルム形成を阻害するだけでなく、すでに形成されたバイオフィルムにまで浸透することがわかったのだ。

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牡蠣の血液に相当する体液(ヘモリンパ)に将来有望な抗菌タンパク質が含まれている image credit:Kate Summer

 それだけでなく、既存の抗生物質と組み合わせて使うと、ほんの少量でも殺菌効果を2倍~32倍にアップさせることまで確認されたそうだ。

 その効果は、レンサ球菌だけでなく、黄色ブドウ球菌や緑膿菌にも有効だったとのこと。それでいて人間の細胞に対する毒性は認められなかったそうだ。

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牡蠣抗菌タンパク質はバイオフィルムを形成したレンサ球菌でも殺せることが判明。しかも既存の抗生物質と混ぜれば最大32倍も効果をアップしてくれる image credit:Kate Summer

製薬業界と水産業界の異例のタッグ

 このように牡蠣のヘモリンパ・タンパク質は、新しい抗生物質として非常に有望だ。バイオフィルムを破壊し、既存の抗生物質の効果を高め、また人間の細胞を攻撃することもない。

 とは言え、医療の現場で使えるようにするには、動物実験や臨床試験など、まだまだクリアせねばならない関門がある。

 幸いなことにシドニー岩牡蠣は普通に手に入る食材だ。実験材料に事欠くことはない。今後は製薬業界と水産業界が協力して、新しい抗生物質の開発に取り組んでいくことだろう。

 この研究は『PLOS ONE』(2025年1月21日付)に掲載された。

References: Oyster ‘blood’ holds promise for combating drug-resistant superbugs: new research

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この記事へのコメント 17件

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  1. 広域の抗生物質を漫然と投与することがなくならない限り、いたちごっこになるだけだと思うよ。
    高齢者の誤嚥性肺炎にひたすら抗生物質突っ込み続けるのやめないと。

    • 評価
    1.  同意です。 日本のお薬代を含めた医療費安いから頼っちゃうのですよね。 抗生物質含むいろんな薬を使うと耐性菌のもとになるんで、なるべく薬を使わないで免疫で何とかしないと、いま日本でも問題になってるほとんどの殺虫剤の効かないトコジラミみたいなヤツの菌版がでてきちゃう。 感染症対策の基本は、人込みを避ける、ソーシャルディスタンス、手洗いといった新コロナと同じです。 感染しても安易な薬の使用は避けて、薬がでたらきっちり飲み切りましょう。

      • +1
    2. このタンパク質の作用対象は莢膜やバイオフィルムなのが重要。これらに阻まれて少ししか通らなかった抗生物質や免疫システムが細菌本体に直接攻撃できるようになるので「使用量を減らせる=耐性菌発生の抑制」にもつながる。対象が動物におけるコラーゲンのごとく代替手段のない基礎的な物質なのに加え細菌の細胞外で作用するから細菌自身の生理的システムで対応するのは難しい。

      • +13
    3. 「幅広い菌に効く抗菌薬」を「不十分な量や期間」服用することが薬剤耐性菌を作り出すことにもなるそうですよ

      • +5
    4. 肺炎や敗血症は免疫が敗北し放置すれば死を待つのみという状況のことで抗生物質に頼るほかないからそうしてるだけ
      抗生物質カクテルも耐性菌の発生に対応するためで、別に無暗にそうしてるわけでも医者は耐性菌リスクが分からないバカでもない
      相手が生物である以上耐性進化とのイタチごっこは避け得ず、進化的軍拡競争になるのは自然の摂理だ。こちらも常道に則って新たな薬を開発し続ける他ないだろう

      • +2
    5. 病院なら耐性菌を外に出さない工夫ができるはずです
      実際は知らないけどやっていないとは考えられないでしょう
      だとすると、耐性菌はどこからやってきたのかってなる
      一番に考えられるのは患者自身が入院前から持っていたというもの
      有名なMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は常在菌ですよね
      それが、病院で抗生物質を使うことで表面化するだけだと考えられます
      だから、病院より管理が甘い家畜への使用の方が問題だと考えられますね

      • +2
  2. 牡蠣で中るとき、牡蠣もまた中っていたわけか・・・

    • +6
  3. 漢方で使うのは、「ぼれい」っていう牡蠣の殻の方ですけどね。

    • +5
  4. カブトガニの次はカキが血を採取されてしまうのか。人類マジ吸血鬼。

    • +10
    1. 血液を採取されたカキの残りはスタッフが美味しくいただくのかしら?

      • 評価
  5. 二枚貝って海の毒物体内に溜め込んで濾過するじゃん。
    海の成分でかなりいろんなもの左右される生き物だと思うんだけど。

    大体は加熱するか内臓取り除くかで解決するけど、体液とかどうなの?
    内臓ごと生で食べる二枚貝なんて牡蠣以外パッと思いつかんけど(過食部を生で食べるだけなら他にもいっぱいあけどね)

    なんか育つ環境だいぶ絞られた牡蠣の話じゃないかなこれ。

    • -1
  6. 歯間ブラシを通したときに出てくるネバネバがモロにバイオフィルムだよね
    ひょっとするとリステリンより牡蠣の汁を口に含む方が効果あるのかな

    • 評価

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