メインコンテンツにスキップ

スーパーバグキラー。薬物耐性菌を破壊するナノコーティング素材が開発される

記事の本文にスキップ

18件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
photo by iStock
Advertisement

 抗生物質が効かない「薬物耐性菌(スーパーバグ)」の出現は、現代医療が直面する大きな脅威だ。

 現時点ですら、耐性菌による死者は毎年70万人以上いる。世界保健機関(WHO)によると、もしこれを克服することができなければ、2050年までには1000万人が耐性菌によって命を落とすようになると予測されている。

 その切り札として、オーストラリア、RMIT大学のグループが新兵器を開発した。もともとは次世代電子機器の分野で注目されてきた極薄の二次元素材を素材をナノコーティングすることで、耐性菌の細胞を物理的に切り裂くのだ。しかも人体には無害であるという。

黒リンをナノコーティングして耐性菌を引き裂く

 『Applied Materials & Interfaces』(4月12日付)で紹介されているのは、「黒リン」を使ったナノレベルの極薄コーティングだ。インプラントや包帯として使われるチタンや綿などをこれでコーティングすれば、抗生物質が効かない耐性菌であっても物理的に引き裂いてしまう。

この画像を大きなサイズで見る

25000倍に拡大した黒リン・ナノレイヤー(赤)と、それに触れた真菌細胞(緑) / image credit:RMIT University

 黒リンは酸素があると崩壊する性質がある。これは電子機器にとっては大問題で、その解決のために超精密な工学技術が研究されてきた。

 ところが医療への応用に目を向ければ、この性質が微生物を殺すにはうってつけだった。黒リンが崩壊するとき、細菌や真菌の細胞表面を酸化させる。これによって細胞を物理的に引き裂いてしまうのだ。

 黒リン・ナノレイヤーの効果を検証するために、「大腸菌」や「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」など一般的な細菌5種と、「カンジダ・オーリス」など真菌5種で実験が行われた。

 その結果、2時間以内に最大99%の細胞が破壊されたとのことだ。

この画像を大きなサイズで見る

黒リン・ナノレイヤーに触れたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌のビフォア・アフター

image credit:RMIT University

物理攻撃に弱い菌に対抗手段なし。しかも人体に無害

 真菌や細菌は、物理攻撃に適応しにくいという特性がある。普通ならあっという間に耐性を身につけてしまう細菌も、自然な進化でこの攻撃に対抗するには数百万年がかかると考えられるそうだ。

 もう1つ重要なのは、24時間もあれば黒リンは完全に分解されてしまうことだ。つまり人体内に蓄積して健康に被害を及ぼすことがない。

 最大の殺傷効果を発揮しながら、人間の細胞への被害を最小限に抑えることができる最適な量もすでに特定されているとのこと。

 研究グループは現在、医療の現場で使われるさまざまな表面で黒リンを試し、その効果を確かめているところであるそうだ。

References:DOI:10.1021 / acsami.1c01739 / Superbug Killer: New Nanotech Destroys Bacteria and Fungal Cells, While Leaving Human Cells Unharmed/ written by hiroching / edited by parumo

追記:(2021/04/19)本文を一部訂正して再送します。

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 18件

コメントを書く

  1. これでMMRの予言、スーパーバグによる人類滅亡シナリオは回避された

    • +1
  2. 広範囲に使わず使用は医療現場だけにしてくれ、頼む。

    あと燐の埋蔵量が心配、鳥の糞がそれほど早くは溜まらないだろうし、
    生体を構成する物質で、地球上に一番量が少くないのが燐だそうだ。
    (無くならないだろうがコストとか上がりそう)

    • 評価
  3. 必要なし!はっはっは俺のT細胞なめんなーww!

    • 評価
  4. すごい!この世から結核で亡くなる人をゼロにする(理論値。世界には投与の前に亡くなってしまう、医療弱者もいるので。。)薬じゃないか!!

    ただこれだと菌には効いてもウイルスには効かないだろうから、コロナとの戦いはまだまだ続くね(´・_・`)

    • +2
  5. 布団のダニ駆除って消毒用アルコールで平気?

    • 評価
  6. ただただ凄いとしか
    ウィルスには効果が望めなさそうだけど、革新的な発明になるんじゃないかな

    • +4
  7. すごい話。
    でもこのような分野をまたいだり、思いもよらない所から知識や知恵を組み合わせて、色々と革新的なものを開発するような水平思考展開をAIとかスパコンがしてくれるんじゃないかと思ってたんだけど、実際のところはどうなんだろう。
    やっぱり人間の思い付き以外でこういうコラボは発生しないのかなぁ。

    • +1
  8. 物理攻撃に弱い菌は全部巻き添えって事かな
    だとしたら人体に有益な菌も含まれてそうだし使い方が意外と難しかったりする?

    • +2
    1. ※8
      腸内細菌が全滅してえらいことになりそうな気も……。

      • +3
    2. >>8
      怪我した時の絆創膏や包帯に使うってことでしょ
      特に未開地なんかで虫や動物に傷つけられた時は効果的面

      • +3
  9. 攻撃が通らない?
    レベルを上げて物理で殴ればいい

    • +2
  10. こういうのが自然界に流出した時、環境や生態系への悪影響はないのか?

    • 評価
    1. ※10
      「酸素があると崩壊する性質」って本文中にあるから、
      自然界に流出した時(空気中)は
      黒リンより安定した別の状態になるのだろう。

      河川の富栄養化とか、土壌中のリン濃度上昇とか、
      そういう方面への悪影響はわからん。

      • +1
  11. >>黒リンを名のコーティングして耐性菌を引き裂く
    「ナノコーティング」もこうやって書くと厨二病っぽくていいね。
    実は次記事への振り?というわけで誤変換のご報告です。

    • 評価
  12. 毒殺出来ないから刃物で刺殺!みたいな?

    • +3
  13. まさか細菌に物理攻撃かます時代が来るとは
    そりゃ細菌も想定外ですよね…

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

植物・菌類・微生物

植物・菌類・微生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。