人間の脳がどんどん大きくなっている
 アメリカ人を対象に行われた調査によると、1970年代生まれの人は、1930年代生まれの人に比べて、脳の体積が6.6%、脳の表面積が15%近く大きくなっていることがわかったという。

 脳が大きくなることで何か変化はあるのだろうか?

 研究者によると、脳のサイズの増大が、加齢に関連する認知症のリスクを低下させる可能性があるという。それでは詳しく見ていこう。

アメリカでは加齢に伴う認知症が減少傾向

 世界の人たちはますます長生きするようになっているが、そうなると気になるのが、アルツハイマー病のような認知症が増えるのではないかという点だ。

 ところが興味深いことに、少なくともアメリカ人については、むしろ認知症の発症が減っているという。

 この逆説的な現象はなぜ起きているのか?

 考えられるのは、子供の頃からきちんと健康管理されるようになり、脳の発育が良くなっている可能性だ。

 そこでカリフォルニア大学デービス校をはじめとする研究チームは、これが本当かどうか調べてみることにした。
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過去数十年で脳の体積と表面積が増えていることが判明

 分析されたのは、米国マサチューセッツ州で1948年に始まった長期にわたる健康追跡調査、フラミンガム心臓研究のデータだ。

 この研究プロジェクトは、もともと心臓や血管の健康を知ることが目的だったが、やがて脳もその対象とされ、3世代にわたって人々の健康状態を調査している。

 これにくわえて、1999〜2019年に行われたMRI検査のデータも分析された。検査の対象となったのは、フラミンガム心臓研究に参加した1930〜1970年代生まれの人たちだ。

 すべて合わせた参加者の数は3226人(男女比はほぼ半々)で、年齢と世代間の健康傾向という点で幅広い人口層が網羅されている。

 分析の結果明らかになったのは、1930年代から1970年代にかけて、人々の脳の体積と表面積が増えたらしいことだ。

 1930年代生まれの人の平均的な脳の体積は1234mLだ。

 一方、1970年代生まれでは1321mLである。また皮質の表面積は、1930年代生まれが平均2056cm2だったのに対し、1970年代生まれでは2104cm2だった。

 これと同じく、白質と海馬の体積も増加していた。ただし脳の体積と表面積が増えていた一方、皮質の厚さは薄くなっていた。

 このような脳の大きさの変化は、ただ単に体が大きくなったからというわけではない。身長などの要因を考慮してもなお、脳の拡大は統計的に有意なのだ。
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脳が大きくなったことでどんな影響があるのか?

 これについて、カリフォルニア大学デービス校の神経学者チャールズ・デカルリ教授は、「生まれた年代は、脳の大きさを左右するようです。おそらく長期的には脳の健康にも影響するでしょう」と、プレスリリースで説明する。
遺伝は脳の大きさを決める大きな要因ですが、私たちの発見は、健康・社会・文化・教育といった外的な要因もまた影響を与えている可能性を示しています
 今回明らかになったことは、脳の「認知予備能」が高まった可能性をも示している。

 認知予備能とは、認知症などへの脳の耐久力のこと。これが高ければ、老化や病気によって脳が劣化したとしても、はっきりわかるような認知症の症状が生じないですむ。

 脳の体積や表面積が大きければ、たとえばアルツハイマー病などにかかったとしても、大きくなった分病気の悪影響がないまま生活できるようになる。

 実際このことは、認知症の発症が少なくなっているという過去の研究によって裏付けられる。
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ただし被験者に偏りがあるため、更なる研究が必要

 なお今回の研究は、調査対象における非ヒスパニック系白人や健康で高学歴の人の割合が多いといった弱点もある。

 そのため、この結果から人口全体がそうだとは単純には言えないとのこと。また因果関係を証明したものでもない。

 私たち全員の脳が本当に大きくなっているのかどうか明らかにするためには、もっと多種多様な人たちを調査する必要があるとのことだ。

 この研究は『JAMA Neurology』(2024年3月25日付)に掲載された。

References:Human brains are getting larger. That may be good news for dementia risk / Human brains are getting larger, potentially impacting long-term brain health / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2024年04月12日 21:05
  • ID:HXBn35oA0 #

あれネアンのほうが大きいよね
はっあの歌は本当だったんだ
♬「ピテカントロプスになる日も近づいたんだよー」

閑話休題
‘が大きい≒IQが高いとすると、知能が低い人は子供を残す確率が低いが高い人はそうでもないから
帝王切開で生まれる人が増えてる(と聞いてる)ので、頭が大きいことでの難産が減ってる
どちら頭が大きい人が増える(遺伝形質にバイアスがかかる)ことになるだろう

最近、アインシュタインの脳切片を調べることで「グリア細胞が多いほうが知能が高い」と言われ始めてる
これ脳の掃除がしやいことになるが…頭の大きい人も排出が良いのかな

2

2. 匿名処理班

  • 2024年04月12日 21:30
  • ID:u7WOmKY70 #

たった40年でそこまで脳の大きさが変わるのか
これも進化なのか?

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3. 匿名処理班

  • 2024年04月12日 23:30
  • ID:TQsg0NY00 #

70年代で健康的な変化があったとして、その後の世代も同じかって言ったらそれも一寸違うような
脂肪タップリ野菜少な目な食事してる層がガッツリ増えてる筈だからね
また違う方向に変化してる気がする

4

4. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 00:30
  • ID:1vJ0uzVK0 #

そのうちグレイみたいになるのか。

5

5. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 02:54
  • ID:pfXz2BBv0 #

私が子供の頃より今の若い方顔の小さな方が多いなあと思っていたのに脳は大きくなっているのか…

6

6. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 03:12
  • ID:4QADv1Fk0 #

特にここ100年くらいは情報の進化が凄すぎて人間の進化が追いついてないからな
ネット普及以後は人間の脳が2倍くらいの容量にならないと処理が追いつかなさそう

7

7. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 06:58
  • ID:YiI6kwCo0 #

想像上の宇宙人の姿に自分たちがなっていくのかなあ……?

8

8.

  • 2024年04月13日 07:04
  • ID:0NlQemXk0 #
9

9. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 07:46
  • ID:K6wXKAH30 #

もしかしたら、体の状態も世代ごとに異なっていて、幼いころの栄養状態や育った環境が認知症や認知症や介護が必要になるかどうかのファクターなのかもしれない。

10

10. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 08:02
  • ID:aeFBHpmJ0 #

脳の大きさだけで知能の高低を判断するのは間違い

11

11. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 08:10
  • ID:Uo2pxkDo0 #

>>2
単に栄養状態が良くなったんだろうね。
日本でも高度経済成長の前後で平均身長がかなり伸びた。

12

12. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 09:11
  • ID:hrh4IRdV0 #

脳の事も気になるど、視覚、聴覚の変化も気になる。

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13. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 12:06
  • ID:ziXqAnnO0 #

前人間の脳はだんだん小さくなってるって言ってなかった?

14

14. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 12:18
  • ID:fqK86PC40 #

>>13
ありましたね

気候変動の影響で人間の脳のサイズが縮小しているという研究結果が報告される : カラパイア
https://karapaia.com/archives/52323874.html#entry

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15. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 13:23
  • ID:wnVBkh3z0 #

>>10
確かに頭が大きいだけでは高知能とは言えないかもしれません(水頭症、福助)
しかし頭の小ささは高知能を否定します(哺乳類は確実)
あなたに一つお尋ねします「考古学者はなぜ旧人の脳容積を測る」のでしょうか?
それが答えです、相対的に頭の大きさは知能と関連があります

ただ個体と個体を比べるならあまり意味をなさないでしょう(健康で平均からのずれが大きくない限り)
集団Aの平均と集団Bの平均を比べるなら有効です
だから多く標本数を集める必要があるのです

16

16. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 15:18
  • ID:2qJPq.Kd0 #

>>13,14
読んだけど、矛盾はしてないみたいだね。この記事はは1930年代から1970年代にかけて脳が大きくなった。以前のは数万年の比較で気温が高いと脳が小さくなるという記事。
このまま二酸化炭素を排出し続けると過剰に温暖化すると指摘されたのが1970年代後半だけど、それ以前は気温は下がったことによる異常気象もあって、地球の寒冷化が心配されてたから。

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17. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 15:46
  • ID:JZt9rgnq0 #

肩凝りは間違えなく増える

18

18. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 21:13
  • ID:fjX21THy0 #

脳2000gの白痴もいれば800gも秀才もいるってなんかの本で読んだ
脳の大きさと知能はイコールではない

19

19. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 21:20
  • ID:aeFBHpmJ0 #

>>15
"確かに頭が大きいだけでは高知能とは言えないかもしれません"
脳の大きさの話であるのに、頭部の大きさの話を出してくるのはなんだ?

''個体と個体を比べるならあまり意味をなさないでしょう"
わかっていて妙な質問を投げるのは無礼では?

20

20. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 23:08
  • ID:wnVBkh3z0 #

>>19
頭が大きいということは頭蓋が大きいということで脳の容積も大きいのですよ
(通常、頭が大きいとは鉢が大きいことを言います)
なんだ呼ばわりされることとは思いません

妙な質問と言うなら答えはわかっているでしょう
わからずに言えるセリフでないはずです
そのうえで、無礼なのは横から来た貴方自身だと見られますよ

21

21. 匿名処理班

  • 2024年04月13日 23:21
  • ID:wnVBkh3z0 #

>>19
「横から…」と書いたのは私のミスです
お詫びします、レイアウトの関係で見誤りました
申し訳ありまsん


ただ、研究者が頭の大きさ(脳容積)を測る
これが全てです
以上

22

22. 匿名処理班

  • 2024年04月14日 09:17
  • ID:GPrHRQkm0 #

脳が大きくなってきた頃は、今ではアナログな発明や文化が爆発的に発展したような時代だったんじゃないかな。それまで見たことも聞いたこともないものがどんどん現れて、刺激的だった事が脳の発達(?)にも影響したんじゃないかな。
そう思うとこれからの時代はなんでもCGとかでシミュレーション出来たり再現出来たりしちゃうから、昔のような「スゲー!」っていう純粋な感動や刺激って言うのは普通に生きてたら無いのかも。
脳の大小で知能をはかるなら、頭(顔?)が大きいのをウリにして笑いを取る芸人さんは高知能で、顔が小さいイケメンモデルやアイドルは低知能となりそうだけど…。

23

23.

  • 2024年04月15日 22:13
  • ID:.77MxLro0 #
24

24. 匿名処理班

  • 2024年04月19日 03:52
  • ID:jvEipBMF0 #

一口に「脳のデカさ」と言ってもね
クジラ定期な話だし
その生物の脳の、旧脳と新脳との割合が何対何か、とかなら賢さと相関がありそうな気はする
単純に量と言うよりバランスやデザインの話
割と誰でも直感的に思い付きそうな事だと思うけど…
なぜ言われないんだろう

25

25. 匿名処理班

  • 2024年05月14日 23:00
  • ID:YuztWdYB0 #

>今回の研究は、調査対象における非ヒスパニック系白人や健康で高学歴の人の割合が多い
>といった弱点もある
脳がでかいと高学歴という可能性があるってこと?

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