
それはカナダも例外ではなく、一部の受刑者は家賃が過度に上がったことで、出所後に住める家がないとして、刑務所での拘留期間の延長を望んでいるという。
住宅危機を理由に刑期の延長を求める受刑者たち
今年6月、カナダ・バンクーバーで刑事弁護人を務めるメラニー・ベガルカさんは、賃貸危機を理由に刑期の延長を求めている、少なくとも3人の受刑者と話をしたことをX(旧Twitter)でシェアした。今週3人の依頼人が拘留期間の延長を求めてきました。
彼らはすでに家を失っている場合が多く、高騰した家賃を払うことができず、家に住むことも、食料も確保できないことを恐れています。また、路上で危険なドラッグが出回っていることも。
刑務所にいる方がまだマシだ、という考えは健全な社会とは言えません

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出所してもすぐにホームレスになってしまう現状
ベガルカさんは、住宅事情に警鐘を鳴らしている。受刑者らが代理人に滞在延長を求めるほど、状況が悪化していることを訴えているのだ。ベガルカさんによると、彼女が受け持つ受刑者3人のうち2人(全員男性)は、今も拘留されているという。
逮捕後、3人全員が通常の食事や寝る場所を確保し続けるために、保釈請求をしないことを決めたそうだ。
ベガルカさんは、彼らが逮捕された理由や、どの自治体でどんな犯罪を行ったかについての詳細を明らかにしなかった。
この件で注目すべきなのは事件そのものではなく、住宅や支援サービスを切実に必要としている人々が、出所後それらを得ることができないという司法制度の問題に懸念を表明することが目的だからだ。
3人の男性の懸念は、保釈請求や答弁が釈放につながり、すぐにホームレスになる可能性があると、ベガルカさんは述べている。
彼らは「釈放されれば、その後の行先を探さなければならないし、刑務所にずっといるのが良い選択だ」と言うのです。本当にひどい状況だし、悲しいことです。
ですが、こうした状況はこれが初めてではありません。
ホームレスになるのはとても疲れることです。 本当に本当に大変です。でも、刑務所に行くと、温かい食事が3回とベッドが提供されます。
だからもともとホームレスの人々の中には、刑務所に留まろうとするケースが何年も続いています。この現象は、近年さらに深刻になっています。
私が初めてこの問題に遭遇したのは、スティーブン・ハーパーが首相だった法学生のときでした。(ベガルカさん)
So inmates now ask to stay in jail because they can’t afford a home outside.
— Pierre Poilievre (@PierrePoilievre) August 22, 2023
The Trudeau housing market is literally worse than prison for many. pic.twitter.com/rxP3FuicyU
住宅危機は政府が深刻に取り組むべき問題
2020年のメトロ・バンクーバーのホームレス数報告書によると、ボランティアによるインタビューに同意した107人が、刑務所や拘置所にいたため家がないと答えたことが明らかになった。ベガルカさんは、このように話している。
住宅危機は、政府があらゆるレベルでもっと取り組む必要がある大きな問題だと思います。この問題は、地方自治体の支援がほとんどない田舎や僻地で特に深刻です。

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ブリティッシュ・コロンビア州で活動する非営利社会福祉機関コネクティブ(Connective)社のリズ・ヴィックさんは、ベガルカさんのツイートについて、このように話している。
これは、人々が自分の健康と命について恐れているという事実を如実に物語っています。コネクティブ社には、700人ほどのスタッフがいて、拘留されていた受刑者たちが刑務所から出たときに必要なサポートへの案内を支援するなど、さまざまなサービスを何十年にもわたり提供してきた。
また、こうした事態は、基本的に人々が必要としているサービスが、十分に提供されていないことを意味しています。
しかし、出所した人々が、すぐに住居や治療、その他サービスを利用できるわけではない。大勢が待機リストに登録しており、自分の順番になるまで長い間待たなければならない。
これはまさに、ベガルカさんが指摘する、「出所後ホームレス」というシナリオが現実になることを意味する。
ヴィックさんは、政府と社会福祉機関との連携にも取り組みが必要だと見解を述べている。
もし刑務所を出るときに、包括的で信頼できるサービスがあったとしたら、刑務所に留まりたいとは思わないでしょう。つまるところ、受刑者は出所時に十分なサービスが受けられていないため、刑務所内に留まる方がマシという結論に至ってしまうわけだ。
この分野は、実際には複数の政府部門が関与しているものの、伝統的に資金不足で一貫性のないサービス分野です。
したがって、人々がサービスのギャップに陥るリスクは非常に大きいのです。

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ヴィックさんは、受刑者たちが投獄されている間に、政府が彼らに安全な住宅の確保、医療へのアクセス、薬物乱用問題や精神的健康への支援を提供する必要性を強調している。また、受刑者を更生させるには、コミュニティや文化に再び結びつけ、雇用プログラムを提供し、必要に応じて家賃補助をする必要があると述べた。
カナダ住宅大臣はどのように受け止めているのか
ベガルカさんの話を受けてラヴィ・カーロン住宅大臣は、出所後の移行を政府は改善する必要があることに同意し、次のように述べた。利用できる住宅が不足しているという現状を考えれば、ある意味それは驚くべきことではありません。しかし、解決策に向けて実行しないことには始まらない。
事実、政府自身のデータが刑務所や病院を出てホームレスになる人々がいることを示していますし、このデータこそが政府の住宅プロジェクトに影響を与えています。
プロジェクトの一部は、住宅を建設するだけでなく、人々が路頭に迷わないように住居を斡旋することも含まれています。
これに対する簡単な解決策があればいいのにと思いますが、どれも複雑で時間がかかる問題です。
先月初めに行った記者会見の後、同大臣はダウンタウン・イーストサイドでの低中所得者向け賃貸住宅 143戸、支援住宅25戸、避難所ベッド80戸の建設プロジェクトを2025年に実施することを発表した。
このようなタイプの住宅がもっと必要です。
避難所は重要ですが、私たちはより安定した住宅を確保したいと考えています。私たちが困難に陥っている人々に入居してもらいたいのはこのタイプの住宅だからです。

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住宅危機と麻薬の問題は、個人の責任ではなく国家の問題
カナダでは、住宅危機と麻薬問題が同時進行している。ブリティッシュ・コロンビア州検死局のデータによると、今年1月から6月の間に、州内で1228人が薬物の過剰摂取で死亡した。
同州全域で実施された25人のホームレス数から収集されたデータ2020年と2021年の調査では、8665人がホームレスと認定され、その中には親または保護者が同伴した19歳未満の子供222人が含まれていた。
「原因は無限にあり、解決策も無限にあります」と、元ダウンタウン・イーストサイドの精神保健福祉士だったベガルカさんは言う。
まずは住宅だと思います。そして安全な治療薬の供給、より多くの医療、普遍的な基本の収入があれば、人々にいくつかの選択肢を与えるものだと思います。
人々が陥るこの種の罠を生み出すには、100の要因がありますが、個人の責任となるものはほんのわずかです。
人々を抜け出すのが難しい不可能な状況に追い込んでいるのは、主に大きなシステム的要因だと思います。

pixabay
カナダの住宅市場は刑務所より非人間的状況
ベガルカさんのツイートは大きな反響を呼んだようだ。あるXユーザーはこのような声を寄せている。
ようこそカナダへ、って感じだね。カナダでは、刑務所の方が非人間的ではない選択肢だってこと。
刑務所は、手頃な価格かつ安全な住宅の代わりにはならないのに。また、保守党党首ピエール・ポイエーブル氏は、「トルドー首相の住宅市場は、多くの人にとって文字通り刑務所よりも悪い」と述べている。
住宅危機から抜け出すには長い年月がかかる可能性
カナダ財務相クリスティア・フリーランド氏は、たとえ建設件数が80年ぶりの高水準に達したとしても、住宅市場の解決には数年かかる可能性があると述べた。連邦政府は危機から抜け出す方法を見つけるために、州、市、町、民間部門、非営利団体と緊密に連携する必要があります。始めの一歩としては、新しい賃貸アパートの建設に対する5%の連邦税を撤廃することだそうだ。
状況への圧力を緩和するために、さまざまな措置を検討していますが、すぐには解決しないでしょう。
CTVニュースによると、住宅は連邦政府ではなく主にカナダの10州の責任であるという。
しかし、フリーランド氏は、この問題を確実に解決するには「国家的な努力」が必要だと述べている。刑務所から出たくない受刑者の住宅事情は、やはり国家的努力による解決措置が必須となるようだ。
References:B.C. prisoners seek extension of jail time to stay housed, avoid overdose/ written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
まるでアメリカを追っかけているような記事だな。
3. 匿名処理班
犯罪者の為に金を使うのかとも思うけど低所得層や無職が住める場所がないとホームレス増えるしね。
でも財源ないから難しいよね。
4.
5. 匿名処理班
難しいよね
罪を償ったとしても、精神疾患もなく自らの意志で犯罪を犯した人の退所後の生活の面倒まで税金注入したいって、
市民の同意を得るのはさ。
カナダだって物価高で生活厳しくなってきてるし
6. 匿名処理班
>>2
対岸の火事だと笑って見ていられるのも今のうちで
いずれそう遠くない将来に日本でも同じ話が出てくるのだろうね
7.
8. 匿名処理班
世間がバブルに湧いてる昭和後期ですら
表の社会に復帰する自信がないから刑務所暮らしを選んじゃう人は結構いたそうですね
多くの時代、多くの国で繰り返されてきたけっこう普遍的な問題なんでしょうねぇ・・・
9. 匿名処理班
日本なんてずっとそうだよ
10. 匿名処理班
日本の刑務所に入ったらホームレスの方がマシだと思うよ…
たまに刑務所に戻りたかったという元受刑者がいるがどういう神経してるのか、どうやったらそういう神経になれるのか、皮肉じゃなくて本当に訊いてみたい
11. 匿名処理班
社会復帰できないんじゃ意味がないよね
刑務所に残る選択をするのも理解できる
ただ問題の先延ばしにしかならんだろうけど
12. 匿名処理班
オーストラリアやカナダの場合、主に中国からの不動産投機が原因でしょ。
中国人は海外の不動産を取得できるが、外国人は中国の不動産を取得できないわけで、相互性のある公平な取引が中国との間で成り立ってないのは明らか。
今後、そういう相互性が成り立たない国の国籍の者による不動産取得を禁止すればいいだけでは。
13. 匿名処理班
なんでそんなに住宅が足りないのかがわからん
14. 匿名処理班
>>10
屋根のない生活は辛いよ
15.
16. 匿名処理班
出所してからの方が辛いというケースは他にもあるだろうな
17.
18. 匿名処理班
日本のワンルームマンションみたいなのでは駄目なのか?狭いがホームレスよりはマシ
150戸なんてすぐに埋まってしまう
19. 匿名処理班
直ぐ中国が崩壊して住宅価格は下落するよ。
20. 匿名処理班
最初は憎み しだいに慣れ 長い月日の間に頼るようになる。「施設慣れ」さ
21. 匿名処理班
大人向けの寄宿学校、職業訓練所付きのグループホームみたいなのを建てることはできないのかな?
西欧や日本の社会はずっと自由意志と責任の原理でやってきたが、世の中にはどうしても管理されることが必要な人がいる、という事実をもう一度受け入れるときが来たのかもしれない。
22. 匿名処理班
住み込みの仕事、ないのかな?
23. 匿名処理班
>>21
ホームレス向けの宿泊所も職業訓練所も既に存在する
でも管理されることが必要な人ほど管理を嫌がってホームレスになるからあまり意味がない
自由意思を無視してでもそういう場所に押し込められるような人権意識を育てるべきだ
24. 匿名処理班
>>9
刑務所入ってたけど、出る時に変なサポートセンターみたいな所紹介されて(岡山裁判所の隣のビル)そこで変な爺さん紹介されて他の前科者パイセン2人と大家さん4人でボロい一戸建てで共同生活。
他の前科者パイセン2人と合わなくて変な爺さんから怒鳴られて追い出されてまた裁判所の変なサポートセンターに行ったらネカフェに泊まれるお金を2週間分くらい手渡してくれてその間に社会福祉センターに行って生活保護の手続きして今のアパート借りて今は快適なまぼ生活よ。
日本は前科者の扱いちゃんとしてるよ
25. 匿名処理班
>>10 ある日の刑務所の食事を見たら、自分のよりぜんぜん豪華でオドロイた。
一方、新聞で「禁止されている他の受刑者との会話で懲罰になり、食事を除いて一日中正座というのは厳しすぎでは」という記事もあった・・・
26. 匿名処理班
>>6
近年日本人の刑務所離れが深刻で、刑務所の収容率も60%切ってるんですよ…
ま、大丈夫でしょ
27. 匿名処理班
年取ったらアパート借りるのも難しくなるし病気にも罹り易くなる、若い時なら早く出所して遊びたいだろうが、食事や健康管理もしてくれて病気の対応も話し相手もいる、年寄りになったら刑務所の方が楽に思えるな。まあ1人暮らしで老後を過ごす事に比べればだが。